不幸な犬猫生まれないよう 過剰繁殖止める獣医師育成ヘ 大阪に専門施設 | トピックス

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2026年3月23日 産経新聞

 

過剰繁殖に起因する多頭飼育崩壊などが社会問題となる中、不妊去勢手術を行い繁殖管理を徹底する獣医師を育成するための専門施設が大阪府八尾市に開設され、活動費をクラウドファンディングで募っている。目指すのは不幸な犬猫が生まれることのない、「保護活動のない未来」だ。 

 

猫の不妊去勢手術に当たるスペイ・ベッツ・ジャパンの獣医師(橋本恵莉子さん提供)(株式会社 産経デジタル)

 

開設された「ABCセンター」は、犬猫の繁殖管理を専門とする獣医師でつくる一般社団法人「Spay Vets Japan(スペイ・ベッツ・ジャパン、SVJ)」が運営。術創を1センチ程度に抑えて動物への負担を最小限に抑えた手術を1日に30頭、安全に執刀できる獣医師の育成を目指したトレーニングを実施している。昨年は11回のトレーニングに延べ26人が参加した。 

 

短時間での手術が必要なのは、過剰繁殖の現場では高速高回転の不妊去勢手術を行える獣医師がいなければ対応しきれないという現実があるからだ。一般の動物病院での術式とは異なり、十分な経験がなければ難しい。SVJ代表の獣医師、橋本恵莉子さん(43)は「約1千頭の手術経験が必要」だとする。 

 

昨年11月にはSVJのトレーナーが大阪公立大の非常勤講師(指導教員)に登録、獣医学研究科の学生を対象とした臨床実習も始まった。同大の嶋田照雅教授によると、民間施設で獣医学部の学生が臨床実習に取り組むのは全国で初めてといい、「現在はシミュレーターがメインとなっている大学の臨床実習では、生きた動物に触れる機会が極めて少ない。実習のための動物ではなく『患者』が対象なので、とても貴重な機会になっている」と手応えを語る。

 

嶋田教授自身、病院勤務だった時代に新人獣医師を受け入れるたび、動物の執刀はおろか、触診の経験もない獣医師がいる現実に危機感を感じていたという。昨秋から取り組んできた35人は今年6月で終了、その後は次の学生たちの実習が始まる予定だ。 

 

SVJは保護活動に取り組むボランティアなどと連携しており、トレーニングで執刀する犬猫の保護主からは手術代を受け取っていない。トレーニングを受ける獣医師は参加費を支払うが、1頭の手術には5千円程度の費用がかかり、運営面の課題は山積している。活動をより広く知ってもらおうと今月26日まで、800万円を目標金額としたクラウドファンディングを実施中だ。5人の獣医師が約1年間毎月トレーニングを行う費用(猫約1千頭分)に相当するという。 

 

橋本さんは「『殺処分ゼロ』の背景にはボランティアによる保護活動があり、課題の根本的解決には過剰繁殖を止める徹底した繁殖管理が必要。より多くの方に課題を知ってもらいたい」と話している。