続・付き人奮闘記 96 | chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

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2021年1月。嵐さんの休業を機に、妄想小説を書き始めました。
主役は智くんで、メンバーも誰かしら登場します。ラブ系は苦手なので書けませんが、興味のある方はお立ち寄りください。

 

 

 

翼の話を少ししてから漸く本題に入る。

 

俺はお風呂に入っていた時に思いついたことがあった。

それを話してみる。

 

「ねえ、3人で合宿をやってみない?」

 

樹の表情が一瞬明るくなったような気がした。

さすがに歌手。合宿の意味をわかっている。

 

「昔は新しくユニットを組む前とかに合宿をやったりしたんだよ。

 わずか数日間でも一緒に生活し、レッスンをすれば絆が強くなると思うんだ。

 今でもオーディションでは合宿審査とかあるだろう。あれと基本は同じ」

 

「合宿か……」

 

「この3人は元々親しかったからそう言う事を考えなかったけど、

 そう言う経験も貴重なんじゃないかと思って」

 

「でも、そんな時間あるんですか?」

 

「レコード制作はひとまず延期にして貰った」

 

「え?」

 

「直接、大橋さんに電話して許可を貰った。

 さっきの電話の喧嘩はそれも理由の一つ。でも、潤も歌手だから俺の気持ちはわかる筈。

 延期にはしたけど絶対にデビューはさせるからね。

 その為にも合宿をやってみない?」

 

「合宿って具体的に何をやるの?」

 

「今回はユニットを組む為の合宿だからね。課題曲と自由曲の最低でも2曲以上を

 合宿中に3人で歌えるようになって欲しい。

 課題曲は俺が選ぶ。自由曲は3人で歌いたい曲を選んで欲しい」

 

俺の話が終わると真っ先に樹が話した。

 

「僕は賛成です。思えば今まで3人できちんと歌っていなかったから、

 それもお互い不安の一つだったんじゃないかと思うんです。

 話し合いも大事ですけど、実際に行動してみるのも必要だと思います」

 

「うん。いいね。面白そう」

 

「オイ隼人、遊びじゃないんだからな。わかってるか?」

 

「わかってるよ」

 

なんだか隼人が言うと軽く聞こえるから心配だ。

 

 

そんな中で一人だけ冷静なのが風磨。

冷静なのは悪くはないけど、時々慎重になりすぎる。

 

「何処でやるんですか?それと詳しい日程がわからないと仕事もあるので…」

 

「うん。それはちゃんと考えているから大丈夫。

 場所も都内の少し田舎の方だからそんなに遠くはない」

 

「都内ですか。すみません、水を差すような事を言って」

 

「ううん。仕事に影響したらそれこそ大変だからね」

 

「風磨、全然わかってない。そんな仕事に影響するような日程を

 大野さんが考える訳ないだろう。マネージャーだよ」

 

その隼人の言葉を無視するように風磨が言う。

 

 

「だったら今日はもう用事はないですね。合宿で解決するなら話す必要はないですよね」

 

珍しく風磨がイライラしている。

 

「風磨どうしたんだよ。お前らしくもない」

 

「俺らしいって何だよ。わかりもしないのに勝手な事を言うなよ」

 

「風磨」

 

「だからこそここに来たんじゃないの。大野さんに思っている事を全部話しちゃえば良いよ。

 合宿も本当は反対なんでしょう」

 

樹の言葉に隼人が何か言いかけてやめた。

 

「でも、もう決まった事でしょう」

 

「そんな事はないよ。俺は一人でも反対者がいればやらない」

 

「だけど場所も日程も決まってるんですよね。レコード制作まで延期にして

 今からキャンセルなんて出来るんですか?」

 

「俺はね何をやる時もそうだけど、万全の準備はする。

 だけどキャンセルになっても良いようにそれは相手の了解も得ている。

 どっちに転んでも良いような用意をする。それが俺のやり方だよ」

 

「だけど風磨、反対の理由はなに?」

 

樹が落ち着いた声で聞く。

 

でも、なかなか話さない。

それもそうだろう。二人が乗り気になっているのに反対だなんて言えないよね。

今回も樹が言ったから認めたような形になった。

 

「風磨、何でも言って大丈夫だよ。元々ここへ行こうと言ったのはお前だよ。

 話すために来たんでしょう」

 

樹の言葉でなんとか話し出す。

でも、いつもより声に勢いがない。

風磨自身、迷っているのがよくわかる。 

 

「ユニットのデビューがどんどん延びていくようで怖いんです。

 このままデビュー出来ないんじゃないかと思うと不安です」

 

合宿なんてしていたらもっとデビューが延びる。

年齢的にも若くはないし、その不安はよくわかる。

 

でも、風磨の口からそう言う言葉が出てくるとは少し意外だった。

歌の経験はないし、一人でも十分に仕事が出来る。

最初の頃はユニットの結成も隼人の為と言う気持ちが大きかった気がする。

やる気になってくれたのは良い傾向だ。

 

「だけど今のままでデビューしてもうまく行かないと俺は思うよ。

 年齢的に焦るのは俺達3人同じだよ。だけど中途半端な気持ちでユニットを組んでも

 うまくは行かない。それは俺が一番よくわかってる」

 

樹がそう言って一息ついて再び話し出した。

 

「僕はユニットの経験は一度だけではないんです」

 

他の二人が驚いて樹を見るけど、実は俺は知っていた。

 

多分、最後の二人で組んだのが一番長く続いたのだと思うけど、

その前に可なりグループは組んでいるし、そもそもデビューは前の事務所ではない。

これも二人は知らないだろう。

 

だから前の事務所では同期だけど、本当はデビューはもっと早い。

彼は可なり色々な経験をしている。

 

だからもしこの3人でデビューしたらリーダーになって欲しいと思っている。