妄想小説 パズル 1 | chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

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2021年1月。嵐さんの休業を機に、妄想小説を書き始めました。
主役は智くんで、メンバーも誰かしら登場します。ラブ系は苦手なので書けませんが、興味のある方はお立ち寄りください。

 

 

 

火葬場

 

「人の一生なんてあっけないね」

 

父の遺影を持った翔が呟く。

 

 

何を呑気な事を言っているのだと俺は思っていた。

俺はそんな事よりこれからの生活の事で頭がいっぱいだった。

 

 

俺達は男ばかりの5人兄弟。

 

俺が長男で22歳。この春大学を卒業して就職したばかり。

次男が21歳・大学4年の翔。ここまでは年齢が近いけどその下が少し離れる。

三男が中3の雅紀、四男が中1の和也、末っ子が小6の潤。

 

俺と潤とで10歳違う。

 

母親は潤を生んで間もなく亡くなり、それからは父が男手一つで育ててきてくれた。

その父も亡くなった。

 

 

葬儀も全てが終わって親戚が集まってこれからの事が話し合われる。

既に20歳を過ぎている俺と翔は問題ない。俺は就職しているし翔も内定が決まっている。

 

だけどまだ社会人1年目の俺に下の弟3人を育てる財力はない。

 

 

「下の3人は私達が手分けして引き取りましょう」

 

「そうだな。その方が智たちも暮らしやすいだろう」

 

「そうですね。よろしくお願いします」

 

 

「兄貴、何言ってるの?兄弟がバラバラになっても良いの?」

 

翔が真っ赤になって怒る。

 

「それならお前に3人を育てられるのか。同情だけでは生活できないんだよ」

 

下の二人が俺を睨みつけるように見る。

 

 

みんな現実をわかっていない。

翔が来年から就職したとしても、二人だけの稼ぎでは3人の学費さえ出せない。

 

 

苦労して一緒に暮らすより親戚の人達に育てて貰った方が良い暮らしが出来るだろう。

いずれも子供はいなかったり既に成人している人達ばかり。

それなりに裕福な家庭だし、3人が行っても邪魔にされることはないだろう。

 

 

「3人とも、おじさん達の家に行った方が良い暮らしをさせてもらえるぞ」

 

「そうよ。部屋も個室を用意しているからね。学校も私立に編入しても良いし……」

 

 

「お兄ちゃん、一緒に住めないの?今までみたいにみんなで一緒に住みたい」

 

カズが涙を貯めながら俺を見てくる。

 

真っすぐなカズの目線に一瞬ひるみそうになる。

 

「カズもわかるだろう。お父さんが亡くなったんだよ。俺達子供だけでは生活は出来ないんだよ」

 

「子供だけじゃないよ。成人が二人いるじゃん」

 

翔が横からまた口を出す。

 

 

「だから言ってるだろう。お前に育てられるのか?」

 

「だけど生活保護とか貰えるんじゃないかな。一度、社会福祉に行って相談してみようよ」

 

「そういうのは本当に身寄りのない人が利用するものだよ。

 俺達にはこんなに親戚がいるんだ。それもみんな親切に言ってくれている」

 

「そうだよ。私達に任せてくれれば良いんだよ」

 

「いつまで別々にくらすの?」

 

末っ子の潤が心細そうに聞く。

 

「それはわからない。そのうちお前達も大学生とかなれば一人暮らしとかするように

 なるかもしれないし、それに別々に暮らしていたって会う事は出来るよ。

 軽い気持ちで新しい生活を楽しめば良いよ」

 

 

俺の言葉に翔が呆れたように俺を見る。

他の3人の弟の軽蔑したような目が俺に突き刺さる。

 

下3人は仕方ないけど、翔は考えが甘いんだよ。

俺の事を責めるより現実を考えろ。

 

兄弟の情だけでは生活は出来ないんだよ。