「それでは、いつもあまり高橋みなさんとはお話などはなさらないですか?」
「はい」

「昨日は何時くらいに塾は出られましたか?」
「え・・・と5:30くらいかな。5時くらいまでテストして、それから明日・・・違います
今日の塾のスケジュールなんかを確認しました。友達と少し話した・・・あ、その時高橋さんもいました。

「最後に話したのは佐々木達弥君あなたと、他にはいましたか?」

「・・・」

(あの日は、靴置き場で、高橋と鈴木かなさんと高岡由香さんが3人で話してたな。言ったほうがいいのかな・・・?)

「まあ、塾のクラスの人は何人かいましたが、靴置き場には帰る時間になると人は沢山います。だから、僕だけじゃないです。他のみんなはなんて言ってましたか?」

「あなたと、高橋みなさんが話していたのですか?」
「・・・」(僕の質問に答えてない・・・)

「違います。高橋さんと話してたのは、鈴木かなさんと高岡由香さんです。」

「それでは、あなたは話してないのですか?」
「見ていただけです。」

カタカカタ・・・カタカタ

(貧乏ゆすり、まあ無理ないか。中学生だもんな。)

「それでは、質問を変えます。高橋みなさんを見たのは塾の靴置き場が最後でしたか?」

「はい・・・」

「???」

「どこか、他で見かけましたか?」

「・・・・」
「どうですか?」

カタカタカタ・・・(膝をさすりだした。落ち着きも無くなってきたな。)

「どうですか?なにか、思い当たることはないですか?」

(おいおい、そんなに追いつめるな。ここらで、代わるか・・・)
吉田さんの発言に他の捜査官が私を一斉に見た。そして、また仕事に戻った

(この状況で普通なのは、経験?のお陰なの・・・それとも、みんな我慢してるの?)

すべての鑑識班の仕事がかたずいた後もう一度、被害者の状況などの説明を受けた。

彼女は、監察医務医のもとに運ばれて行った。

その後、捜査本部が立ち上がり、私はシキカン・・・被害者の知人や家族に話を聞いて回ることになった。




(あれ?普通刑事って二人で聞きに来るものじゃないの?それに、女の人一人って・・・)

「おはようございます。田岡と申します。」

二人ともほぼ同時に警察手帳を見せてきた。

(おおお、ドラマみたいだ。)

「佐々木達弥です。」

(なんだ、後ろに居たんだ。田岡さんって男の刑事ちょっと小さいな。165センチくらいかな?でも、なんか、格闘家みたいにスーツの上からでも筋肉がわかる。)

「佐々木達弥さん、昨日お電話差し上げましたが、お母さまから話は伺われてますか?」

「まあ・・・はい」

(女の刑事さん。言葉使い丁寧だな・・・)

「昨日、高橋みなさんと塾で一緒だったとか。なにか、高橋みなさんと話されましたか?」

「いいえ。そんなたいした話はしてません。ただ、プリントを配られたときに拾おうとして頭をぶつけました

しかし、パトロール中の警察官が浦和駅前から、市庁舎前通り、国道213号を通り
調神社方面を巡回中に神社近くの路上にて、捜索願の出ている高橋みなの自転車を発見した。

その後、神社境内から、近くの女子高に通う高校2年生の渡辺郁16歳から通報を受け、
現場に向かった。

私が現場に着いた時には、神社境内はブルーシートと黄色いテープで仕切られていた。
夏の夜特有のじめっとした、肌に付く重たい空気と警察官という職に就いてからずっと馴染めない
血の匂いが混ざっていた。

鑑識のベテラン捜査官の指示のもと、現場に入った。

捜査2課に来て、4年。はじめて、嗚咽しそうになった、そして、ここから逃げたいとも思った

彼女は、境内のたぶんうさぎの石碑の裏に横たわっていた。

石碑の周りには、大量の血痕。一目でもう、生きてはいないと思わせる量だった。

一瞬うつ伏せのように見えた。他の捜査員と共に、丁度被害者の足元から全体を見上げるような恰好で、足首からスカート、腹部、頭。

頭・・・?なんで仰向け?

(ううう)急いで口元に手を当てた。

彼女の顔は空を見上げていた、もう何も見ることのない黒い瞳。悲しいほどに赤い瞳。

死に際、眼底の血管が切れたのだろうか。赤い涙のようにも見える。

そして、口からは信じられないほど長い舌がのぞく。首を180度ねじられたから鼻や頬はひきつれていた。

ほんの数時間前までの高橋みなの顔と今の私の目の前にいる被害者高橋みなが同じ女子中学生には到底みえない。

「この、害者・・・かなり抵抗したようですよ。膝やら手にもかなり傷があります。
でも、信じられますか?人の首がこんなにもねじられるものでしょうか?」

鑑識の吉田さんこの人が現場で言葉を発するのを始めて聞いた。

「ええ・・・」まだ、口元から手を離せない。血の気が引いていくのを周りに悟られない様にするのがやっと。

吉田さんは私が捜査2課に配属になってから、何度か現場でお世話にはなっている。ベテランの鑑識捜査官で、今年50歳になり、初孫も出来ていた。あまり、プライベートなことを進んで話す人ではないが、初孫が生まれる予定日前後には、珍しく有休をとっていた。

背が高くいつも見上げるような姿勢で私は話すことが多かったが、今回は被害者に屈み込むように吉田さんがいたため、自然とうつむくような姿勢で会話をしていた。

「大丈夫か?なんだか、顔が青いように見えるぞ?まだ、いろいろ調べるから吐くなよ。」

「はい、大丈夫です。」