わたしの名前は・・・とりあえずは・・・M

そのうちにわかるだろ。

わたしの信念は、始め、地球環境をこれ以上人間に破壊されないようにしたかった。

海も川も大地も、そして今や宇宙までも人間は汚している。

宇宙には無数の宇宙ゴミがこの地球の周りを周回している。

衛星を飛ばし使えなくなったら殆どはそのまま放置している。100年後の地球の周りには

土星の輪のようになっているかもしれない。

海や川は、生物が少しづつ居なくなっていくかもしれない。

森は木々がなくなり、花は咲かなくなるかも・・・。

良いのか?このままで?

人間・・・そんなに壊していいのか?

ずっと、わたしは変えたかったのだろ。わたしを含め周りのすべてを・・・。

しかし、どうやって?

ひとりひとり、人間を殺して回るのでは無理があるし、効率的とは言えない。

では、武器を使って大量に始末するのか、これも、効率が悪いし核戦争になってしまっては

意味がない。

大量に、かつ迅速に人間をこの美しい地球上から抹殺するには

病気にする。

しかも、治療法がないウイルス・・・。

致死率が90%を超すウイルスを開発すれば、わたしの願いはかなう。


明日、わたしは願いを叶えよう。自分のこの手で・・・。
「さて、概要は報告があった通りだが、本件の大佐古徹殺害事件と田岡の2係1班の3人のウイルス殺人は繋がっていると考え、捜査にあたるつもりでいる。

ウイルス殺人の方はかなり繊細な対応が求められる事案である、またマスコミ等への対応は

特別に行って欲しい。なぜなら、大規模なパニックを引き起こしかねないからだ。

捜査員が増えることで情報の漏えいなど起こらないようにしてもらいたい。

箝口令だと思ってもらって構わない。一般市民がパニックを起こしてしまったらどうにもならなくなる事はみんな想像できるでと思う。

また、わからない事があればかならず質問してほしい。

ウイルス殺人の事案は極秘扱いのファイルがある、IDとパスを各班の係長に確認して見て欲しい

以上」

安永管理官は淡々と冷静に指示をだした。

大佐古徹の事件を担当する捜査官もすでに話は通っているようで、全員が一様に重く頷いた。

これからの捜査方針を決める。

「田岡班は引き続きウイルス殺人を担当してほしい。増員を希望する場合は相談して欲しいのだが

出来れば少人数で大変だとは思うがこのままの人数で頑張ってもらいたい。理由は分かると思う。」


田岡が「はい」とだけ返事をした。

「大佐古徹殺害事件は、異例ではあるが湾岸署から本庁に預かることになる。」

会議室がざわつく

ここまでのところは湾岸署が捜査する様な話の流れだったはずが、預かると安永管理官から

言われ、署員は拍子抜けしてしまった。

目の前の事件を奪われて、どうにも気持ちが収まらないのも無理もない。

「管理官、これはどいう事なのでしょうか?我々は必要ないから、下がってろってことですか?」

一人の捜査員が安永管理官にかみつく。

もちろん安永もこうなる事は予想していた。

「気持ちはわかります。ですが、今回の事案は決定したことです。大変申し訳ないが

本庁で預かります。」

この一言で警察組織に居る以上変えられない現実をこの場にいる捜査官は、悟るしかなかった。

ざわめきは諦めにかわり、会議室は静まった。

まだ、あちこちでため息や、ノートをわざと音をたてて閉じる者もいたが

安永管理の冷静な行動をうけ徐々に落ち着いていく。

「では、解散」

全員が立ち上がり敬礼をし解散になる。

紺色のスマートなスーツ姿の安永は片手にノートPCを持ちその場を離れた。

警察官だと知らない人は、きっと安永を外資系かIT関係のサラ―リーマンだと思うだろ。

田岡とは全く印象は違う。髪も、髭も常に整えられた、安永はまさしくキャリアなのだと

こちらに思わせる。

しかし、町田は安永をキャリアで出世しか頭にない男には見えないと前から思っていた。

最初の印象は、キャリアってこんな感じなのかなと見ていたが、田岡との付き合い方と

2人の間の信頼関係を肌感じることが時々あった。

2係1班と鑑識班が隔離された時も、病院に毎日足を運び田岡や、他の捜査官の経過を

見守っていたし、田岡との連絡は隔離病でも欠かさなかった。

勘違いされる立場とキャリアという肩書が先行しがちなのだろうと思う。

(もう少しだけ、やわらかな印象になればいいのにな・・・)


町田はカツカツと歩く安永を見送った。




犯人像・・・。

今まで関わったどの事件にも共通しない。

ウイルスを毒物に置き換えれば、何らかの答えは出るかもしれないが、かなり乱暴なプロファイリングになってしまうだろ。

どこに、焦点を当てて捜査をすれば・・・。

脅迫文には自分を神だと表現していた、妄想?

支配的思想・・・頭がごちゃごちゃしてきた。

イライラと髭を擦る。

田岡の背中を町田は見ていた、難しい捜査になると田岡は無精ひげをゴリゴリ鳴らしながら思案にふける。

人にはいろいろな癖がある、髪をかきむしる人やペン先を噛む人、たえず足をゆする人

様々だ。田岡の癖や、仲元のペンを唇に当てる癖も気にしなければ、いいのだが町田はどうも

気になって覚えてしまう。自分の癖は・・・?

(捜査に集中しなきゃ!)


町田は今回の事件が鍵になっていると思った、3人を繋ぐ大佐古とウイルスが犯人に繋がる唯一の

道だ。

まだまだ、経験はない、だからこそ刑事の勘みたいなものを信じたい。

もし、大佐古に近い人間が一連の事件を始めたなら動機を知りたい。

その動機は神になりたいとか、そんなものではないだろう。

もっと違う何かが動機のはず、町田はいつの間にか腕時計に手をやっていた。

文字盤をさわり、皮のベルトに指をやる。

(あ・・・これって癖かな?)

母と父がくれた時計だ、15歳で高校の入試の時に時間に遅れないようにとプレゼントしてくれた。

昔から緊張しやすくて、ドジな私を気遣ってくれたのだ。

「美那は、ちょっとだけドジなところがあるでしょ。だから、お守りみたいな物よ。」

そう言って母は微笑んで私の手首に時計をしてくれた。

自分の腕時計は初めてだったのでとてもうれしくて何度も時間を見たりした。

もちろん入試も無事に合格できた。その時から私のお守りで、精神安定剤の役目も果たしてくれていた。

会議室に安永管理官が入ってきた。それまで、各々話していたが静かになった。

全員が前方の安永管理に注視し

「起立!礼! 着席」

「これより、管理官から話があります。」

進行は、湾岸署の警部のようだ。