とても久しぶりに、破産法に関する記事。

 

破産債権について、破産手続開始決定前に訴訟が継続していた場合。

1 破産手続開始決定によって、破産債権に関する訴訟はどうなるのか。

2 破産手続中の破産債権の確定によって、破産債権に関する訴訟はどうなるのか。

3 破産手続中の債権調査において、異議等があった場合には、破産債権に関する訴訟はどうなるのか。

 

ものすごーく、ややこしいところですが。「破産債権に関する訴訟について」の諸問題は、破産手続が集団的権利行使手続であることを理解するのに適したテーマですので、整理してみましょう。

 

1 破産手続開始決定によって、破産債権に関する訴訟はどうなるか

 

まず破産手続開始決定の時点において係属中の「破産者を当事者とする」「破産財団に関する訴訟手続」は中断します(44①)

 

これは「破産財団に関する訴え」については、破産管財人に当事者適格が専属するから(80)。破産手続開始決定により、破産財団に属する財産の管理処分権が破産管財人に専属する(78)ので、訴訟係属の時点ではあった破産者の当事者適格が、破産手続開始決定によってなくなっちゃうんですね。

 

「破産財団に関する訴え」は、「破産財団に属する財産」に関する訴え(破産管財人が占有している財産について、第三者が取戻権を理由に返還を求める訴訟とか。過払金の返還請求とか。)が典型ですが、破産財団を引当とする破産債権に関する訴訟も含まれます。

 

そして、破産管財人は、44①の規定で中断した「破産財団に関する訴訟手続」を受継できますが「破産財団に関する訴訟手続」のうち、「破産債権に関する訴訟手続」については、破産管財人も、無条件に訴訟を受継することは認められていません(44②)。

 

これは、破産債権については、届出調査確定という、個別の訴訟手続とは別の、集団的に権利を確定する手続が定められているから。

 

破産債権については、原則として、破産手続によらなければ行使できない(100①。個別的権利行使の禁止)ので。破産手続開始決定時に訴訟係属がないまま破産手続開始決定が出た場合には、破産債権者は破産手続開始決定後に破産管財人を被告として訴訟することはできません(訴訟提起しても不適法却下されます)

 

2 破産手続中の破産債権の確定によって、破産債権に関する訴訟はどうなるのか。

 

破産手続開始決定時に訴訟係属があった破産債権に関する訴訟はいったん中断(44①)したまま、届出調査確定の手続がなされます。破産管財人が認め、他の破産債権者から異議がなければ破産債権は確定し、訴訟は当然終了となります。(124③:確定した事項についての破産債権者表の記載は、破産債権者の全員に対して、確定判決と同一の効力

 

3 破産手続中の債権調査において、異議等があった場合には、破産債権に関する訴訟はどうなるのか。

 

異議等があった場合で、破産債権者が債権額等の確定を求めようとする時は、異議者等(認めない認否をした破産管財人または異議を述べた届出債権者)の全員を訴訟の相手方として(異議者等が複数あれば固有必要的共同訴訟。)、訴訟手続の受継の申立てをしなければならなりません(127①)。この訴訟手続の受継の申立は債権調査の終了から1か月の不変期間内に行う必要があります(127②による125②の準用)。

破産手続開始決定時に訴訟係属があった場合には、既存の訴訟手続を利用するのが合理的なので、破産債権査定申立ての手続を利用することはできません(125①但書)

 

この破産債権者が受継した訴訟についての判決も、「破産債権の確定に関する訴訟についてした判決」(131①)として、破産債権者の全員に対してその効力を有することになります(判決効の拡張)