日本は昔は東の果ての小さく弱い国だった。

沢山の戦争をしながら今の日本がある。戦争の度に医学は進み、力を増した

兵士を感染症から救うために抗生剤は開発され、兵士はまた戦場に戻された。

医学と科学が薬と毒を作り続ける。片方は命を助け、片方は化学兵器として大量虐殺を行う

人は何がしたいのか・・・・・?

だが、私はこの世界を変える新たな力を手にした。

目には見えない地上で最強の生物。この新たな生き物が人に及ぼす危害は凄まじい

生きながら内臓は溶けていく、なぜなら細胞の一つ一つが融解し形を失うからだ。

発熱、腹痛、嘔吐、下痢、吐血、下血、体のあらゆる所からの出血。

苦しみながら約5日で死ぬ。

私にはこの新たな生き物をコントロールする事ができる。

いつでも、どんなところでもモンスターを放つことが出来る

人々にプレゼントをしよう

新たな恐怖を・・・。


その者は、暖かい日差しの中桜が舞う小道を歩いていく。

すれ違う人たちは、この者の正体には気づくことはできない。

人々に紛れ、花見をするただの人だからだ。

悪魔のようなこの者の計画は既に始まっているのに・・・。




会議室に残された私たちはあとの2人の被害者、鈴木 優 21歳大学生こちらは新宿署の事件

工藤 隆久 21歳大学生 目白署の事件を見ることにした

SDカードに香苗と同じように自室で病気になり死亡するまでの経緯を記録したものだった

検死報告書も3枚あり、犯人が脅迫文の中でウイルスを使った事は明白であったが、

国立感染症研究所にもサンプルは送られ、検査の結果が死亡報告書にも添付されていた


3体の遺体より検出した、血液、体液、排泄物の中からはインフルエンザウイルスとエボラスーダンと思われるウイルスが検出された。

しかし、感染経路は見つかっていない。

他、すべて検査中。


検死を行うにあたって、レベル4のウイルスを封じ込む施設で行うのが望ましい。


(検死は国立感染症研究所内のレベル4施設で行ったということ?)

町田は自分が置かれていた状況が今になって、より恐ろしい事だったと痛感させられた。

佐久間 香苗の死にざまは孤独と恐怖に支配された、悲しいものだった。

私たちもあのウイルスに感染していたのなら同じ末路を辿っていたのだ。

「田岡さん、私たちは大変なことになっていたのですね」

町田の問いかけに田岡もうなずき

「そうだったんだな・・・」


SDカードを見つめ、佐久間 香苗や二人の被害者の最後を考えた時、田岡はもしこれが

簡単に人へ感染させられ、なおかつ犯人がウイルスをコントロールすることが可能ならば

この先に起こる現場をどうしていったらいいのか、考えられなかった。

感染への対応や、もちろん一般市民への情報開示や対応。

仮に、今回の事件がこの3件で終わったとしてもこれからは、類似事案があった場合・・・

・・・・考えれば、考えるほど、自分がただの人であると思い知らされる・・・

俺には部下の命を守れるのか?

俺から家族へと感染したら?

俺にだって定年後楽しみにしている事だってある・・・死にたくない。

ウイルスという恐怖の毒が田岡に襲いかかった。

「係長?・・・大丈夫ですか?」

矢田部が心配そうに声をかけた。

「ああ」

現実に引き戻された感覚だった。




3/28日PM8:28

一連の流れは変わらず、体温をはかる42.9℃

画面に香苗のアップが映り目は開いてはいるがウサギのように真っ赤になった。

頬は赤紫の毛細血管が浮き出ていてまるで死斑のように見える

薄いシーツをはぎ取られ、倒れた時に着ていたのであろう黒いジャケットと白いスカートを

着た香苗が衰弱し横たわっている

カメラが全身を映す、顔から足までゆっくり、ゆっくり時間をかけ観察しているかのようだ。

腰の辺りのシーツは排泄物でかなり汚れている。よく見ると下血した後も残っていた。

足はむくみ頬と同じように血管が浮き上がって見えた。


3/29日AM7:53

香苗が痙攣を始める。痙攣は徐々に激しくなり全身が弓なりに硬直した。

その次の瞬間、大量の吐血を始め、音声は聞こえない画面の中の香苗の断末魔が聞こえたように

思えた。

香苗は動かなくなった。

部屋のカーテンの隙間から朝日が弱く香苗を包みこむ、かつては美しかった顔はむくみ

耳や鼻、口の中あらゆる所から出血がおこり、目は見開かれ壮絶な死を物語る


画面は真っ暗になり一人の女性がこの世から、いなくなった。


町田は椅子の背もたれに無意識にトンと寄りかかり大きく息をはいた。

知らぬ間に口元にあてた手は、握りしめた跡が白く残るほど、指に力が入って冷たくなっていた。

(これは、何?)

実験、観察・・・?

彼女に何が起こったの?

なぜ、こんな死を迎えなくてはならなかったの?

混乱し怒りが身体を貫くようだ。

安永管理が

「他の2人も今みた佐久間 香苗と同じような死に方をSDカードに残されていた。犯人が撮影した

物と考え特捜にも増員を頼んだ。残りも見てもらってかまわない。私はもう十分なので退室する」


スッと立ち上がりそのまま会議室をでた。