「今、わかっている事はこのくらいだ。」

中元が青白くなっていく、もはや蒼白状態だ。

「係長・・・もしかして、何かのウイルスとか?空気感染するとか言わないですよね?僕、見たこと

ありますよ。もちろんインターネットですけど、あの死に方・・・ウイルス感染した人の死に方ですよ・・・」

中元の足は細かく震えていた。

「中元・・・まだ、何もはっつきりしてはいないんだ。みんなを混乱させるような事は言わないでくれ。」

「・・・はい・・・でも・・・。」

中元の肩に田岡が手をのせた。仲元の目を真っ直ぐに見つめ

「大丈夫だ。落ち着け、俺たちは部屋には入ったが佐久間 早苗には触れてない。それにあの部屋に

居たのは、5分も無かった。大丈夫だ」

仲元と田岡のやり取りにその場にいた1班全員が困惑し、自分にもしかしたら、未知のウイルスが

取りついたかもしれないと、悟った


その後、合同捜査本部が立ち上がった。異例ではあるが今回の事件は科捜研と科警研が主導することになった。

二つの組織は似ているところも多いが科警研はおもに、捜査支援や犯罪抑制などを行うことが多い

また、ルミノールを使った血液反応を捜査に役立てるようにしたり、プロファイリングの研究なども行っている。

科捜研は科警研からの支援をもとにいろいろな検査などを行う

二つは鑑識捜査官とは別である

町田は今回の事件の異例な状態に不安が募った。

(科捜研と科警研が関わるなんて・・・?ほとんどが研究することが主な仕事の人たちと

現場の私たちが合同捜査?仲元君が怯えたのがわかる・・・」



安永管理官の隣に科捜研の加藤主任、その隣には科警研の湯本主任研究員そして、本部長が座って

いる。

「ここにいる、捜査官の中には今回の合同捜査に疑問を持つものもいると思うが、3件の事件から

同一のウイルスが検出された、このウイルスの詳細は後程科警研の湯本研究員から話してもらう

また、特殊な状況ではあるので湯本研究員の話をよく聞いてほしい。では、湯本さんお願いします」


スーと立ち上がった湯本は身長がゆうに185センチは超えるであろう長身で、ものすごく

痩せている、着ている紺色のスーツはサイズが無いのか、かなりブカブカだ。

それに人前にあまり出ないのか緊張がこちらにも伝わってくる

「湯本です・・・よろしくお願いします。早速ですが、3件の同一ウイルスの件ですが。

今のところまだ、詳しいデータは出ていませんので現状分かる範囲でお話しします

基本的な特徴はインフルエンザウイルスの特徴を示しています。

しかし、このウイルスは操作されたウイルスのようです。

人工的にウイルス同士を掛け合わせている事が判明しました。その、方法はまだわかりません

掛け合わせたウイルスはフィロウイルスであることはわかりました」

手を挙げたのは、仲元だった。

「すみません、フィロウイルスとはなんですか?」

話のリズムが狂ったのか、これから話そうと思っていたのか、湯本は度のきつそうな眼鏡に

手をかけながら怪訝な表情をみせた。

「え・・・フィロウイルスとは今皆さんのお手元にあります資料の5ページに記載してありますが

現在のところ日本国内での発症例のないウイルスです。」

会議室はどこかの大学のように、一斉にページをめくる音であふれた。








田岡の表情は困惑していた。

安永管理官が1班の方に向かって

「みんな、ちょっといいですか?今回の世田谷の事件は合同捜査本部を立ち上げます。

増員もかかりますが、特に科捜研との連帯を強調する形にはなると思います」

「科捜研ですか?まあ、今までも協力はしてきてもらてはいましたが、特に協力してもらうとは

どうゆうことですか?」

「細かいことは、田岡くんから聞いてください。私からは以上です。では、捜査本部で」

そう言うと安永管理官は、足早に部屋から居なくなってしまった。

「田岡係長。どういうことなんですか?」

1班で一番年上の神谷が聞く。

「ああ、いま説明する。」

田岡は事件の概要を話し始めた。

「今日、世田谷のマンションで死亡していたのが、佐久間 香苗 22歳

実家は北九州の指定暴力団、佐久間組だ。」

「あの、佐久間組ですか?」

「そうだ、佐久間 香苗は初代の孫娘だ。一人だけの孫娘だそうだ」

(だから、あのマンション・・・)

町田はセキュリティが整った、あのマンションの意味がわかった気がした。

安全が何よりも優先されたのだろ。自分のために孫娘に何かあってはと極道でもやはり孫は

可愛いのだ。

「佐久間 香苗の死因は病死だ。」

「病死?」

谷田部が今度は田岡にきく

「病死って、私たち1課と関わりがないじゃないですか?科捜研が出ることもないし?」

田岡はヒゲに手を当てながら、話を続けた。


「・・・同時にあと、二人自宅で佐久間 香苗とほぼ同じ状態で発見された。

一人は、新宿、もう一人は目白だ。今は科捜研が動いている、三人の死亡はいずれも初見では

病死だったが、病状が特殊なことからこの3件の病死には何らかの繋がりがあるのではないかと

科捜研と話し合い合同で捜査することになった。」




「え?」

全員が被害者から身を引く。

「まだ、確定ではないのですが遺体の状況は感染症による症状がみてとれます」

「そうですか。」

さすがに田岡も感染症での呼び出しは今まで無かったのだろう、いつものきびきびした動きはなかった

「じゃ、自然死・・・?ですか?」

「いえ、それもまだ、わかりません・・・。

今回は検視結果を見てからの判断になると思うのですが、ただやはり疑いはあるのであまり

近づかないで頂いた方がいいと思います」


部屋全体に広がった異臭に何かしらの菌かウイルスが混ざっているのだろうか?

田岡の携帯が鳴る、それを合図にその変死を遂げた女性の部屋から全員がでた。


「はい、わかりました。はい・・・そうですね。はい、失礼します」

「いったん、戻るぞ」

「え?このままですか?」

「そうだ、本部からそうしろと連絡が入った。」

町田は出端をくじかれたようになってしまったが、さっきの鑑識の話を思い出すと

そうなっても仕方ないのかとも思った。

あの超高級マンションの角部屋で変死した女性が何を示唆するのだろうか・・・。



本部に戻ってから、田岡は管理官の部屋に行ったきりすでに1時間は過ぎているだろうか。

壁にかかった古い時計に何度か、目を向けた

「町田さん、さっき鑑識の安田さんが言ってたこと、どう思う?」

仲元がいつの間にか隣の席について、話しかけてきた。

(この人、こんなにおしゃべりだったかな?)

「え?どうでしょうか・・・でも、普通?ではなかったと思います」

「う~んそうだよね・・・って敬語じゃなくてもいいですよ。同期だし同じ年だし階級も

同じだし、ね」

(そんなこと、言われても…)

「・・・いえ、ここでは先輩ですから、今後も敬語で話します」

「!!・・そう?そこまで固くなくてもいいけど、町田さんがそう言うならそれでいこうかな」

「はい、そうしてください」

仲元は見た感じそんなに軽い・・・?チャライ感じもしないのだがどちらかといえば

渋谷のショップの店員にいそうな風貌ではある。

刑事ドラマや警察24時なんかに出てくる熱血刑事とはいかないようだ

(警察学校は基本的には坊主頭にしなくてはいけなかったからかな?どうも私が知っている
仲元君のイメージとちがうんだよな・・・)


刑事部のドアが開き、管理官と田岡が戻ってきた。