令和2年3月3日付で。

 

「新型コロナウイルス感染症防止のための小学校等の臨時休業に関連した放課後児童クラブ等の活用による子どもの居場所の確保について(依頼) 」

 

という通知が、文部科学省初等中等教育局長、文部科学省総合教育政策局長、文部科学省大臣官房文教施設企画・防災部長、厚生労働省子ども家庭局長、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長の連名で出されました。

 

この通知は別紙2枚を含めると9頁にわたります。

 

一斉休校に伴い、特に低学年の子どもなどについては留守番が困難な場合もあり、学童保育(ここでいう学童保育は、児童福祉法に規定する「放課後児童健全育成事業」をいいます。)や放課後等デイサービス事業は原則として開所することを厚生労働省としても依頼してきたことをふまえた上で。

 

「ふだん以上に子どもが来所することにより、必要な体制が十分確保できない可能性があることから」、厚生労働省と文部科学省の連携のもと、子どもの居場所の確保を図るための取組方策を整理したものです。

 

そして、その取組方策は、学童保育の開所だけではなく。

 

各学校の設置者の判断により、「学校において子どもを預かること」を含みます。

(当然、学童保育に通っていない子どもも含みます。社会には、学童保育に通わせてはいないけれど、学校のある時期にパートやアルバイトで非正規雇用で働いている保護者も多くいます。)

 

具体的には

通常の課業時間の範囲内において学校に受け入れ、自習、校庭や体育館での活動等を実施

「地域住民等の参画を得て行う「放課後子供教室※1」も活用し、子どもの居場所を確保」

といった内容です。

※1放課後子供教室とは、文部科学省による、「(保護者の就労を利用の要件としない)全児童対象の」事業で、学童保育とは異なります。

 

よく誤解されるところですが、学校施設と学童保育施設は全く、異なります。

 

学童保育施設が小学校の敷地内にあるのは、全体の53.5%(学校の余裕教室活用が28.9%、、学校の敷地内に専用施設があるのが、24.6%)。校舎内にある学童保育施設が全体の3割弱。5割弱の学童保育は、そもそも、小学校の中にはありません。

 

また、学校敷地内に学童保育施設がある場合でも、学童保育を運営しているのは小学校ではありません。※2

※2新・放課後子ども総合プランには、学校施設を活用しての放課後児童クラブ(学童保育)について「放課後児童クラブ及び放課後子供教室は、学校施設を活用する場合であっても、学校教育の一環として位置付けられるものではないことから、実施主体は、学校ではなく、市町村の教育委員会、福祉部局等となり、これらが責任を持って管理運営に当たる必要がある。」

との記載があります。

 

https://www.mhlw.go.jp/content/11906000/honnbun.pdf

 

 

 

学童保育の運営主体は、市町村が直営が全体の33.2%。残りは、社会福祉法人、NPO法人、地域運営委員会、保護者会等が運営しているほか、近年は営利企業の参入も目立ちます。

 

このように、一斉休校に際して、「学校において子どもを預かること」と「学童保育」は全く別物なのです

 

そして、今回の3月2日付の通知の別紙には

臨時休業の実施に際して、学校施設等において児童生徒を預かるなどの措置を講ずる際」の留意事項が書かれていました。

その留意事項の中に、以下の図がありました。

 

 

「臨時休業の実施に際して、学校施設等において児童生徒を預かるなどの措置を講ずる際」の留意事項、としてなら、この図は理解できます

 

元々の児童生徒の席の配置にこだわらず、間隔を開けて着席させて、と言うことでしょうし、学校に来ない子ども達も多いでしょうから、それは可能でしょう。

 

しかし、NHK等の報道では。

 

この通知が、

 

「学童保育“席の”間隔1m以上離し配置を”厚労省 文科省」

 

という、「学童保育に」席の”間隔1m以上離し配置をすることを求めたとしか読めないような内容で報道され、学童保育関係者に衝撃を与えました。

 

過去記事、

学童保育施設を木の家に〜あおぞら学童保育クラブのクラウドファンディングを応援します〜

 

