続・付き人奮闘記 100 | chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

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2021年1月。嵐さんの休業を機に、妄想小説を書き始めました。
主役は智くんで、メンバーも誰かしら登場します。ラブ系は苦手なので書けませんが、興味のある方はお立ち寄りください。

 

 

 

翼の泣き声に嫌な予感がする。

 

最近ずっと元気がないのは聞かされていた。

相葉くんの話だとお母さんの具合が良くないらしい。

田舎で一人暮らしをしているお母さんの所へ時々帰っていると聞いていた。

できるなら東京へ呼びたいと考えていたみたいだけどお母さんが納得しないらしい。

 

翼の声が途切れたと思ったら相葉くんの声がした。

 

「もしもし、大ちゃん。今大丈夫?」

 

「うん」

 

「実は翼のお母さんが亡くなったんだ」

 

「……」

 

「それで翼はこれから実家に戻るんだけど、

 出来れば大ちゃんに傍にいて欲しいんだけどそっちはどう?

 俺と代わる事は出来る」

 

「葬儀の日程は決まったの?」

 

「ううん。これから。翼が向こうに帰ってからになる。

 他に余り身寄りもいないらしくて、今は近所の人が見てくれているらしい」

 

「そうか……」

 

「大ちゃん、出来れば葬儀の前に来られない?翼と一緒に田舎へ帰れない?

 翼だけじゃないよ。和馬さんのお母さんでもあるんだよ」

 

最後の言葉が迷っていた俺の心を揺り動かした。

 

一旦、電話を切る。

 

まずは大橋さんにレコーディングの予定を聞く。

レコーディングには付き添いたい。

 

「そっちの予定に合わせるよ」

 

もう既に大橋さんも隼人達も事情は知っているようだ。

 

「レコーディングは予定通りお願いします。これ以上、延ばす訳には行きません」

 

「わかった。でもレコーディングも1日では終わらないよ。

 少しくらい君がいなくても大丈夫だろう」

 

「そうはいかないんです。今回は最初から最後まで立ちあいたいんです」

 

 

散々延びたレコーディングだ。これ以上延ばす事は出来ない。

 

 

潤が近寄って来た。いつの間にか相葉くん以外の3人が揃っていた。

 

「智、とりあえず翼と田舎へ帰って来い。葬儀の日程が決まってからこっちの日程を決める」

 

「でも……」

 

「翼はずっとお前に相談したくて我慢してたんだよ。大事な時くらい一緒にいてやれよ。

 和馬さんの為にも……」

 

「大野さん、そうして下さい。俺達は待てます。

 大野さん、以前俺の祖母が亡くなった時に一緒に田舎へ行ってくれましたよね。

 あれがどれだけ心強かったか。お願いします。今は翼さんの傍にいてあげて下さい」

 

隼人の言葉に他の二人も頷く。

 

「ごめんな。また日程が狂っちゃうな」

 

「大丈夫だよ。やれることは俺達でやっておく」

 

潤や翔くんが言ってくれる。

 

「ほら、もたもたしていないで早くしろ」

 

ニノが俺の車で送ってくれるようだ。

そして、相葉くんの車で戻ってくるらしい。

 

「一人で大丈夫だよ」

 

「ダメ。そんな気持ちのまま運転なんてさせられない」

 

ニノの言葉に甘えて荷物を持って車に乗る。

 

隼人達が心配そうに見守っている。

3人には本当に申し訳ないと思いながら、翼の元へ向かう。

 

 

車の中でニノが話す。

 

「翼はずっと迷っていたんだよ。お母さんが東京へ来るのを拒んでいたから、

 だけど一人にさせておくのも心配で、一時は東京を引き払って実家から仕事に通う

 事も考えていた」

 

「え?そんなこと聞いてないよ」

 

「智には内緒にしてと言われていたから。だけど一方で相談したいと思っていたのも本当だ。

 お前にしか相談出来なかったんだよ」

 

「……」

 

「最近は殆ど3人に付きっ切りだっただろう。それに翼が結婚してからは家

 にも行かなくなった。それが寂しかったんじゃないのかな。

 お前達は普通のタレントとマネージャーの関係じゃなかったからな。

 翼にとっては本当に兄貴なんだよ、お前が。

 和馬さんの事も尊敬しているだろうけど、顔も知らない人より

 ずっとずっと兄貴だったんだよ」

 

ニノが涙声になっている。

 

「人は何ていうかわからないけど、俺はそう言う関係も素敵だと思うよ。

 和馬さんもきっと智が傍にいれば安心してくれると思う」

 

「ニノ……」

 

「今日から数日間はマネージャーは忘れろ。翼の兄貴代わりとして付いていてやれ」

 

「ありがとう……」

 

涙でぐちゃぐちゃの中でそれだけやっと言えた。

 

 

「ほら、もう着くぞ。そんな顔で翼に会う気か」

 

 

急いで涙を拭く。

そうだな。翼の話もじっくり聞いてあげよう。

 

実は奥さんの由夏ちゃんが身重で実家に戻っている。

結婚して10年目にしてやっとできた子供。

そんな不安もあるのだと思う。

 

おめでたとお母さんの病気が重なってしまった。

全てを相談できる相手は俺しかいない。

 

久しぶりに翼のマンションに来た。

 

ニノが連絡してあったのか、マンションのエントランスの所で二人が待っていた。

 

 

「翼」

 

「ゴメンね。忙しい時に」

 

既に泣き声だ。早く部屋に戻った方が良いだろう。

 

翼の肩を抱くようにして部屋に戻る。

昔は仕事の後などによくこうやって抱えながら帰った事もある。

翼も苦労してきたからな。結婚して落ち着いてきた。

念願の子供も出来て幸せ絶頂の時に、まさかのお母さんの病気。

身重の奥さんには辛い話は出来ないだろうから、一人で抱え込んでいたのだろう。

 

相葉くんがそれに気が付いて盛んに俺とマネージャーを代わろうと言って来たけど、

俺は翼の担当は相葉くんだからと譲らなかった。

 

こんな状態になっているなんて知らなかった。

 

翼、またボロボロにさせちゃったな。ゴメンな。

 

一緒にお母さんにお別れをして、和馬にも報告して来ような。