https://www.cfa.go.jp/councils/kodomokanren-jujisha/dad0dc91/?fbclid=IwAR1mDthqHNbQOyiIOrZUgXuGBO4IMg66VCF50S0kBc0HQfDC4YE4xhsgl98_aem_AXrPFFR_i3rOzN7HEm_yhbodtF6nsHo22gg178be37gQKhM9XndeSSv3NpXQbnU96EM

 

 

 

こども家庭庁のサイトで、「こども関連業務従事者の性犯罪歴等確認の仕組みに関する有識者会議の報告書(案)」(以下「報告書(案)」と言います。)が公表されています。

この報告書(案)を読むと、いわゆる「日本版DBS」は、子どもに対する教育、保育等を提供する「事業者」に、業務に従事させる者の性犯罪歴を確認する義務を負わせ、事業者が犯歴確認の申請をする「犯歴照会型」の仕組みを想定していることが分かります。

そして、前科は、極めてセンシティブな要配慮個人情報であることから、日本版DBSにおいて性犯罪歴を知り得る事業者の範囲は、提供を受けるべき性犯罪歴の情報を安全かつ適切に管理することができる事業者でなければならない、とされます。制度の仕組みを検討するにあたって、子どもに関わる職に就かせないという目的達成に必要な範囲を超えた情報の漏えいがあってはならない、という視点が重視されること自体は当然だと思います。

ただ、この様な視点を前提に、「事業者」が「犯歴を照会」する仕組みにして、性犯罪歴の確認を義務付けるのは、性犯罪歴の情報を安全かつ適切に管理できる事業者に限る、とすると。

学童保育(「放課後児童健全育成事業」の事業者)は、それは義務化の対象から外れることになってしまうだろうな、、と思います。

学童保育は義務化の対象から外れる?保育園は対象って聞いたけど、学童保育になると違うの?と思われる方もいらっしゃると思います。

しかし、設置に認可が必要な児童福祉施設であって、市町村の保育の実施義務が法律上も明確な保育所と、「届出制」が取られていて児童福祉施設ではなく地域・子ども子育て支援事業の一つであり、放課後児童健全育成事業を実施していない市町村もある学童保育は、法律上の位置付けが全く違います

今回の報告書(案)でも、

「届出事業についても広く法律上直接義務付ける事業に含めるべきとの意見も強くあったが、その事業主体には様々なものがあり得て、提供を受ける性犯罪歴等の情報を安全かつ適切に管理することが実効的に担保できるものであるかが明らかではなく、許認可施設のような監督や制裁の仕組みが必ずしも存するわけではないことから、これらについては認定及びその監督の仕組みによって対応することが適当である。」

とされ、学童保育は、義務化の対象ではなく、認定を受けることができる事業者の例として挙げられています。認定を受けた場合、情報の安全管理のために必要かつ適切な管理体制等についての規律に服することになるでしょうし、情報を漏えいしてしまった場合に罰則を科されることにもなるでしょう。報告書(案)でも情報漏えいの場合の罰則についても言及されています。

この様な厳格な情報の管理を実現するには、その事業者のバックオフィスが整っている(=バックオフィスにお金をかけられる)ことが必要です。

実は、学童保育において、「育成支援の周辺業務」を行う職員の人件費を想定した補助、間接部門の人件費を想定した補助が実施されるようになったのは令和3年度からでごく最近です(金額は一箇所あたりの年額で約144万円)。「子どもに関わる仕事(育成支援)以外の仕事をする職員がいる学童保育(放課後児童クラブ)」の割合は少ないです。https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29856.html

 

 

 

令和4年のデータでは、放課後児童クラブ数が26,683ヶ所に対し、「育成支援の周辺業務を行う職員の数」は、全体で3,528人とされています(放課後児童クラブの職員数は182,577人)。

また,学童保育の運営主体ですが,法人格のない運営委員会や保護者会が運営主体である割合も16.2%あり、この場合,必ずしも労務や会計について専門的知識を有していない保護者や地域の役職者の方々が、ボランティアで運営を行っています。NPO法人(11.2%)が運営主体の場合にも、保護者会が母体となって設置され、保護者や保護者OBがボランティアで運営に携わっている様な例は多いです。

このような実態のある学童保育に、どうやって、積極的に認定を受けさせていくのでしょうか。


学童保育の登録児童数は約140万人で、子どもによっては小学校で過ごす以上の時間を過ごします。
遊びと生活の場ですから、身体的接触の機会も多くあります。犯歴確認の制度には、制度設計のあり方によって様々な功罪があるでしょうが、犯歴を確認する制度を作るなら、学童保育は対象から外すには大きすぎる穴ではないかと思います。