愛の国 | ○●ガネーシャの栖〜ヨガとバンスリと〜●○

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お絵描きはちょっと休憩中。
ヨガにぞっこんな毎日。
バンスリを吹いたりして時間を過ごしています。


哲学分野は別ブロクに引っ越しします。
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予期せず現れた誕生日プレゼント。
突然手元に来た「愛の国」


数日前に、ふと気になってネットで中山可穂さんを検索しました。 数年ぶりに。2月に新作が出版されていました。

私にとって最も好きな作家の1人。
多感な時期に何度も読み返した作家。

新作が出なくなって何年も経ち、もう執筆活動をやめてしまったのではないかと諦めかけていました。
最後に出版された長編は2006年間。 中編集はその後もでていますが、それでも2009年まででパタンとストップ。

もともと執筆スピードがとても遅い作家。

まるで自分の身を削るように。磨かれた骨をさらに削り続けるように書かれたであろう繊細な文章。 
あらゆる芸術の分野に精通し、巧みな言葉の表現と展開力でで読者の心の弱い部分に深く刺さる。


ファンは、小説の文章を読みながら、身を削りながらそれを書いている不器用で切ない才能を持った筆者自身に恋をさせられているのではないかと思います。

長い間出版されない新作を待ちながら、書けずに苦しむ作家の姿を想像して心配していた、もう書けないのでは?と思っていたファンは私以外にも多いはず。


新作「愛の国」は、中山可穂のデビュー作であり代表作である「猫背の王子」からの3部作の完結編。

「猫背の王子」1993年
「天使の骨」1995年

なんと、前作から20年近く経っていたのですね。 続きを期待しながらも、もう無いだろう…と思っていました。

事実、本人もスランプに苦しみ「小説は二度と書けない」と思っていたそう。


今年2月に出版された新作「愛の国」は、今までの2作とはかなり違った書き方をされて驚かされていましたが、筆者の分身と言われる主人公ミチルの魅力は変わらずに一層引き立ち、時間の経過と共に落ち着き成長した、しかし変わらない不器用さ、心の闇の深さ。
この作品でもミチルが可哀想過ぎて終始涙か止まらない。

魅力的な作品を描く作家は沢山いますが、ここまで主人公に恋をし、感情移入させられ、泣かされる作家は中山可穂さんだけです。

一言づつ大切に、一晩で一気に読み切りました。


沢山の悲しみに満ちた作品です。

ラストも綺麗に描かれていますが、腑に落ちない感が残りました。あれも、これも、終わったようで終われない、希望があるはずなのに見捨てられたような部分が多々有ります。
(是非、番外編が欲しい)

しかし、作品全体を通して、また書くことが出来た作者の喜びが感じれたような。 悲しいのにわずかな暖かさが流れていました。



一気に読み終わってから作者のインタビュー記事を読んだのですが、今はどんどん長編小説を書きたいと思われているそう。

スランプの作者の中に現れた分身ミチル、彼女を犠牲にし、乗り越える事でスランプを乗り越えたのでしょうか。


次回作を、何年でも何十年でも待ちたい。
そう思わせられました。