前回にひきつづき、『完全無所属』の候補と政党の推薦を受けた無所属の候補について、有権者の立場からはどのような意味合いがあるか? 考えていきたいと思います。

前回(その2)の記事で書きましたが、一切の推薦・支持・支援をも受けない『完全無所属』("群れない"とは限らない)は、政党の色を嫌う無党派層の票を集めやすい特性があります。反面、当選後の議会では「数の力」が重要な場面が多く、大府市では少数会派でもあるため、議決に大きな影響を与えることは有権者としてあまり期待することはできません。大府市では過去、ほとんどの議決での賛否は多数派の自民クラブ/親和クラブと無所属クラブは同じ賛否になっており、実際には『完全無党派』であっても、実質はオール与党と変わりません

それでは『完全無所属』ならではの成果は、どこに出るのでしょうか?

議員の特色がでる場として、市議会には「一般質問」という、議員の裁量で自由に市政に対する意見を言える場があります。ここで市長をはじめとする市政執行部門の答弁で「やります」「検討します」という答弁が引き出せれば、市議にとって「自分の意見で市政を改善した!」とアピールできる貴重な成果獲得のチャンスになります。議決の場で差別化が難しい少数派の会派・無所属クラブにとって、このまたとない機会を最大限活用しよう、と考えるのは当たり前の方針になります。たかば候補が公報で訴える「16年の発言数ナンバー1」は、議会少数会派の『完全無所属』戦略を選ぶ以上避けられない、当然の戦略を当初予定どおりきっちり実行しましたという意味であり、『完全無所属』でないと実現できない高度な成果というよりは、完全無党派のポリシーのコストを予定したとおり負担しました、程度の意味合いに受け取るのが妥当と思います。議員の評価は発言数よりも、それによって得られた/将来得られると期待できる成果でなされるべきでしょう。

親和クラブ会派の議員は年齢は高めですが、そのぶん何かしらの社会・職業経験を積んでおり、個々の得意分野をもちより会派全体で多様な政策課題に対峙するという戦略をとっています。会社などの組織で部門が協力してすることで効率よく仕事を回すという考え方に似ています。個別の議員には苦手分野もあるため、個別には失敗をやらかすリスクもあります。これも会派全体として連携してバックアップするというのが基本的な対処方針となります。

いっぽう、『完全無所属』の場合、役割分担の枠にとらわれず自由な着眼・発想で市政のチェック機能をはたすことができます。市政全般をバランスよく見ようとすると、ひとりで広い分野にわたっての知識が必要なぶん、幅広く勉強しないといけません市議以外にも仕事をもっているとか現場に接する時間が長い立場だとなかなかとれないアプローチのため議員専業となることが多く、その分、一般社会人の現場感覚が乏しく、ともすると現場感覚のない、理念先行の取り組みに傾くリスクもあります。

いち有権者にとっては、「親和クラブ会派」も『完全無所属会派』も、どちらのアプローチもそれぞれが利点と欠点があるのであり、どちらが特に優れているということはありません一般論として、同じ成果を得るなら集団で取り組んだほうが効率的なことは組織の仕事の経験がある人なら誰でも知ってるし、多少能力の低い人がいても集団としてカバーできる安心感・安定感は期待できます。『完全無所属』にしても、他の会派の平均レベルにくらべ個の能力が明らかに高いのであれば、その優秀な能力を存分に発揮するのに適したアプローチなのかも知れません。

結論
・専門的な知識を生かした現場経験とそこに根差す明確な解決モチベーションをもつ点や人柄を重視し、特定の分野で相談に乗ってもらいやすく、党派色はあまり気にしない人は親和クラブ会派の時安候補に、
・個別の相談事の解決よりも理念重視で、多数会派の平均よりも明らかに高いパフォーマンスを発揮してもらえると期待できる場合には『完全無所属』を謳うたかば候補に

票を投じるのがよいのではないでしょうか。