2025年4月21日 現代ビジネス
止まらない物価高騰、動物園がとる対策は
動物園は、デートや遊びのお出かけスポットしてだけでなく、動物の生態を学び命について考える「教育の場」としても社会に必要な存在だ。
そんな動物園は、企業努力を積み重ねながらも、周囲からのサポートの上に成り立っている。どんな努力とサポートがあるのか、ひきつづき福岡市動物園と東武動物公園の担当者に聞く。
キャベツは”ある飲食チェーン”が大量にくれる
野菜高騰のニュースの中でも大きく話題になったのがキャベツ。かつては1玉100円代だったものが、1000円を超える時期もあるなど衝撃的な値上がりを見せたが、埼玉県にある東武動物公園には大きなサポーターがいた。
「ここ十数年は、牛丼チェーンの吉野家さんから、キャベツと白菜の廃棄となる部分をいただいています。最初の頃は、すべて無料で持ってきていただいていたのですが、あまりにも申し訳なく、今はガソリン代だけお支払いしています」(動物園事業部 顧問・下康浩氏)
とはいえ、同園では年間で約50tものキャベツを消費するという。吉野家からの提供だけでは、到底足りないのではないか。
電気代をサポートする福岡の企業
福岡県の人気施設である福岡市動物園でも、野菜の配送業者から、スーパーなどに陳列する企画には合わない野菜の提供を受けている。
さらに、エネルギーの面で支えられている部分もあると、同園の企画広報担当である川島佑介氏は話す。
「再生可能エネルギーの普及をしている、リフェコ株式会社さんという福岡の企業があります。そこから、太陽光パネルを寄贈・設置していただきました。電気代の節約にもなりますので、とてもありがたいです」
この寄贈は、温度管理が必要な生き物も多い動物園にとって、よいサポートだ。さらに、再生可能エネルギーの「普及」をしている寄贈元の企業にとっても、老若男女が訪れる動物園への設置は、よい広告となる。
そして、川島氏によれば「この太陽光パネルによって、杉の木153本分ほどの二酸化炭素吸収量に相当する、年間2147kgのCO2削減になります」とのことで、地球環境にも好影響となり、こちらも「三方よし」となっている。
私たちにできることは何か?
私たちが生きていくために不可欠な、インフラの価格も高騰の一途。動物園ではたくさんの水を使うため、水道光熱費の値上がりは経営を圧迫することになる。
牛丼チェーン・吉野家からのリサイクル野菜を活用している東武動物公園では、水の利用についてもある対策が敷かれていた。
「上水と下水の間にあたる『中水』を使っています。水道から出た水を一度使ったら、それを下水に流さず園内の専用の施設に通します。そこで浄化して、再利用するんです。基本的には飲めるくらいキレイな水だと言われますが、飲み水ではなく、動物のお部屋洗ったりする水やトイレの洗浄水として利用しています」(東武動物公園・下氏)
サポートが受けられるからといって、何もせずに手をこまねいているわけではないのだ。
園としての努力や周囲からのサポートがあるといえど、落ち着く見込みない物価高騰の中にあって、私たちが動物園のためにできることはあるのだろうか。
「年間パスポート付きで1500円から加入いただける”動物サポーター”という制度があり、エサ代の支援になります。それから、特にエサを多く食べるゾウのエサ代サポートの制度もありますので、是非加入を検討してほしいです」(福岡市動物園・川島氏)
「まずは、園に来ていただきたいです。そして、エサやり体験をしてほしいです。体験用のエサを買っていただけると、動物園としてもエサ代の足しになりますし、お客様も楽しめて、お互いにいい関係になると思います」(東武動物公園・下氏)
楽しみだけではなく、教育の場としても社会に欠かせない動物園。
筆者には小さな息子がおり、動物園が好きでエサやり体験をやりたがる。今後は、子どものためだけではなく「動物園のために体験させる」という意識も持ってみようと思う。
(取材・文/Mr.tsubaking)