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2025年2月17日 読売新聞オンライン

 

日南町に週1回診療所 藤井浩平さん 48(米子市)

 人口約4000人、高齢化率が50%を超え、過疎化の進む日南町で週1回、「ふじい動物診療所」を開き、犬や猫を診察、治療する。「町とタッグを組んで、地域の活性化に貢献したい」と話す。

 

 JR生山駅近くの商店などが並ぶ一角に空き店舗を改装して、2023年9月に開設した。幅4メートルほどの小さな間口で、待合室は数人が入ればあふれるほど。診察室は手術になると年季の入った無影灯がともされ、待合室からカウンター越しに手術の様子が見られる。

 

飼い主から聞き取り診察する藤井さん(いずれも日南町で)

 

 目の周りが変色したマルチーズを連れてきた同町の松本美夏さん(65)には「アレルギーが要因でしょう。ご飯があっていない可能性があります」と説明し、処方する目薬の点眼方法を丁寧に教えた。松本さんは以前、飼っていた別の犬が死んで再び飼うのを迷ったというが、「この子を飼うことにしたのは、近くに動物診療所ができたから」と笑顔で話した。

 

空き店舗を改装した診療所

 

 米子市出身。物心がついた頃から家にシバ犬やビーグル犬がいて世話をした。高校を卒業後、しばらくフリーターになり、「自分の可能性を試したい」と、父親と同じ医師を目指したが、大学の医学部になかなか合格できなかった。

 

 相談に行った予備校の勧めもあり、「人の命も動物の命も変わらない」と考え、山口大の獣医学科へ。癒やしや喜びを与えてくれるかけがえのない動物の命に関わる仕事に就こうと決めた。山口県内の動物病院の勤務を経て13年、米子市へUターンし、「ふじい動物病院」を開業した。

 

 日南町との縁は4年前からだ。県獣医師会の会員として狂犬病予防注射のために訪れた。「車で1時間近くかけて通うのは効率が悪い。常設の診療所があれば」と思った。

 

 米子市の動物病院を続けながら、毎週金曜に日南町へ。診療時間は午前10時~午後2時の4時間で、手術を含めて14件ほどを診る。診療や手術だけでなく、受け付けや会計も全て1人で担当する。

 

 同町に通い、生活の不便さなど高齢化が進む地域の課題も少しずつ見えてきた。診療所は飼い主のいない猫の不妊去勢手術を行う県の連携病院に指定され、町が抱える野良猫問題にも対応する。

 

 プライベートでは音楽活動が趣味で、イベントでギター演奏を披露することもある。「獣医師の仕事はもちろん、音楽イベントの開催など住んで楽しい、遊びに来たくなる町づくりの手助けをしたい」

(立山光一郎)