地獄の学校【社会人編】 45 | chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

2021年1月。嵐さんの休業を機に、妄想小説を書き始めました。
主役は智くんで、メンバーも誰かしら登場します。ラブ系は苦手なので書けませんが、興味のある方はお立ち寄りください。

 

 

 

俺は昨日の時点で結論は出ていた。

 

岡田が言った言葉だ。

 

「好き以外に理由がいるのか」

 

それが俺の答え。

 

勿論、好きだけでやれる事ではないけど、好きでなければやれない。

それにこのメンバーに出会ってしまったから…。

この8人の誰が欠けても出来ない。

 

だから気持ちがぐらついていそうな達也くんとカメくんと話そうと思ったのだ。

ヒロの方から連絡が来るとは思わなかったけど、思いがけなく達也くんと話しが出来て

後はカメくんだけ。この事は雅也さんと松兄は知っている。

 

 

お昼は真也さんの部屋で4人で食べる。

真也さんと直也さんが料理を振舞ってくれた。

 

「おいしい。お二人とも料理は得意なんですか?」

 

「まあ一応俺たちは達也を育てているからね。料理できないと困るから」

 

「すみません。余計な事を聞いて…」

 

「何言ってんの。もう俺達の間で隠し事はなしでしょう。

 ヒロくんに雅兄さんが殆ど喋っているからね」

 

 

直也さんの言葉にカメくんが不思議そうな顔で言う。

 

「でも雅兄さんって結構慎重派だよね。ここのトップなんだから当然だけど、

 それなのにそんなに知っている相手でもなかったのに、どうしてそこまで話したんだろう」

 

「兄さん昔言ってたよ。いずれ和也と達也は躓く時がくる。

 このままやっていても良いのかと悩む時がくる。

 その時に支えになってくれる人が必要だ。その為にも相棒選びは慎重にしたいって」

 

「それで和也にまず智くんが付いた。まあ少々危なっかしいコンビではあったけど、

 年数を重ねるうちに安定してきた。そんな時に弟のヒロくんが来た。

 達也と同じ年と言うのもあって一種の賭けに出たのかもしれないなぁ。

 ただ施設暮らしだったし身体が弱いと言うのは気になっただろうけど、

 あそこまで気を許した大きな理由は智くんの弟だからだよ」

 

「え?」

 

「智くんの事はここの1期生として入ってきた時からずっと見てきた。

 それで性格はわかっていたし和也との関係もうまく行っていたから、

 今度はヒロくんと達也のペアを考えたのだと思う。

 でも実際は達也から行動を起こしているけどね」

 

そこが一つ俺には謎な事があった。

 

「あれはどうやって仲良くなったんですか?ヒロは殆ど部屋から出ませんよね。

 用事があればユウヤくんがやってくれる。何処で会ったんですか?」

 

「あの時はユウヤくんが熱を出して寝込んだんだよな。

  特別室から心配そうな表情で慌てて出てくるヒロくんが防犯カメラに映って、

 その時に達也が近くにいたみたいで駆け付けたんだ。

 あれから時々談話室でコーヒー飲んだりしてたな」

 

「なんかイヤらしい。盗み見している親父みたい」

 

カメくんがそう言って笑う。

 

「男同士だから問題ないんだよ」

 

「ああ、女の子を入れないのはそれか」

 

 

真也さんとカメくんがワイワイやっている横で直也さんが俺に近寄ってきた。

 

「ヒロくんは優しい子だね。あの時、俺も駆け付けたんだけど車椅子姿で、

 ユウヤくんを助けてと必死に訴えていた。あの顔が俺に死んだらダメだと言った

 君の顔と似ていてハッとしたよ」

 

「直也さん。ヒロの事をよろしくお願いします。

 達也さんはヒロを信じてくれています。勿論、そんな二人を俺も信じたんですけど…」

 

「離れていると心配になる?達也とヒロくんはお互いがお互いを助け合いながら

 支え合いながらやっていくペアだと思うんだ。

 勿論、そう言うペアは理想的なんだけどね、二人の場合はお互いに抱えている物が

 あるからね。そこはちゃんと俺達で見守って行くから大丈夫だよ」

 

「達也は自由奔放に見えて優しい。そしてヒロくんはああ見えて芯は強い。

 心配はいらないよ」

 

「それよりも兄貴同士は大丈夫なの?」

 

「一番の問題は俺達?」

 

「俺達じゃなくてお前だよ。智くんは既に昨日のうちに結論を出している。

 だから朝から達也とヒロくんとも話してくれたんだよ」

 

「智くんの結論って…」

 

「やめるんだったらここにはいないだろう」

 

 

 

「だけど昨日はまだ迷ってたよね」

 

「途中まではね。解散する頃には決めていた」

 

「何かきっかけがあったの?」

 

「岡田の言葉」

 

「岡田?何言ったっけ?」

 

周りから笑い声が起こる。

 

 

「人の顔は忘れないのに、言った事は忘れるんだな」

 

「真兄さん煩い。それで岡田が何て言ったの?」

 

「好き以外に理由なんて必要なのか」

 

「それだけ?」

 

「うん」

 

「心に響く言葉って言うのは案外シンプルなんだよ」

 

 

真也さんの言葉に、そうなんだろうなと納得していた。

 

人にしてみれば「そんな言葉が?」と思う事が人の心を動かしたり、

逆に傷つける事もある。

岡田自身、多分もう言った事さえ忘れているかもしれない。

 

 

でも俺はあの時のあの一言で、結局、生涯をここに埋める事になった。