放課後児童支援員認定資格研修には…

 

放課後児童健全育成事業の目的及び制度内容

 

という科目があり、【ねらい】の一つとして、

放課後児童健全育成事業に関する法律、政省令及び通知について理解している。

 

という項目があります

 

放課後児童健全育成事業に関する法律、政省令及び通知には主に

 

① 児童福祉法、子ども子育て支援法(法律)

② 放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準(省令)

(※各市町村が制定する条例は②の基準を参酌して作られます)

③ 放課後児童クラブ運営指針(局長通知)

 

があります。

 

そして、放課後児童健全育成事業の根拠法である児童福祉法は、児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)を基本理念として明記していますから、同条約に対する理解も必要です。

 

児童福祉法

第一条 全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。

 

 

法教育は、「法律専門家ではない一般の人々が,法や司法制度,これらの基礎になっている価値を理解し,法的なものの考え方を身につけるための教育」です。学童保育の関連法令も、当然、人権や平等といった、「法的な価値観や法的なものの考え方」は基礎としています。法教育は、条文の専門的な解釈をするものではないけれど、法的なものの考え方を学んだ上で、関連法令を見直すと、確実に「理解」が深まるはずです。

 

放課後児童クラブ運営指針には、放課後児童健全育成事業の役割として

「児童の権利に関する条約の理念に基づき、子供の最善の利益を考慮して育成支援を推進することに努めなければならない。」

ことが掲げられていますし、「子どもの人権への配慮」「意見表明権の保障」、「地域社会で生活する平等の権利の享受」、「差別的な扱いの禁止」といった内容も記載されています。

 

放課後児童クラブ運営指針の内容で「法教育を学んだ上で読む方が、理解が深まって実践にも役立つのではないか」、と私が考えるものをもう少し紹介します。

 

第1章 総則

3.放課後児童クラブにおける育成支援の基本

(4)放課後児童クラブの社会的責任

の中の記載。

① 放課後児童クラブは、子どもの人権に十分に配慮するとともに、子ども一人ひとりの人格を尊重して育成支援を行い、子どもに影響のある事柄に関して子どもが意見を述べ、参加することを保障する必要がある。

 

 

第2章 事業の対象となる子どもの発達

4.児童期の遊びと発達

の中の記載。

 

「児童期になると、子どもが関わる環境が急速に拡大する。関わる人々や遊びの種類も 多様になり、活動範囲が広がる。また、集団での遊びを継続することもできるようになっていく。その中で、子どもは自身の欲求と相手の欲求を同時に成立させるすべを見いだし、順番を待つこと、我慢すること、約束を守ることや平等の意味等を身に付け、協力することや競い合うことを通じて自分自身の力を伸ばしていく。」

 

第3章 放課後児童クラブにおける育成支援の内容 

1.育成支援の内容(4)

の中の記載。

 

 ・ 子ども達が集団で過ごすという特性を踏まえて、一緒に過ごす上で求められる協力及び分担や決まりごと等を理解できるようにする。

・ 遊びや生活の中で生じる意見の対立やけんかなどについては、お互いの考え方の違いに気付くこと、葛藤の調整や感情の高ぶりを和らげること等ができるように、適切に援助する。

・ 行事等の活動では、企画の段階から子どもの意見を反映させる機会を設けるなど、様々な発達の過程にある子どもがそれぞれに主体的に運営に関わることができるように工夫する。

 

(※いずれも下線は筆者によります。)

 

放課後児童クラブ運営指針のこのような内容を見れば。学童保育では、発達段階のそれぞれ異なる異年齢の子ども達が、「一人ひとり違うみんなが、一人ひとり違うことを尊重されながら、みんなで主体的に過ごすための決まり」を子ども達が理解できるようになること、そのことに関して意見を表明できることが期待されていると言えます。子どもたちがそのような育ちができる場であることが期待されているのです。これは子どもの権利条約の理念にかなうことです。

 

そして、支援員は、子ども達がそのような育ちのために、育成支援を担うことが期待されていると言えます。

 

法教育-21世期を生きる子どもたちのために(関東弁護士連合会編著)の206頁には、

「法教育は、子どもたちを教育の現場でまさしく権利行使の主体として育成するもので、子どもの権利条約の趣旨に合致する」

という記載があります。

 

学童保育は、子どもたちを育成支援の現場でまさしく権利行使の主体として育成する、子どもの権利条約の趣旨に基づいた運営をする場です。「授業」ではなく「育成支援」に活かすための「放課後児童支援員等向けの法教育の研修」は、どのような形で行うことが適切かは、私自身まだまだ手探りです。ですが、そのような形での「法教育と学童保育の交流」は、法教育と学童保育の双方の発展にとって意義のあることだと考えています。

 

最後に、愛知県弁護士会のサイトの法教育委員会のページにある、「法教育って何だろう?」という文章を紹介します。

 

「法教育」と聞いて、皆さんは、何をイメージしますか? 

司法試験のような法律の勉強でしょうか? それとも裁判の仕組みの勉強? 規則や規律を守るということをイメージするかもしれません。

でも、ちょっとだけ違います。

世の中には、たくさんの『正解が一つではない問題』があります。

人それぞれが、それぞれに考え方を持っており、その考え方の一つ一つに価値があります。ですから、どれが正しいとか、どれが間違っているということは言えません。

それでも、世の中では、どれか一つに決めなければいけないときがあります。そのときには、全部の考え方に価値があるということを十分理解したうえで、自分の考え方も他人の考え方もいずれも尊重して、行動することが必要です。それが、「自分も他人も大切にする」ということにつながります。

このように、個人それぞれの考え方を尊重しつつ、問題を解決するための「法的な思考」を学ぶこと、それが「法教育」なのです。