潤の気持ちがはっきりしたので、じいちゃんも交えて4人で話すことにした。
夕飯の後、掘り炬燵に座って話をする。
早く本当の掘り炬燵に入りたいなぁ。ここで炬燵を囲んでみんなで話したい。
そうすればカズの病気も良くなるような気がしていた。
「カズはここから高校に通いたいんだよね」
「うん。学校もじいちゃんに探して貰っている」
「既に目途はついてる。今度カズを連れて学校見学に行こうと思っている」
「じゃあ、そっちはじいちゃんに頼むね。カズの事はこれでOK。
それと俺だけど俺も今の大学を続けることにしたから。
色々と考えたけど好きで入った大学だから辞めるのも勿体ないし、
ここから通えるからね」
さて、問題は潤だ。潤は自分の口から話すと言っていた。
「俺が話し終わるまでカズもじいちゃんも口出ししないで欲しいんだ。良い?」
「ああ、わかった。潤の人生だからな」
じいちゃんには察しが付いているのかもしれない。
「俺は今の大学は辞める。まだリモート授業しか受けていないから辞めるには調度良い」
「兄ちゃん、なんで?」
「カズ、話が終わるまで口出しは禁止」
「だけど……」
「心配するな。カズのせいじゃないよ。俺はやりたい事が出来たんだ」
「やりたい事?」
「スクールカウンセラー。学校カウンセラーとも言うけど、今は学校でも色々な問題が
起きるだろう。いじめや先生の体罰や、それに苦しめられて学校へ来られない子もいる。
そんな子供達の力になりたいと思ったんだ」
「でも、どうして急に……」
やっぱりそう思うよな。俺も聞いた時は驚いた。
少し前の潤からは想像も付かないような選択だからだ。
潤は誰かの為にというタイプではなくて、どちらかと言うと自我が強い。
3人兄弟の真ん中という環境も影響していたのかもしれない。
子供の時から俺とカズに挟まれて、下手をすると忘れられがちな所があった。
だから自己主張が強くなったのかもしれない。
でも今回のカズの事があって潤は変わった。
特にカズが入院している時は俺と二人で生活していたけど、随分俺の支えになってくれた。
潤がいたからカズをここへ連れてくる冒険も出来たのだと思う。
「確かに急な事かもしれないけど、勉強してみたくなったんだ。
そんな理由じゃダメかな、じいちゃん?」
「嫌、潤が決めたのなら良いんじゃないか。今の大学には未練はないのか?」
「それは大丈夫。兄貴みたいに目標があった訳じゃないんだ。
何をやりたいのかもわからなくて、ただ何となく入っただけだから。
大学の4年間で決めれば良いと、気楽な事を考えていた」
「まあ、たいていの人間はそうだろう。それでここから通うのか?」
「じいちゃんさえ許可してくれれば。あ、あとカズもだね」
じいちゃんは、あっさりと承知してくれた。何処か喜んでいるようだった。
「カズは?」
「本当に僕のせいじゃないの?」
さっきは俺と言っていたのに、また僕に戻っている。
きっと不安なのだろう。自分のせいで俺達の人生が狂ったと思っているのかもしれない。
「カズのせいなんかじゃないよ。これは俺が自分で決めたことだよ」
潤がカズの顔を見て、はっきりと言い切った。
「うん。わかった」
カズも笑顔で頷いた。