すみれが最近一人で階段の上り下りが出来るようになった。
すみれは新しいことを教えるとき恐怖心が先に立つらしく、混乱する。
階段の上り下りも、私が階段下が見えないように視界を遮って座り、最後の3段をお尻を支えて登らせようとすると体が硬直して石のようになる。下の3段を降ろそうとすると、目をつぶって転げ落ちるか私に向かって飛びつくかする。
そんなことがしばらく続き、次第に4段になり5段になり、ある日ようやく全段制覇した。
犬も何か新しいことが出来ると、その嬉しさが顔に出る。
自信がついたようで顔を上げて嬉々として上がってくる。
降りるときはややぎこちないが、それでも確かめるように一段一段おりてくるようになった。
今まではあやめは「ずるいっ、スミちゃんだけ抱っこされて!」と言わんばかりに待ち構えて噛みついたりしていたが、今では振り返りながら一緒にリビングに入ってくるようになった。
すみれは生後5ヶ月までペットショップにいたので、出来ないことや怖いことが多いのだ。
・・・と思っていたが、そればかりでもないのかも・・・と最近思う。
最近「野良犬トビーの愛すべき転生」と言う本を読んだ。
野良犬として生まれたトビーが生まれ変わって家庭犬に、また生まれ変わって警察犬になって、自分の生まれて来た意味を考えていく、アメリカでベストセラーになった本だ。
犬の目線で描かれていて、読んでいくうちに引き込まれ、読後感がすごく良かった。
私は物心つく前から海が怖く、海辺で抱かれている写真は全部泣いている。
実はいまだに海は怖い。これは理由がないのだ。ただ怖い。
それで、私は前世で平家の幼い子供だったことがあり、壇ノ浦で入水したので海が怖いのだと思うことにした。
もちろん妄想だ。
でもその妄想は楽しい。苦手なものに勝手に理由を見つけて一人で納得している。
他人や犬が何かできない時も、私は良く前世のせいにすることがある。
そうするといらいらしたりがっかりしたりしないですむからだ。
それどころか色々想像して楽しくなってくる。
すみれが怖がりなのは長くペットショップにいたせいだけではなくて、前世は野良犬で、人に飼われたのは今回初めてなのかも。
あやめの水好きはフツーじゃないから水難救助犬だったかも。
縁あって出会った子に今世どれだけの経験を積んであげられるかなぁ。