僕は初めて警察署の取調室にいる。

映画なんかで見る感じと同じだ、ただ事件の関係者としてこの部屋のいるのは

やっぱり落ち着かない。

田岡って刑事さんはまだ来ないのかな・・・。


達弥は立ったり、座ったり、窓際によって外を眺めたり、落ち着かない様子が見て取れる

隣の部屋から鏡越しに田岡と町田が達弥の様子を見つめていた。


「田岡さん、なんか様子・・・おかしいですよね?普通・・・先入観は良くないのは分かってます

がもう少し、沈んでいる様子とか、ありますよね?」

「ああ、そうだな。」

取調室にいるという緊張感がまるで無い、何かのアトラクションに並んでいるかのように

少しハイな印象をうける。

どういう事なのか?



まだ、来ないのかな・・・


無意識に爪を噛みはじめた・・・そのうちに奥歯をギリギリ鳴らし、カタカタと貧乏ゆすりを

はじめた。

まだ、来ない・・・。

もう来てもいい時間だよな・・・


「田岡さん・・・」

町田の目に明らかな疑念と不安が浮かび上がる
達弥の顔は蒼白で、細かく震えていた。

田岡は達弥の腕を軽く握り

「少し、話せないかな?」

頷き共に歩き出し、達弥の頬には涙がこぼれ始めた。うつむいた横顔が母美沙によく似ている

マスコミも駆けつけた自分の家を見ないように達弥はPCに乗り込み、田岡と署に向かった

PCから見る外の騒ぎはまるで何かの撮影をしているようで現実との一線を引いたようだった。

赤い赤色灯の色やカメラのフラッシュ、人の声、規制線の黄色のテープ

全部どこかのテレビドラマで見たような景色だった。

車に乗った達弥は無言のまま外を眺めている、もう涙は消えていたが奥歯を噛んでいるのだろう

顎の筋肉はひどく張っていた。この状況にこの少年はどう対応していくのだろうか・・・




取調室では美沙への取り調べが始まった。

美沙は少しも隠さず、加藤を拷問し殺害したことを自供した。

取調官の美佐への印象は、買い物に行き、いい魚が手に入ったからさばいた。

とゆうふうに日常起きていることのように今回の犯行の事を話している。

あの惨状を後悔する様子も見受けられないそうだ。


ただ、動機について話が及ぶとうつむき泣き出してしまい、話が出来ない

「あの子を・・・返して・・・」

と何度も繰り返すのみだ。

状況をみて精神鑑定を受けなくてはならないだろう


しかし、なぜ美佐は加藤が犯人だと確信したのだろうか?

その点には

「わたし、見たんです」

とだけ答える。これも同じことを繰り返しているのだという


動機は、たぶん2年前の事件。

犯人を加藤だとういう確信をどこで得たのであろうか?


田岡はまた嫌な予感にさいなまれた。


別室に佐々木達弥を待たせ、話を聞こうかと廊下を歩いていると目の前に町田が立っていた

「田岡さん、私にも達弥君への調書・・・同席させてください。」

「???」

町田とは約半年間ずっと行動を共にしてきた。だからこその{?}

彼女は、増員された元は2課の詐欺などを担当する刑事で今回のような殺人事件に関わったのは

初めてで、出来ればもう犯人美佐も逮捕できたし、関わりを避けるのではないかと田岡は思っていた


町田の申し出に驚いてしまった。

「ああ、いいけど・・・何でだ?本当は関わりたくないだろ?」

「はい、でもどうしてもこれまで自分が関わった2件の少女連続殺害事件と2年前の佐々木潤の

事件とが結びつかないです。だから、佐々木達弥君に話を聞きたいと思いました。」


また、驚かされた。田岡も同じ事を考え始めていたからだ。

田岡は始め加藤がすべての事件の犯人かと思っていた。しかし、美佐の犯行により

なぜ?加藤だと分かったのか。という疑問が湧いてくる。

だからこそ加藤とつながりのある達弥の話を聞きたいそう考えていたところだった。











田岡が見た今までのどんな遺体よりも凄まじかった


その部屋は地下にあった。元々は佐々木美沙の趣味の絵画のために作られた部屋だった

しかし、その面影はなかった。

部屋中に貼られたビニールシートはほぼ血しぶきで覆われて、今まで何が起こったかをものがっていた

被害者は息子達弥の塾の講師、加藤将(28歳)。

田岡が何度か話を聞いた男だった、不審な点は捜査上では上がってこなかった

だが田岡はこの男に話を聞く度に限りなく犯人に近い存在だと感じていた。

ただ、証拠もアリバイも犯人だと示すものがなかったのも事実、何度か本部に任意同行はできない

かと掛け合ったりもしたのだが、任意をかけられる理由がないとなり、今にいたってしまった。


佐々木美沙は二人の捜査員に挟まれ、この現場を見守っていた。

魂の消えた加藤の遺体を見つめる美沙は以前会った美沙ではなかった、既に目標を遂げ加藤にも

田岡達捜査員にも無関心な様子がわかる。

「佐々木さん、これはあなたが行ったことですか?」

「・・・・」

「佐々木さん?」


「・・・はい」

「では。緊急逮捕になります。16時29分逮捕。」

カチャ・・・佐々木美沙の細い手首に手錠がかかった。

「話は署で伺いましょ。」

「・・・」

「佐々木さん、いいですか?」

小さく頷いた。

血なまぐさいその地下室から美沙は町田と出て行く、美沙はほとんど逮捕時も動かなかった。

階段を上りかけて振り返り田岡の目を見つめながら

「楽しかったのよ・・・。本当に」

と囁くように言った

田岡は深い悲しみの中に引きずり込まれた、美沙にかける言葉がなかった。

町田に促され美沙は歩き出した。



鑑識が到着するまで、現場保持に努めなくてはならないが捜査員の一人が我慢しきれずに

外に出て吐いた。



加藤は包帯で巻かれている部分がほとんどで、顔もわからないまるでミイラのようだ

そして切り取られた身体の部分は、無造作に床に散らばりすでに腐り始めている部分も多かった

「田岡さん、私も外に出ていいですか?」

「ああ。俺も外に出る。」

捜査員と共に現場を後にした。

鑑識班が到着するまで、数分待ち鑑識に中の様子をあらかた伝えた。

やはり、新人にはかなりキツイ現場ということも話しておきたかった。

「分かりました。十分注意します。」

ベテランの鑑識捜査員が返事をしてくれた。

鑑識が入ってしばらくしてから、遺体袋に包まれた加藤が運び出され

さらに外からは分からにように加藤の身体の部分が運び出された。


佐々木家の周りはかなりの数のパトカーと人だかりができ、近所に奥様達がヒソヒソと話す声が聞こえた。



今よりももっと野次馬が増えるだろ。

マスコミも悲惨な事件を嗅ぎつけすぐに集まってくる。

田岡は、PCに乗り込みしばらく外を眺めていた。

もっと早く気づいていれば、佐々木美沙の強行を止めることができたのではないか・・・。

加藤のことにもっと早く気づいていれば・・・。


人垣の中に佐々木達弥が見えた、田岡はPCから急いで降りて佐々木達弥の元に歩き出した

他の野次馬に気づかれないように声を掛けたかった。