小さな恋のものがたり バレンタインデー 後編 | chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

2021年1月。嵐さんの休業を機に、妄想小説を書き始めました。
主役は智くんで、メンバーも誰かしら登場します。ラブ系は苦手なので書けませんが、興味のある方はお立ち寄りください。

 

 

 

2月14日 バレンタインデー。

 

とうとうこの日が来た。

楽しみでもあり、怖くもある。

 

でも俺はもう決めていた。

中途半端な関係に戻るよりは、ここで別れようと…。

 

これが最後だ。カズの為に料理を作るのも、カズを待つのも……。

 

朝から仕込みに行ってカズの好きな料理を作る。

トモくんが1品だけ「これは僕から」と言って作ってくれた。

 

そして潤は、

 

「兄貴、ケーキは冷蔵庫に入っているから。食事が終わって話も終わった

 一番最後に出して。それまでは絶対に見ないでね」

 

何やら意味深な事を言っていた。

 

 

そして約束の時間にカズが来た。

 

ゆっくり食べながら話せるように、少しおしゃれな鍋にした。

鍋も種類はいろいろある。でも、なんとなく特別な時は出せないイメージがある。

だから特別なおもてなし用の少しおしゃれな鍋を数年前に俺が作った。

 

それと潤と合作でカズの好きなハンバーグと、トモくんが作ってくれた素敵な一品と、

テーブルの上がいっぱいになった。

 

「おいしそう」

 

「さあ、食べよう」

 

二人で食べながら昔話から、翔さんやマー君の話まで出る。

 

「あの頃は楽しかったね」

 

色々な事があったけど思い出すのは楽しい思い出だけだ。

 

 

なべも殆ど食べ終わった。

 

そろそろ大事な話をしないといけない。

 

「智、何でも話して良いよ。話したい事があったんでしょう」

 

「え?なんで…」

 

「最近、LINEをしていても変だったし、電話でも元気がなかった。

 ゴメンね。僕のせいだよね。僕が来たいって言ったからだよね」

 

「カズ…」

 

「わかってた。智が悩んでいる事はずっとわかっていた。

 だけど決心が付かなかった」

 

カズが下を向いて必死に何かに耐えようとしている。

手も震えているのがわかる。

 

「ゴメンね……好きなんだよ、今でも…。

 本当は何年も会っていないから、久しぶりに会ったら変わるかと思ってた。

 だけど全然思いは変わらなくて……あの頃よりもっともっと好きで……」

 

「カズ」

 

「俺は生涯韓国から出ない。ずっと今の家族と暮らしていく。

 だから智も日本で今の家族と仲良く暮らして欲しい。

 そうすれば誰にも知られない……そう言うつもりだった……ゴメンね」

 

とうとう涙が零れだしてきた。

それを拭う事もしないで続けた。

 

「だけど最近の智を想像したら苦しくて……辛くて……。

 智にそんな苦しい思いはさせたくない。好きだから……大好きだから、

 いつまでも笑顔でいて欲しいから……だから、だから……

 智、これで終わりにしよう……。もう手紙もLINEもしない……。これでお別れしよう」

 

 

そう言ってカズが号泣した。

 

 

そんなカズを見ていて激しく揺れ動いている自分に驚く。

俺が決意したことをカズが言ってくれたんだ。これで良い筈だ。

中途半端な関係に区切りを付けて、それぞれの家族と幸せに暮らせばそれで良い筈だ。

 

でも……でも……、改めてカズを見て、懸命に自分を押さえつけようとしているカズを見て、

俺は大事な事に気が付いた。

 

好きとか、嫌いとか、愛だとか恋だとか……そんな事よりも今一番大事なのは、

目の前にいる大切なカズから離れるなんて出来ないんだと改めて気が付いた。

 

カズの隣に座る。

少し身体を固くするのがわかる。

 

「肩書きなんていらない。友達とか恋人とか、そんなのどうでも良い。

 俺はカズと一生会えなくなるなんて……そんなのは嫌だよ」

 

「智……良いの?」

 

「うん」

 

「今まで通りいてくれるの?」

 

「うん。もっともっと会う機会を作ろう」

 

「本当に?もっと来て良いの?」

 

「うん。俺も韓国に行っても良いかな」

 

「良いよ。案内してあげる」

 

 

そうだよ。これで良いんだよ。

 

 

「カズ、難しく考えるのはやめよう。

 俺達は会いたい時に会える特別な相手でいられれば良いんだよ」

 

「会いたい時に会える特別な相手……。うん、そうだね」

 

 

 

「そうだ、潤がケーキを作ってくれたんだ。食べようか?」

 

「うん」

 

絶対に最後まで開けるなと言っていたケーキ。

 

箱を空けると何種類かのショートケーキが入っていた。

 

「うわ~、おいしそう」

 

「カードが入っている」

 

カードを広げると潤の字で、

 

 

【このケーキのように色々な形の付き合いがあっても良いと思うよ】

 

 

俺が悩んでいる事を知っていたんだ。

 

 

 

なにが正解かなんてわからないけど、俺達は俺達の付き合い方で良いのだと思う。

 

 

「おいしい」と言いながら嬉しそうに食べているカズの口についたクリームを取るふりをして、

軽く唇を重ねた。

 

ビックリしてやがて頬を真っ赤に染めるカズが可愛い。

 

 

「俺達はここまでね」

 

「うん……うれしい……」

 

 

 

少し甘酸っぱい気持ちが残ったバレンタインの夜になった。

 

 

 

 

 

 

おわり

 

 

 

 

 

「小さな恋のものがたり」バレンタイン編。

いかがでしたか?

今回も進展があったのか、ないのか……。

この二人はずっとこんな感じで行きそうです。

ありがとうございました。

皆さんも今宵は素敵な人と素敵な夜を……。