続・付き人奮闘記 89 | chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

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2021年1月。嵐さんの休業を機に、妄想小説を書き始めました。
主役は智くんで、メンバーも誰かしら登場します。ラブ系は苦手なので書けませんが、興味のある方はお立ち寄りください。

 

 

 

意外と適当になりそうで実は人間関係を築くには大事な名前の呼び方。

 

今まで翼、隼人、圭吾はみんな下の名前で呼んできた。

 

翼の場合は和馬の弟という意識が俺の中であったからで、隼人の場合は元々「隼人」として活動していたから。そして圭吾は親父の慎吾と区別する為と言うのが一応理由としてあった。

 

だけど今日だけでこれだけ話すようになったのだし、本人が望んでいるなら名前で呼ぼう。

ただ単に菊池くんから風磨になり、田中くんから樹になっただけの事だけどなんとなく距離が

急激に縮まった気がするのだから不思議だ。

 

 

そしてこの3人で初めて歌って貰う。

樹が前に所属していたユニットで出した曲。

 

アカペラではあったけど樹は勿論、二人も歌えていた。

 

 

最近の子はカラオケなどで歌いなれているから、そこそこ歌えてしまう。

だから歌がほぼ未経験の二人でもそれなりに歌う事は出来る。

 

でも、だからと言ってプロとして曲を出せるかと言ったら、それはまた別の話だ。

 

 

でも、歌って貰って良かったと思った。

この1回でそれぞれの長所や欠点が少し見えてきた。

 

歌に関してはこれでも経験者だし、良し悪しは判断できるつもりだ。

思った通り高音が隼人、低音が樹、そして真ん中が風磨というパートになりそうだ。

 

でも、それはこれから打ち合わせをして決めることだ。

 

 

「うん。良い感じだったよ」

 

今日は素直な感想だけで良い。

 

 

「樹、3人で歌ってみてどうだった?二人とはまた違うでしょう」

 

「全然違いますね。音楽の幅が広がる気がします」

 

「3人となるとそれぞれのパートもあるし、それでいて綺麗に揃わないといけない。

 ユニットと言うのは考えている以上に難しいよ。

 だけどうまく行った時はソロでは味わえない感触が得られる」

 

俺が言い切ったものだから、隼人が不思議そうに聞いてくる。

 

 

「大野さん、ユニット経験ってあるんですか?」

 

俺がなかなか話さないから、

 

「隼人やめよう。そんなことどっちでも良いじゃん」

 

風磨が気を利かせてくれる。

 

でも隼人は俺の様子に気が付いたのか、

 

「もしかして和馬さんと……?」

 

そこまで言われたら仕方ないな。

 

「隼人の言う通りだよ。期間限定だったけど和馬とユニットの経験がある。

1枚はCDとして発売されたけど、もう1枚は……幻になった」

 

その言葉で3人とも把握したようだ。

 

「余計な事を聞いてすみません」

 

隼人が言って二人も頭を下げてくれる。

 

「ううん。今となっては良い思い出になったよ」

 

 

幻になった曲も音源としてはテープに残っている。

これは翼にも聞かせていない。

 

 

和馬の事は一生ついてまわる。

最初は翼とだけの秘密にしておくつもりだったけど、あの短い現役時代の経験が必要になる事があるのなら、現役時代の事も和馬の事も話す覚悟は出来ている。

 

特にこれから新しい歌手を育てて行く。

その過程で俺の経験が役立つならこんなに嬉しい事はない。

 

 

 

夜遅くまで3人で話して、疲れてそのまま思い思いに寝てしまった。

 

隼人の仕事復帰が今日だったとは思えないほど濃い1日だった。

 

 

朝早くに一旦家に帰って車を取ってくる。

これから当分は3人の送迎になりそうなので、二人の家を教えてもらう。

 

今のところ3人の中でレギュラーを持っているのは風磨のバラエティーと、隼人と樹のラジオだけだ。

 

歌手としてユニットを組む前に、3人で仕事をさせたいなぁ。

出来ればレギュラーが良い。MC上手が二人もいるのだから何か出来そうな気がする。

 

二人を家に送ってから事務所へ向かう。

新しい事務所はビルの中にある。

部屋を二つ借りて一つはスタッフが常駐している部屋、もう一つはお客さんが来た時や打ち合わせ用になっている。

 

事務所に行くと既に4人がいた。

 

「昨日は途中で帰ってゴメンね。何時ごろ終わったの?」

 

「あれから1時間もいなかったよね。そっちはどう?ゆっくり話せた?」

 

「お陰様で隼人の家に行ったから時間も気にせずに色々と話して来たよ」

 

「だったら良かった。3人でやって行かれそう」

 

「具体的な話が出ないと何とも言えないけど、本人達はやる気でいるから大丈夫だと思う。

 それと歌でデビューする前に3人で番組を持てないかなと思ったんだけど……」

 

「うん。それは俺も考えている。せっかくMCの上手いのが二人もいるのだから、

 これを生かさない手はないからね。実は今一つ声をかけているんだけど、

 そこがOKしてくれれば大きい。生放送だからね」

 

「え?生?朝のバラエティー系?」

 

「まあ、そんなところ」

 

「だけど隼人が復帰したばかりで大丈夫かな?」

 

あの事件のせいで隼人はバラエティー番組を降板している。

 

 

無理だろうな。いきなりバラエティーの復帰なんて。

二人だけならOKが出るかもしれないけど、隼人は断られるだろう。

 

もっと小さい番組で良い。

とりあえず3人の船出だから、3人だけで作って行くような番組の方が良い。

 

隼人が昔お世話になった深夜番組でも良いと思う。

 

 

3人には焦らずに一歩ずつ歩いて行って欲しい。