続・付き人奮闘記 49 | chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

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2021年1月。嵐さんの休業を機に、妄想小説を書き始めました。
主役は智くんで、メンバーも誰かしら登場します。ラブ系は苦手なので書けませんが、興味のある方はお立ち寄りください。

 

 

 

暫くして翼がやってきた。

 

「おはようございま~す」

 

仕事が順調のせいか、最近すっかり明るくなった。

 

「翼、紹介するよ」

 

そう言うと圭吾から挨拶に行った。

 

「町田圭吾です。15歳です。よろしくお願いします」

 

「藤田翼です。よろしく」

 

自分より20歳近く年下の子だけど、下に見る訳でもなくきちんと挨拶してくれた。

 

 

「はい、これ。俺が作ったブランドなんだ。良かったら着てね」

 

そう言ってパーカーを渡した。

 

「良いんですか?僕これ注文しようとしたら売り切れだったんですよ」

 

「良いんだよ。今日から仲間なんだから」

 

 

翼はも何の思惑も狙いもない。ただ後輩だから、仲間だから渡しているだけだ。

 

一時、翼が隼人に洋服をあげるのが事務所内で問題になった。

「物で後輩を繋ぎとめようとしている」と言われた。

 

だけど翼は全く気にしなかった。

「俺は洋服が好きだから、俺の好きな洋服を俺の好きな人にも着て欲しいから、

 ただそれだけだよ。でももし何か言われるのが嫌なら遠慮なくそう言って」

 

隼人にも、今回圭吾にも同じことを言った。

でも二人とも嬉しそうに貰った。特に翼のファンだという圭吾は大喜びだ。

圭吾はさっそくその場で着た。

 

圭吾が今まで着ていたジャケットを脱ぐと、「つばさ」ブランドのチェックのシャツを着ていた。

 

「あ、これは自分で買いました」

 

「と言う事はシャツは売れ残ってたんだ」

 

 

ニノがからかう。こういう時は本気ではない。面白がっている時。

それは翼もわかっている。

 

「パーカーの方が人気なんですよ。年齢問わずに着れますからね」

 

そう言いながら圭吾の恰好を見て、

 

「うん、良いね。似合ってるよ。だけどさっきのジャケットもきちんとした感じで

 凄く良かったよ。少し改まった食事会などはパーカーよりはこの方が良いかもしれないね」

 

「はい」

 

 

さすがだ。自分の服だけを勧めるのではなくて、ちゃんと圭吾が選んできた服も褒めている。

圭吾はもう憧れの翼から洋服は貰えるし、自分のセンスも褒めて貰えるしで舞い上がっている。

そろそろ出かけた方が良いな。

 

「翼、これから隼人を迎えに行くけどどうする?」

 

「隼人、この後は仕事は?」

 

「今日は終わり」

 

「じゃあ付いて行く」

 

 

翼は自分の車がある。

駐車場で翼の車を見て、ここでも「カッコイイ」と歓声を上げる。

もう、こうなると普通のファンの子と変わらない。

まあ確かに翼の車はカッコイイ。翼は何でも一つの物を長く使う方だから、

買うときはそれ相当に時間もお金もかける。

 

それでも車の場合は30過ぎてから仕事にも乗って行く事が多くなって乗る頻度が随分増えたので、以前よりは買い替える頻度は多くなるだろう。

 

「圭吾はまだこっちだよ」

 

隼人でもたまに乗るくらい。仕事の時は人は乗せないと言う事になっている。

 

 

3人で隼人を迎えに行く。

 

「隼人、終わった?」

 

しかし圭吾のパーカーを見た途端に不機嫌になった。

 

 

「あのパーカー翼さんが上げたんですか?」

 

「そうだけど……」

 

「人にやたらとあげるなと事務所で言われたじゃないですか?」

 

「お前にも上げただろう」

 

「だったら返しますよ」

 

その場で着てたパーカーを脱いで、

「明日、洗って返します」と言った。

 

「だからお前も返せ」

 

圭吾に迫る。こんな言い方をする隼人を初めてみた。

 

嫌がる圭吾のパーカーを無理に脱がそうとして、中に来ているシャツに気が付いた。

 

「お前、これまで」

 

「これは自分で買ったんです」

 

それでも疑わしそうに見ているから、

 

「本当だよ、隼人。そのシャツは最初から着ていたよ。

 それより何をそんなにカッカしてるんだよ。

 後輩が出来るのを楽しみにしていたじゃないか」

 

 

「まさか町田慎吾さんの息子だとは思わなかった」

 

「町田さんの息子だと問題あるのか?」

 

「ありますよ。翼さんにとっては大問題です」

 

「やめろ、隼人。何を聞いたか知らないけど憶測で言う問題じゃない」

 

「憶測じゃないですよ。見ていた人がいたそうです」

 

「そのそうですというのが既に憶測。お前はその時代に生きてないだろう」

 

 

「何の事ですか?」

 

圭吾が不安そうに聞いてくる。

 

翼はこのやりとりから和馬の事だろうと察しは付いているだろうけど、

何の事だかはわからない。

 

 

「町田さんと兄ちゃんの間に何かあったの?」

 

「町田さんが和馬さんを嵌めたんだ」

 

「嵌めた?」

 

「傷害事件の犯人を和馬さんに仕立て上げたんだよ」

 

「証拠は?」

 

「当時、和馬さんが町田に嵌められたって言ったらしい」

 

「それも憶測…」

 

「だけど……」

 

 

 

「あれ、圭吾は?」

 

翼が圭吾がいないのに気が付いた。話しに夢中になっていて気が付かなかった。

携帯で呼び出すけど出ない。

 

「翼、悪いけど隼人を送って行ってくれ。俺は圭吾を探す」

 

「俺も探すよ」

 

「良いよ。俺はタクシーで帰るから」

 

仕方がないのでタクシーを呼んで乗り込むまで見届けて、俺も圭吾を探しに行った。

 

 

翼は既に先に行っていた。しかし、今日会ったばかりでどこを探すつもりだろう。

 

そう言えば隼人の言葉に翼は顔色一つ変えなかったなぁ。