真っ暗だ。

手首が痛い。足首も痛い。首も起き上がることも出来ない。

寒い。

ここは?

ペタペタペタ・・・足音がする方に目を向けようとした・・・。

目が熱い・・・。頭を動かそうとしたがうまく動かない・・・。

なぜだ?

「もう。見えないわ・・・。」

「だれだ?」

「だって、目玉を取ってしまったから・・・見えないわ」

「・・・・?????」

「痛くないのは、お薬のせいよ。でも、また痛くなるわ」

(????なんだって?僕の・・・僕の目玉)

確かに頭はボウっとしているし、ろれつも回っていない強い鎮痛剤と筋弛緩剤、両方使われているらしい。



耳元に人の気配を感じた。

「もっと楽しくなるわ」

小声で囁くその声に僕は絶望と恐怖を感じた。

まるで、瀕死のインパラが喉に食らいつくライオンの吐息を聞くように何もかもが支配され

ただ、この世の最後を待つことになるのだろ。



僕はまた、薄れゆく意識の中考えた。

僕はずっと、真面目だった子供の時から躾の厳しい両親、祖父母に囲まれ必死に勉強もしたはずだ

僕は学校も真面目に通った、暴力で僕を支配しようとする同級生や見ても見ないふりをする大人にも我慢した

僕は、僕は沢山勉強したし、素行だって悪くなかったなのになんで僕よりも出来の悪い同級生が

いい会社に入り、給料をもらうんだ?

小雪が舞い始めた、暑い夏の後は厳しい冬が来るのだと聞いた事がある。

吐く息は白く、関東では珍しく水分が少ない粉雪だ。慣れていないこの芯から凍える感じ、

やはり、末端から冷えてくる。手は、ズボンのポケットの中に深くしまい肩はこれ以上固まれないくらいに固くなって、肩こりがひどくなる。

田岡は、町田と共に夏に起きた連続少女殺害事件の捜査を行っていた。

田岡の考えた、佐々木潤との関連性は証拠、犯行手段、現場の状況などの類似性が足りなく

今のところ別件扱いであったが、田岡は関連性があるとずっと考えていた。

「今日は冷えますね、コーヒーどうぞ」

町田がコーヒーを運んでくれた。かれこれ半年近くコンビを組めば相手の好みはわかる。

熱いブラックコーヒー

「ああ、ありがとう。」

事件は2件目以降続いてはいない。なぜだろうか・・・?

犯人がより慎重になったから・・・?

犯人が病気、怪我をして動けない・・・?

犯人が自殺・・・?


どれも、腑に落ちない。



電話が鳴る

「はい、浦和西署1係です。」

町田が電話に出た。

「はい・・・はい・・・代ります。」

「田岡さん、佐々木達弥の母親が話があるそうです」

保留音に切り替えてから町田が田岡に電話を繋いだ。

何の話だろうか?

「はい、代わりました。田岡です」

「・・・・・・・、」

「すみません。電話が遠いようです。もう一度お願いします。」


「あの・・・見ました。見たんです。あの男が潤のハンカチを持っているところ・・・・」

「・・・?」

田岡の顔が険しくなる。

「佐々木さん・・・お話もう一度伺えますか?すぐにお宅に伺います。いいですか?」

「ツーツーツー」

電話は切れた。

「町田、すぐに出るぞ。佐々木達弥の家に行くぞ」




また、凶器は自分で用意している可能性が高い。

現場周辺ではまだ、凶器は見つかっていないことから、絞殺時に使用さてたと思われるロープまたは

それに類似するものを所持している。

被害者を選ぶことに時間をかけている。ストーキングを行い自分の理想とする被害者の行動を把握している。

粘着質な性格・・・。

犯行は夏の夕刻、日が傾きかける時間帯に被害者を歯牙にかけている。

こめかみがズキズキし始めた。

会議室にはもう田岡しか居なかった。壁にかかっている時計をみるともう2時間以上たっている。

外は暗く、会議室の蛍光灯がジーっと音を鳴らしていた。

自分の書いた手帳を見返す、佐々木潤との関連性は高いように感じるが

佐々木潤の遺体遺棄現場は、他の2つの事件とは違う。

河川敷に物を捨てるように何のメッセージも感じられない・・・。

佐々木潤の事件が犯人とってターニングポイント・・・。

第2章のようなものだったら?

田岡は不精髭をゴリゴリと鳴らしながら、顎のあたりをさわる

考えが飛躍しているだろうか・・・。

点はいつか線になり、パズルのピースが見つかればまた被害者が増える

ピースは欲しいがもう被害者も見たくない。

冷たくなってしまたコーヒーをすすりため息がもれた