続・付き人奮闘記 86 | chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

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2021年1月。嵐さんの休業を機に、妄想小説を書き始めました。
主役は智くんで、メンバーも誰かしら登場します。ラブ系は苦手なので書けませんが、興味のある方はお立ち寄りください。

 

 

 

食事が来たのでとりあえずそれから食べる。

食べながら少し話したいのでお酒は後回し。お茶を入れる。

 

でも4人だけで乾杯はしたいと言う事で、ワインで軽く乾杯をする。

 

「3人が無事に歌手デビュー出来る事を祈って、乾杯!」

 

[[「乾杯]]]

 

俺の合図に4人がグラスを合わせる。

 

うん。なんとなく仲間と言う気がしてきた。

 

食べながら色々な話をする。

 

「田中君とは翼のドラマの時や、他にも数回付いているよね。覚えてる?」

 

「勿論です。翼さんとまるで兄弟のように仲良く話しているのが羨ましかったです。

 でも僕も大野さんには感謝しているんです。

 ある作品の時にたまたま大野さんが付いてくれて、その時にあるシーンでなかなか

 OKが出なくて少しイライラしていた時に、凄く良いタイミングで大野さんが休憩を頼んで

 くれたんです。それで楽屋に戻って怒られるとばかり思っていたら、

 お茶を出してくれて芝居とは関係のない話をしてくれて凄く気持ちが落ち着いたんです。

 お陰でその後の撮影はうまく行きました」

 

「気持ちが一杯一杯の時に怒っても効果はないんだよ。

 そういう時は何も言わないか、全く違う話をする方が良いんだよ」

 

 

「その代わり怒ると怖い。突き放された感じになる」

 

「俺は怒りたくて怒っている訳ではないけど、タレントも立派な社会人だからね。

 社会に背くような事をすれば怒るし、それは何処の世界でも同じだよ。

 でも俺は怒るよりも話し合いで解決する方法を一番大事にしているけどね」

 

 

 

「でも本気で怒ってくれる相手も貴重だよ」

 

菊池がポツンと言って、その言葉に田中が続く。

 

「僕もそう思う。僕はマネージャーとうまく行かなかったんです。

 ユニットの相手が辞めたのもそれが原因で……。」

 

「マネージャーとうまく行かなかったというのは具体的にどういうこと?」

 

「う~ん、何て言ったら良いのかな。強いて言えば必要な事しかやってくれない。

 勿論それで良いのだろうけど、何か相談しても俺には関係ないと言われて、

 こんな風に雑談をしたこともなかったです」

 

「マネージャーはマネージャーとしての仕事をしていれば良いと言うのが殆どだからね。

 僕は大野さんとは接点がなかったですけど、一時大野さんのマネージャーとしてのやり方が

 事務所内で問題になった事がありましたよね」

 

俺がタレントと親しくし過ぎると言われていた時だ。

タレントに寄り添うマネージャーをモットーにしていたから反発もされた。

 

「その時に個人的に親しくさせて貰っている翔さん……櫻井さんに聞いた事があるんです。

 大野さんってどういう人なんですか?って……。

 当時の僕にはタレントに寄り添うマネージャーと言うのが異質に感じたんです。

 そう言う人に会った事がなかったから……すみません」

 

「それで翔くんは何て言ったの?」

 

「俺が話す事ではないって…。実際に本人と接してみないとわからないよ。

 話してみたいならきっかけは作ってあげるよと言われたのですが、

 その時は断りました。隼人の事件が起きてから後悔しました。

 会っておけば良かったって……」

 

 

菊池の言葉に頷いていた田中が隼人の方を向いて、

 

「だからね隼人、普通は問題を起こしたらそれで終わりなんだよ。

 マネージャーが上に報告して処分が決定する。

 こんなにタレントの為に頑張ってくれる人はいない。

 俺がこのプロジェクトに入りたいと思ったのもそれが理由だよ」

 

田中が真剣な顔で隼人に言ってくれる。

 

 

「事件後、連絡をくれなくなったのもそのせい?俺はもう終わりだと思ったから?」

 

思いがけない言葉が隼人から飛び出した。

まさか、もう酔った?

 

「隼人」

 

「今日は顔合わせなんだから思っている事を言って良いんでしょう」

 

「そうだね。良いよ。でもそれは隼人だけじゃないよ。

 二人も思ってることを言って良いからね」

 

 

とりあえず隼人が気にしている事を吐かせた方が良いだろう。

それから田中の反論を聞けば良いけど、果たして反論するかな。

既に田中の表情が固い。

 

 

隼人にはわかっていない。不祥事を起こした人と連絡を取るのがどれだけ勇気がいる事か。

忘れた訳でも見放した訳でもない。だけど自分も現役でやっている身だと上からの圧力に

どうする事も出来なくなる。

 

菊池にそれが出来たのは恐らく翔くんと親しかったからだろう。

俺は田中と同じ立場になった事があるから、それがよくわかる。

 

「樹は僕とは時々連絡を取ってたよ。隼人の様子を気にしてた」

 

「風磨くんに連絡するなら俺にもして欲しかった」

 

田中は下を向いたまま、何も言えなくなっている。

 

 

「隼人、菊池くん意外に連絡が来た人はいるの?勿論、翼も覗いて」

 

「最初はたくさんあったよ。段々と減って行ったけど…」

 

「その最初のLINEやメールって貰って嬉しかった?」

 

「ううん。見るのも嫌だった。だけど心配してくれたんだろうなとは思った。

 何も連絡がないと寂しいんだよ。特に仲の良かった相手からは……」

 

「親しいからこそ出来ないと言う事もある。上からの圧力もあるんだよ。

 俺も和馬の時に連絡はするな、電話が来ても出るなとまで言われた。

 後で後悔したけどその時は仕方ないんだよ。隼人も田中くんの気持ちを少しは

 理解してやれよ。第一、お前が怒るのは筋違いだろう」

 

「でも、だったらどうして風磨くんは連絡できたの?」

 

「それは翔くんを通してでしょう?」

 

俺が聞いたら菊池が頷いた。

 

「俺にも上から圧力がかかったから翔さんに頼んだ。

 大野さんの言う通りだよ。樹が心配しない訳ないだろう」

 

半分、怒りが籠った声だ。