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2025年9月6日 長崎新聞

 

「佐世保市で野良猫のための病院を開く獣医師の方がいます」。長崎新聞の情報窓口「ナガサキポスト」にこんな情報が寄せられた。獣医師は、市動物愛護センターなどで勤務していた田中康裕さん(47)。現場で抱いた問題意識から「少しでも不幸な猫を減らしたい」と一念発起し、市を退職。野良猫の不妊手術を優先する動物病院の開業準備を進めている。

 

田中さんが準備を進める「佐世保のらねこ病院」=佐世保市高砂町

 同市出身。犬、猫、鳥と、幼い頃からいつも身の回りに動物がいた。動物好きの両親の勧めもあって獣医師になり、長崎県内の動物病院に務めた後、市に入った。

 入庁し、市保健所で見たのは、動物たちの置かれた過酷な環境。市民らから持ち込まれた猫のほとんどがその日のうちに殺処分された。初めて見たその時の猫の表情は、今も頭を離れない。業務外には同僚とともに、持ち込まれた猫の譲渡環境づくりに取り組んだ。

 

野良猫のための病院の開業に向け、ボランティア(手前)と打ち合わせする田中さん=佐世保市高砂町

 2021年に市動物愛護センターが発足。譲渡の仕組みができ、処分数は減少した。一方、動物愛護法の改正に伴い、市民らから野良猫などを引き取る上での市の条件が厳しくなり、「地域で猫が放置され、増え続けている場所もある」(田中さん)という。

 

 猫は繁殖力が強く、野良猫を増やさないためには不妊化の継続が必要だ。ボランティア団体などが進めているが、病気などのリスクがあるとして動物病院から不妊手術の受け入れを断られたり、数カ月先しか予約が取れないと言われることも少なくない。

 増えた猫は“フン害”などを起こし、地域で嫌われることに。中には、虐待を受けたり、野生生物に食べられることもある。野良猫の寿命は一般的に、飼い猫より10年短いとされる。

 「行政ができることには限りがある」。徐々に思いを募らせた田中さんは昨年末に決意を固め、今年6月に市を退職。「佐世保のらねこ病院」として9月中旬の開院を目指し、高砂町のビルを借りて準備中。持ち込まれる手術の受け入れはできる限り対応し、費用も比較的安価にする予定。

 ボランティア団体「長崎ねこの会」の県北担当の代表理事は、野良猫の不妊手術のため定期的に市外に通う。「理解があり、愛情を持って関わってくれる病院は多くない。現場が分かる田中さんの開業は助かるし、安心感がある」と語る。

 田中さんは「ボランティアや行政と協力し、過酷な環境で生きる猫を減らすため、地域ごとの不妊化を進めたい」とし、病院の設備にかかる費用の一部をクラウドファンディング(CF)で募っている。9月7日まで。寄付は3千円から。