大学を退学して、ロックバンド一筋でなんとかなるだろうと思って生きていたときの話。ボクの不安定な生活は、「ロックバンド」という曖昧な目標と、確立していない自分のアイデンティティ、数多くのフラストレーションがたまる。全部自分のせいなのにね。
ボクはボクなりの考えを発信したくて、毎日ぞうきんをしぼるように、浮かんだアイデアを残そうとした。でも残されたアイデアは、どうしようもないものばかり。それって終わってるよね。
そんなときボクはひとりになりたかった。
もちろん女の子の匂いにつつまれていたい。さわりたい。フェラチオされたいし、セックスもしたい。でも、彼女にはそれ以上を望んでなかったんだ。それってひどいかもね。かなり。
その頃は、そんなの当たり前だと思っていた。だって人生は自分のものだと思っていたからさ。自分が選んで進んでいるみちなんだから、その判断が間違えていたと思ったら全部が自分のせいなんだって。ようは「恋愛」を、ひとつの癒しのアイテムとして利用していただけなのかもね。
昔もらった手紙を読んでいたら、なおちゃんからの手紙があった。なおちゃんとはちょっと気が強かったけど、とってもやさしい女の子だった。おっぱいが大きくて、スタイル抜群のモテ女。
そんな美人の女の子がなんでボクと付き合っていたのかもわからないし、なんでボクのことが好きだったのかもわからない。
いや、今思うと、
ちょっとわかったかもしれないな
そんなときのなおちゃんからの手紙がこれだ。
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今日は、またしても私のエゴで会いたい一心で、無理矢理でてきてくれてありがとう。私のわがままというか、強がりで物別れになってしまってごめんなさい。考えることがいっぱいあって、不安でいるあなたをそっとしておいてあげるのが本当のやさしさだよね。それなのに嫌な気分にさせてしまったね。きっとそんな精神状態じゃ外に出るのも億劫だっでしょう。だからそばにいてあげることで、せめて不安を忘れさせることができたらいいって。ほんの少しでもあなたを支える一部になれたらいいなって思ってた。
結局今日だって、助けるどころか、支えることすらできなかった。ただいつも思うのは、私の主張はもとより、人格さえもあなたに認めてもらえないんだなぁって。価値観の違いはあるから、一概には言えないけど、私のなかでは、あなたの存在が多大なるウエイトを占めているから。
私の気持ちが空回りしたり、一方的にメールを送ったり、すねたりしているバカな自分に気付かされたり。あなたにとって私の存在って何なの？ という気にさらされてしまうの。私の存在ってあなたのほんの一部分どころか、かけらにも満たない大きさなんだろうなぁって。
今まで気が合って、付き合ってきた人って、いたことはいたけど、本気で好きっていうのがなかったと思うんだ。だけど、こんな風にあなたを追いかけている今、人を好きになるって、こんな感じなんだなっていう発見の日々なの。だから、私がこんな手紙を書いているというのも、自分では未知のことで、まったく予測できなかった。
気付かなかったかもしれないけど、電話先で泣いていたのは、「会いたい。それだけなんだよ。」っていう気持ちを、あなたにつらくあたっているあたっている自分が情けなかったの。あと救ってあげられなかったの。今までそんなコト考えられなかった。そういう人を軽蔑していたくらいなんだ。なに恋愛ごっこしてるんだ！ この演技野郎が！ って感じで。でも、あなたと付き合うようになってから、考え方が変わったよ。
今日みたいに不安になっているときは、支えになってあげたい。あなたにとって私は不安を取り除く手伝いをできそうにないのかな？ ねぇそう見えるの？ もっと「会いたい！」って働きかけてほしいよ。私には、もっと自分をさらけ出してほしいよ。私はあなたに助けられてるコトがいっぱいあるのに。本当は抱きしめたかった。キスもしたかった。
大好きなんだよ。あなたのことが。私の想いって重すぎる？ でもどんどん私の気持ちは募る一方です。片時も離れたくない。私はこのままあなたを愛し続けていいのかな？ あなたの「はっきり」した気持ちが聞きたい。
ごめんね。ライブ前なのにこんな風になってしまって。私ね、頭の回転が悪くて、第一足りてないから、その場で思ったことをうまく言葉に表現する能力がないんだ。だから後々に文章で伝えてるの。
明日のライブ頑張ってね。力になれるコトがあれば電話して。水曜日、あなたの気が向いたら会いたい。
大好きだよ。
なおより
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うーん。
けっこう、グサっときますね。
今の自分に。
なおちゃんごめんね。
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