にも書きましたが、

 

学童保育施設の面積基準は、「児童1人あたり1.65平米以上の『専用区画』(トイレやキッチン等を除いた、学童を利用する子どもたちの遊びと生活のためのスペース)」が必要という基準はあります。2歳以上児の保育室・遊戯室の国基準、1.98平米/1人を下回る基準です(小学生は、保育園児より身体も大きくなるのに、狭くなっています。)

 

さらに、その1.65平米以上の基準でも、クリアしている学童保育の割合は、令和元年5月1日現在のデータで74.7%(全学童保育クラブ数(令和元年:25,881)に対する割合)と、約4分の1の学童保育は、子ども1人あたり「畳一畳分のスペースもない」現状にあります。

 

また、学童保育は遊びと生活の場で、通知の図にあるような、子ども達一人ひとりの机や椅子は無いのが普通です

 

床に置かれた長机に数人が並んでおやつを食べたり宿題をして過ごす場ですので、その意味でも学童保育の現場には非現実的な求めに見える内容でした。

 

私も、夏休み等に学童保育にヘルプに入り、子ども達に読み聞かせをしたりお絵かきをした経験もありますが。子どもが膝に乗ってきたりしますし、子ども同士もじゃれあって遊びます。教室より狭く、濃厚接触で、授業の枠も無いのです。それでも、多くの学童保育が、感染症対策という面では疑問や葛藤を抱えながら、子ども達を放置した場合の事故事件の危険、急に休めない様々な職の保護者のことを考えて、人的にも物的にも無理を重ねて、3月2日の朝から学童保育を開けています。

 

学童保育にも関わっている友人のソーシャルワーカーの佐藤真紀さんが、所管の文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課への問い合わせをして下さったところによると。

やはり、別紙の図は、「あくまで学校施設を開放して使用する際の参考」ということでした。

 

学童保育の意味、学童保育での子どもの過ごし方、学童保育の施設の環境

 

これらの課題についての理解が進み、正確な報道がなされることを望みます

 

 

2020年3月11日追記

文部科学省から出された事務連絡

新型コロナウイルス感染症対策のための小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における一斉臨時休業に関するQ&Aの送付について(3月9日時点)

 

 

問5 子どもを学校施設等において預かる際には、「子どもの居場所の確保に係る衛生管理について」(3月2日付通知の添付資料)に示された留意事項(1メートル以上離して交互に着席等)のとおりに必ず実施しなければならないのか、趣旨如何。[新規]

 

というQが新規で加えられました。

これに対する回答は、以下の内容でした。

 

○ 「子どもの居場所の確保に係る衛生管理について」(3月2日付通知の添付資料) は、学校が児童生徒を預かるなどの措置を講ずる際の基本的な感染症対策や環境衛生管 理について留意事項として示したものです。
 
○  この留意事項においては、手洗いや咳エチケットなどを徹底していただくようお願 いするとともに、児童生徒の飛沫感染を防ぐ観点から、咳エチケットをした上で1メ ートル以上離して交互に着席するなど、できる限り児童生徒同士の距離を離すよう配慮するとともに、不要な接触を避けるよう指導することをお示ししたものです。
 
○ これはあくまでも衛生管理の際の参考としていただきたいという趣旨で示したもので あり、具体的な運用については、それぞれの施設の状況や児童生徒の実態に応じて柔軟に対応いただきたいと考えています。
 
なお、これは学校が子どもを預かる際の留意点について示したものであり、放課後児童クラブを念頭に置いたものではありません

 

改めて、「学童保育“席の”間隔1m以上離し配置を”厚労省 文科省」という報道のされ方が誤報であったことがはっきりしましたので、追記しました。

 

(学童保育施設が狭く、特に、面積基準を満たしていない学童保育では物理的にも1m以上離しての活動が困難なことは、もちろん、それ自体大問題です。今回の新型コロナウイルス感染症による一斉休校で学童保育施設への注目が集まったことが、施設の状況改善につながって欲しいと願います。)