宇都宮市内のある公設民営学童保育において、学童保育への「入会はPTA会員に限る」という趣旨の規約が新たに追加され、その規約の追加後は、PTAに非加入の家庭のお子さんが学童保育を退所させられ、その後に入学した下のお子さんも入所できない事態が生じている、という趣旨のツイートが話題になり、togetterでまとめPTAを退会したら学童保育から追い出された)も作られています(私のツイートもまとめに使用されているようです)。

 

 

この事件に関するツイートの中には、学童保育の運営についての誤解に基づくものではないかと思われるものも散見されましたので、宇都宮市の学童保育の運営について、宇都宮市のサイトの記載から分かることを書いてみたいと思います。

 

宇都宮市のサイトの放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)について には、

 

 仕事などで昼間保護者が不在になってしまうご家庭の児童が、放課後を楽しく安全に過ごせ、集団生活の中で心豊かに健康に育つことを目的にしています。現在、宇都宮市内では、市が66の小学校区ごとに設置し、地域の運営委員会が運営する「子どもの家・留守家庭児童会」と、民間事業者が設置・運営している「放課後児童健全育成事業」があります。

 

との記載があります。公設民営の学童保育(放課後児童クラブ)とは、学童保育の施設は市町村が設置し、その運営は民間が市町村の委託事業や指定管理者制度を受託して行う形態です。そして、民間が運営を行う場合の運営主体は、社会福祉協議会、地域運営委員会※、父母会・保護者会、社会福祉法人、NPO法人、株式会社等、様々な運営主体があります

 

※  地域運営委員会とは、地域の役職者と保護者などによって構成される学童保育の運営のための組織です。その人数や構成は自治体によって異なります。

 全国学童保育連絡協議会発行の学童保育情報2017−2018では、地域の役職者の例として、(学校長、自治会長、民生・児童委員など)と書かれています。ここに運営委員の例に挙げられている方々の他、PTA役員や子ども会の会長といった方も運営委員になる例もありますし、例の筆頭で上げられている学校長が運営委員にならない例もあり、一口に地域運営委員会といってもその内実は様々です。

 また、「地域運営委員会方式」をとってはいても、実質の運営を父母会・保護者会が行っている場合も、実質の運営も運営委員会が行っている場合もあります。

 

話題のツイートは、公設民営の学童保育、ということですので市が66の小学校区ごとに設置し、地域の運営委員会が運営する「子どもの家・留守家庭児童会」の一つで生じた事態のようです。

そして、宇都宮市のサイトの留守家庭児童会・子どもの家についての説明をみると、

 

 運営は、市から委託を受けた各小学校区の地域の運営委員会が実施しています。運営委員会は、地域の育成者や保護者等により組織されています。

 

とあります。宇都宮市からの委託を受けて、運営委員会が学童保育を運営しているのですね。

 

なお、宇都宮市のサイトを見ると、運営委員会が運営する学童保育の設置場所は、学校敷地内の独立施設が多いようですが、校舎内の例も、コミュニティセンター等の学校外施設の場合もあるようです。いずれにしても、施設を設置しているのは宇都宮市です。

 

「(任意加入団体である)PTA会員であることを、学童保育に入会する要件とした」事実が実際にあったとして、その事実を評価するには、

 

1 話題のツイートの学童保育の運営主体は(小学校やPTAではなく)地域の運営委員会であること。

2 PTAは任意加入団体で、PTAと地域の運営委員会は別の組織であること。

3 宇都宮市が地域の運営委員会に学童保育の運営を委託していること。

 

これらの事柄を前提とする必要があると考えます

 

そして、宇都宮市が地域の運営委員会にその運営を委託している学童保育、すなわち、放課後児童健全育成事業とは、「小学校に就学している児童であって、その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業」です(児童福祉法第6条の3第2項)

 

また、放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準には、

第11条 放課後児童健全育成事業者は、利用者の国籍、信条又は社会的身分によって、差別的取扱いをしてはならない。

との条文もあります。宇都宮市放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準を定める条例にも、同様の条文が11条にあります

 

さらに、放課後児童クラブ運営指針には、利用の開始等に関わる留意事項として、「入所承認の方法の公平性の担保等に努める必要がある」との記載もあります。利用者の差別的取扱いを禁じても、入所承認の要件を恣意的に決められれば、利用者の差別的取扱いの禁止は骨抜きになりますし、放課後児童クラブ運営指針の記載をみても、入所希望者に対しても、利用者に準じた平等な取扱いが要請されると考えます。民営の学童保育であっても、放課後児童健全育成事業者であることに変わりはなく、法的にも、利用の開始等に関わる留意事項をどのように定めてもいい、ということにはならないでしょう。

 

なお、利用の開始等に関わる留意事項は、放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準の第14条7号で、学童保育の運営規定に規定しなければならない事項です。そしてこの運営規定は放課後児童健全育成事業者が、市町村に提出する必要がある書類であることも付言しておきます。