続・付き人奮闘記 39 | chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

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2021年1月。嵐さんの休業を機に、妄想小説を書き始めました。
主役は智くんで、メンバーも誰かしら登場します。ラブ系は苦手なので書けませんが、興味のある方はお立ち寄りください。

 

 

 

隼人がもがきながらも頑張っている。

 

なにせ名指しでハッパをかけられた。

もっと実力を付けろと言われたようなものだ。

 

「後半の話は隼人の出来次第でどう変わるかわからない」とまで言っていた。

 

脚本家によって早くに書き終わるタイプもいれば、放送と並行して書いている人もいる。

この人はどっちも出来る人だけど、今回は隼人に賭けたのだろう。

 

 

翼が心配して寄ってきた。

 

「余計な事を言ったから怒ったんじゃないの?」

 

「そんなんじゃないよ。翼は自分の事だけ心配していれば良いから」

 

 

 

翼は役者が本職ではない。

色々な仕事はしているけど、一応歌手という本職がある。

 

でも隼人はまだ定まってはいない。

バラエティーなどには出ているけどそれをメインに出来る実力はない。

そうなると、やはり芝居で売り出して行きたい。

 

オーディションも随分受けて、随分落ちた。

でもそれも隼人の力になっている筈だ。

 

 

やはりたまにはきつい事を言ってくれる人も必要だな。

隼人の演技が段々と変わってきた。

他の生徒達もそれに付いてきている。

 

うん。最初の頃ののんびりした雰囲気がなくなってきている。

和気あいあいも良いのだけど、それだけでは仲良しグループで終わってしまう。

 

休憩中も芝居の話をしている。

ベテランになってくると休みの時は仕事の話はしたくないと、休憩中も別の話をする人が多いし、それで良いとは思うけど、まだ若いうちはこのくらいの熱さは必要だ。

 

 

「青春だねぇ」

 

休憩中も芝居の話を熱心にしている生徒たちを見て翼が言う。

 

「なに、おっさんみたいなこと言ってるんだよ」

 

「あの中では立派なおっさん」

 

まあ性格もあるのだろうけど、翼はああいう雰囲気は余り好きではない。

 

それに自分の本職は歌手という誇りがあるから、翼はこれで良いのだろう。

 

 

「だけどさ、ああいうのが悪いとは言わないけど、自分の芝居の形と言うのは

 あると思うんだよね。色々な人と話すことでそれが崩れなければ良いなとは思う」

 

「まだ今の隼人の年齢ではそれも勉強だよ。色々な人の意見を聞いて、

 自分には合っているか、やっぱり違うか、それを見極めるのもまだまだこれから」

 

「まあ、そうだね。俺、偉そうだね」

 

そう言って笑っていたけど、偉そうどころかビックリしたよ。

翼からそんな言葉が出てくるとは思わなかった。

 

 

どの辺から変わったのだろう。

やっぱりあの大ベテランの人との、翼が自ら脚本の書き直しを頼んでの親子役。

その後に代役ではあったけど、海外ロケを経験した作品。

 

翼も一歩一歩階段を登って行っての今回の主役。

 

視聴率は低迷しているらしいけど、動画の再生数は良いらしい。

今はドラマの見方も多種多様化している。

テレビが全てではなくなってきている。

 

それでも展開を少し変えてからの後半は視聴率も少し上がったし、

翼は勿論、隼人を始めとした生徒役の子達の熱演が光った。

 

 

そして最終話の撮影の最中に監督から

 

「隼人はこの後は大きなの入ってる?」

 

「いえ、レギュラーの仕事くらいです」

 

「じゃあ少し先になるけど、久しぶりに6カ月やることになってね。詳しい事はまた今度」

 

「ありがとうございます」

 

「それと翼は休養だって」

 

「最近忙しかったので、ちょっと人間ドックを受けさせようかと思いまして」

 

「そう。もし間に合ったら翼も少し頼みたいけど、後半は歌の仕事だよね。

 空いていたら少し出て貰うかも。隼人は良い役者になるよ」

 

「ありがとうございます」

 

 

監督に褒めて貰えた。

監督に気に入られれば、割と定期的にその監督の作品は呼んで貰えると聞いた。

 

良かった。隼人の役者としての道が漸く開けて行く。

 

そして翼も……。

「少しでも良いから」と言って貰えると言う事は、少しでも存在感があると認められた事だろう。

 

 

翼の方はこの仕事が終わったら休養と言うのは前から決まっていた事だけど、

人間ドックを受けさせることは最近になって決めた。

最近、顔色も余り良くないし、明らかに体調が悪いのがわかる日もある。

単なる疲れなら良いけど、例え何か病気が見つかってもしっかり治療すれば良い。

 

隼人は勿論だけど、翼も漸く役者としての道が安定してきた。

 

それにしても半年間とは凄いなぁ。

最近は3ヵ月が多いから、隼人にとっても貴重な体験になるな。

 

 

そして無事にオールアップを迎えた。

 

最後は生徒役の子は殆どみんな泣いている。

ドラマでこういうシーンはよく見るけど、芝居ではなくて本当に泣いているんだ。

隼人はクールな役柄なので懸命に抑えていたけど、カットがかかった瞬間、

隣の子と抱き合って号泣していた。

 

 

でも、俺はずっと翼の様子が気になっていた。

撮影の途中から明らかに具合が悪そうで、それでも懸命に最後までやりきった。

 

周りの人達と握手をしているけど、暫くして俺の方を見たので急いで駆け寄った。

 

 

「翼、病院へ行こう」

 

「うん」

 

 

素直に頷いた。よほど悪かったのだろう。

最後までよく頑張ったね。

 

暫くお休みして、また戻ってこようね。