薄闇に消えて見えないようで
影に隠れてかくれんぼ
していただけのあの子の事を
私の中のあの子の事を
最後にあなたに見せてから
いったい何度あの月は
満ち欠けそして消えたのでしょう
しくしく泣いてもう一度
かくれんぼしたあの子の事を
満ち欠け消える月だけが
きっと覚えてくれている

街の灯りに照らされて
漆黒の闇になれない空に
赤く浮かんだ月の影
月の赤さに負けないくらい
赤い涙を流すあの子が
王子のキスを待つのをやめて
毒の果実も吐き出して
ガラスの棺の蓋を開け
白馬になんて乗らなくたって
茨の道でも歩けるように
赤い月へと祈る夜

月の影から出ておいで
赤い月から翼を借りて
地面の上まで降りてきて
ヒールの靴を脱ぎ捨てて
地をいくための靴を履き
足下にしか見えない花を
愛して歩いていけますように
赤い月へと祈る夜


赤い月へと祈る夜

月食の夜に、赤い月の写真を見て浮かんだ詩。
絵は、友人の弁護士が撮影した赤い月の写真を背景に使わせていただいて、私が描いたもの。


私は昔から詩を書いているんですが、
『女性が等身大の自分を愛せますように』
『女性が自分を許せますように』
という祈りが背景にあることが多いな、と自分で思います。


人間って本当に多面的で。
弱いところもみっともないところも、どうしようもなく業があるところもある。

隠しても目を背けてもなくならないし、無理に封印すると、解けた時が怖い。

誰でも、多かれ少なかれ、そうなのだから。

弱いところ。みっともないところ。どうしようもなく業があるところ。

月の影に隠しておいたそんな弱さが、月食の夜には透けて見えてしまうような気がして。

そういう弱い所って、隠すほど誰かに承認してもらいたくなるし、
承認してくれそうな人に依存しそうになったりもしがちなもの。

でも、本当は、誰かの言葉がなくても、いい。
言わなくても、そうそう見えなくても。、弱い部分があるのは、皆同じ。
弱さの種類や、現れ方が違うだけ。

だから、自分を責めないで。誰かの承認も待たないで。

地に足をつけて歩いて行けたら良いな、って。

赤い月に祈りながら。