パズル 23 | chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

2021年1月。嵐さんの休業を機に、妄想小説を書き始めました。
主役は智くんで、メンバーも誰かしら登場します。ラブ系は苦手なので書けませんが、興味のある方はお立ち寄りください。

 

 

 

翌日、待ち合わせの時間に喫茶店に向かっていると、

少し後ろから歩いてきていた先輩が近寄って来た。

 

「智、気を付けろ。あれは刑事だ」

 

「え?」

 

私服なのではっきりとは分からないけど、小柄な男性に混じって屈強な男性がいる。

 

「なんで刑事が?」

 

「嫌な予感がしたけど付いてきて良かったよ」

 

 

先輩が何処かへ連絡する。

 

「ああ俺だけど、○○商事で最近何かなかったか?」

 

そう言えば知人が新聞記者をやっていると前に聞いた事がある。

 

「先輩?」

 

心配そうに声をかける俺に

 

「なかなかはっきりは教えてくれなかったがどうやら横領らしい」

 

「横領?翔が?」

 

「わからない。とにかく聞いてみるか。一緒にいくから心配するな」

 

 

二人で喫茶店へ向かうと店の前にいた男性が近寄って来た。

 

「榊と申しますが、大野のお兄さんは?」

 

「私です」

 

「お連れ様はここでお待ちください」

 

「そうはいかない。そっちも一人ではないですよね。

 それにこちらは刑事さんでしょう」

 

「わかりました。それでは中でお話します」

 

榊さんと刑事が一人付いてくる。

4人で店の奥に座る。他に客はいない。わざと入れていないのかもしれない。

 

座って直ぐに先輩が聞いてくれる。

 

「少々ものものしいですけど、何があったんですか?」

 

榊さんが刑事と顔を見合わせている。

 

「お兄さんは何も知らないんですか?」

 

「何がですか?」

 

ここで刑事が口を挟む。

 

「失礼ですが少し調べさせてもらいました。ご両親が既に亡くなって今は兄弟5人

 バラバラに暮らしているようですね」

 

「そうですけど……」

 

「最近、弟さんから何か預かりませんでしたか?」

 

「もう半年以上連絡も取れないんです。会えないのに何を預かるんですか?」

 

「直接ではなくても荷物を送って来たとか、どこかのロッカーか金庫の鍵を送って来たとか…」

 

「どういう事ですか?」

 

さすがに言おうとしている事が少しわかってきて怖くなった。

 

 

先輩の顔を見たら黙って頷いた。

「はっきり聞くぞ」

声には出さないけどそう言っているのがわかる。

俺も黙って頷いた。俺からは怖くて聞けない。

 

「もういい加減はっきり言ってくれませんか?こいつの弟が何をしたんですか?」

 

「横領です。会社の金を使い込んだんです」

 

「金額は?」

 

「まだ調査の最中です」

 

「翔は……捕まったんですか?」

 

漸く声が出た。心臓がバクバクして手も震えている。

 

「身柄は確保しましたが、体調を崩して現在は入院中です。

 それで話も聞けないし、お金も発見されていないのでお兄さんなら

 ご存知なのではないかと思いまして榊さんに協力をお願いしました」

 

「捕まったのはいつなんですか?」

 

「一昨日です。そして昨日、お兄さんから連絡があった。

 余りにもタイミングが良すぎるんですけどね。これは偶然ですか?」

 

 

俺が匿っていたと思っているのかもしれない。翔の為にもちゃんと話さないといけない。

 

「今年の春以降、殆ど連絡が取れない状況でした。新入社員で忙しいのだろうと

 思っていたので特に連絡はしませんでした。

 それでも余りにも連絡が取れないので携帯には連絡しました。

 何度か既読になりましたけど返事はありませんでした」

 

「携帯に連絡したんですか?」

 

「そうですけど……」

 

「これですか?お兄さんからの連絡はありませんけど…」

 

刑事が携帯を取り出したけど、俺の知っている携帯はこれではない。

 

「これではありません。俺が知っている翔の携帯ではありません」

 

「本当ですか?」

 

 

 

横から先輩が口を挟んだ。

 

「刑事さん、これ以上彼を疑うのでしたら弁護士を付けさせてもらいます」

 

「わかりました。とりあえず今日はこの辺で失礼します」

 

漸く刑事達が引き上げて行った。

 

 

 

気を張っていたせいか、刑事たちが帰った後はソファーに倒れ込んでしまった。

 

「大丈夫か?」

 

先輩が冷たいタオルで冷やして、お水も飲ませてくれる。

 

俺はなにがなんだかわからなくて、涙が止まらなくなっていた。