嫌われがちな動物たちにも愛の手を、たとえばこのアイアイのように 今こそ革命のとき | トピックス

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2025年6月30日 NATIONAL GEOGRAPHIC

まずは動物たちの奇妙にも素晴らしい特性や行動をたたえよう

 世界の動物保護資金の大半は、数種の動物に使われている。大抵は、サイやゾウ、ゴリラといった大型動物だ。「残りの動物たちは、そのおこぼれにあずかるだけです」と、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーで、米国の猛禽(もうきん)類の保護団体「ペレグリン基金」のアフリカ事業部長であるダーシー・オガダは言う。 
 
日本では有名でも実は世界では嫌われ者!? ぶさかわ!な生後16日目のアイアイの赤ちゃん。米国コロラド州デンバー動物園(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
 
 
 おこぼれをめぐって争うのは、いわゆる「Dリスト」の面々。仲間外れの動物たちと言ってもよい。それがハゲワシであり、ハダカデバネズミであり、テングザルだ。見た目は良くなく、カラフルでもない。そして食糞(ふん)の習性をもつハダカデバネズミのように、不快感を与える行動をとることも多い。
 
  Dリストの動物たちは、ライオンやパンダ、ペンギンやキリンといった「Aリスト」に属する人気者の動物たちの対極に位置する。では、こうしたイメージの問題を解決し、仲間外れの動物たちに対する高い関心と、彼らにふさわしい保護資金を集めるには、どうすればよいだろうか?
 
  環境社会学の研究者でナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもあるギャビー・サラザーは、一つの鍵は、彼らの良い面を伝えることだと話す。まずは仲間外れの動物たちがもたらしているメリットを強調するところから始めてはどうか。
 
  さあ、革命を起こそう。今こそ、仲間外れの動物たちを仲間に迎え入れるときだ。とりあえずは、Dリストの動物たちの奇妙にも素晴らしい特性や行動をたたえよう。
 
■「不吉な生き物」とされてしまったアイアイとはどんな生き物?
 
  アイアイはアフリカのマダガスカル島に生息。射るような視線に長い尾、薄く不均一に生えたごわごわの毛といったアイアイの特徴は、この生後16日目の赤ちゃんにも見てとれる。夜行性の霊長類として地球上で最大だが、不気味な見た目から不吉な生き物とされ、見つかると殺されることがある。その結果、個体数が減少して危機的状況に陥った。
 
  幸い、今はイメージアップの取り組みが進んでいる。アイアイは、マダガスカルの東海岸沿いでクローブの木に被害をもたらすハモグリムシの幼虫を捕食するため、保護活動家や農家は、こうしたメリットについての認識を地域社会に広めようとしている。 
 
巨大な耳:コウモリのような大きな耳を使って、木の幹の奥深くでうごめく幼虫など、虫たちの音を拾うことができる。 
 
鋭い視線:ほかの夜行性霊長類とは異なり、アイアイの遺伝子は、広範囲の青色のスペクトルを識別できるよう適応を遂げた。そのため夕暮れ時でも、おいしそうな青い花を見つけることができる。 
 
器用な指:細い中指には独特の球関節があるため可動域が広い。この指で木の幹をたたき、音を確認しながら昆虫の通り道を探り当て、甲虫の幼虫を引っぱり出す。 
 
※ナショナル ジオグラフィック日本版7月号特集「なぜ嫌われる? 隠れた能力をもつ動物たち」より抜粋。