続・付き人奮闘記 79 | chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

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2021年1月。嵐さんの休業を機に、妄想小説を書き始めました。
主役は智くんで、メンバーも誰かしら登場します。ラブ系は苦手なので書けませんが、興味のある方はお立ち寄りください。

 

 

 

「隼人?髭をそるなら鏡がある方が良いぞ」

 

興奮しないように努めて優しく話しかける。

 

「大野さん……」

 

隼人の手からカミソリが落ちた。

その隼人を抱きしめながらリビングへ戻る。

 

 

「疲れた?少し寝てる?夜には潤がくるって言ってた」

 

「大丈夫」

 

「じゃあ紅茶でも飲もうか。お菓子を買ってきたから」

 

隼人の様子に注意しながら紅茶とお菓子を出す。

 

 

さっきのは何だったのだろう。

発作的なものだったのだろうか。もし隼人に何かあったら…と思うとゾッとする。

もう大事な人を失いたくはない。

 

 

夜になって潤が来た。

 

隼人に独立に至った経緯を話してくれる。

 

「元々事務所の中で独立して作ったプロジェクトだから、居心地は余り良くはなかった。

 仕事も事務所から回して貰うのもあったけど俺達で取って来たものも多いんだ。

 5人共この世界は長いから人脈も可なりあるし、その方が借りを作らないで済むからね。

 隼人だけでなくて事務所とは結構揉めて来てるんだよ」

 

「え?」

 

「翼と智が身内みたいな関係だとか言われたり、翼もドタキャン癖が直らなかったから

 結構文句を言われてきたし、そういうのも事務所にいる限り我慢しなければいけない。

 だから俺としては早く独立したかったというのが本音だ」

 

 

そう言えば何かあれば矢面に立ってきたのは潤だった。

プロジェクトの代表になっているから仕方ないとは言っても、俺のマネージャーとしてのやり方に非難が出た時も潤は「智のやりたいようにやれ」と言ってくれた。

だから俺は俺のやり方でやって来られた。それには凄く感謝している。

 

でもそういう苦情を一手に受け止めていた潤は大変だったと思う。

もっと5人で話し合えば良かったのだろうけどそれぞれに忙しくて、そんな余裕もなかった。

 

早く独立したかったと言うのは本音だろうな。

もっと早く独立も出来たのだろうけど事務所にいればバックボーンも大きい。

それなりのメリットもある。タレントの事を考えると出来なかったというのもあるだろう。

 

 

「はっきり言って今回の隼人の事件が全く関係してないとは言えないし、

 隼人には今後こんな事のないように十分に反省して欲しいとも思っている。

 だけどそれだけが理由ではない。それはわかって欲しい」

 

黙って聞いていた隼人が少し遠慮がちに話す。

 

「僕がそのプロジェクトに入っても良いんですか?

 翼さんや圭吾にも迷惑をかけるかもしれない」

 

「そう思うのなら早く復帰できるように頑張る事じゃないのか。

 隼人が今やるべき事は復帰に向けての準備だよ。

 移籍と同時に謹慎も解ける。勿論、直ぐに仕事は出来ないだろうけど、

 これからはボイトレとか芝居を観に行くとか、そういう勉強が必要になるんじゃないかな」

 

「ボイトレは良いけどいきなり芝居を観に行くというのは反感を買うだろう。

 だったらボランティアとかやってみるのも良いな」

 

「とにかく少しずつ外に出てみる事だ。ファンの子達が隼人だと気が付いて

 どんな反応をするか、そこから学ぶこともある。

 世間の意見と言うのは大事だからね。今まで直接触れて来なかっただろうけど、

 直接言葉をかけられたら、また隼人の気持ちも変わってくるよ」

 

 

そうして一通り話して夜遅く潤は帰って行った。

 

俺は帰り際に昼間のカミソリの事を話した。

 

「はっきりとは断言できないけど……」

 

「恐らくそうだろうな。今日話していても責任を感じている気持ちは強かった。

 そう簡単に割り切れないだろうし、十分に反省はして欲しいけど思いつめないように

 させないとな。智、当分相葉くんと交代で隼人についていて。

 智一人に任せたらお前が潰れる」

 

「俺は大丈夫だから俺にやらせて。復帰するまでしっかりと関わりたいんだ」

 

「わかった。だけど絶対に無理はするなよ」

 

 

 

だけどその深夜、

 

「大野さん、大野さん」

 

隼人が俺をゆさぶっている。それで目を開けると自分の身体がびっしょりと汗をかいていた。

 

「うなされていたので起こしたんですけど大丈夫ですか?」

 

「ゴメン……隼人」

 

隼人が水を持ってきてくれる。

 

 

「可なり汗をかいているので着替えてください。俺の余り着てないスエットがあるので 

 それで良いですか?」

 

「タオルで拭けば大丈夫だよ」

 

「ダメです。風邪をひきます。今、大野さんに倒れられたらみんなが困るんです」

 

 

すっかり立場が逆転した。隼人の言う通りにタオルで身体を拭いて着替える。

 

 

それにしても、変な夢をみたなぁ。

 

「可なりうなされていましたけど大丈夫ですか?」

 

「うん……。何て言っていたかわかる?」

 

そう聞くと急に隼人が口をつぐんだ。

何か言ったんだな。夢を見た記憶はあるのだけど内容まではわからない。

 

「隼人、知ってるなら教えてくれない?」

 

「……和馬、ダメだ……死ぬなって……」

 

そう言いながら隼人の目から涙が零れている。

 

 

そうか、昼間の隼人のカミソリの事があったから、そんな夢を見てしまったのかな。

 

「ゴメンな、驚いたよな。もう大丈夫だから寝て良いよ」

 

すると隼人が号泣した。

 

「ごめんなさい、僕のせいです。僕……風呂場でリストカットしようとしたから……」

 

 

やっぱりそうだったんだ。自分から話してくれて良かった。

 

 

隼人を抱きしめながら、

 

「隼人、暫くは辛いかもしれないけど頑張ろう。俺が付いているから」

 

 

隼人がしっかりと頷いてくれた。