「毛玉だらけで糞尿まみれ」の保護ネコが柔らかい表情に “寄付金”で救われる命 ネコの過剰繁殖、 | トピックス

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2025年1月20日 長野放送

 

犬や猫の「殺処分ゼロ」に取り組む長野市が、動物愛護のふるさと納税への協力を呼びかけています。寄附金で救われる命。後を絶たない過剰繁殖と向き合う活動に、理解と協力を求めています。 

長野市内で保護された雷(らい)仮名・推定10歳(長野放送)

 

【動画で見る】「毛玉だらけで糞尿まみれ」の保護ネコが柔らかい表情に “寄付金”で救われる命 ネコの過剰繁殖、多頭飼育崩壊…「殺処分ゼロ」への挑戦 長野市が動物愛護の「ふるさと納税」再開

 

■毛玉だらけで糞尿まみれ

推定10歳のオスの猫。「雷(らい)」(仮名)。耳は聞こえません。 
 
2024年11月、長野市内で保護されました。そのときの様子です。「コンビニ店の前に衰弱したネコがいる」保健所に通報がありました。長い毛がフェルト状に固まり、足も動かせない状態でした。
保護された当時の「雷」(提供:長野市動物愛護センター)(長野放送)
 
保護ボランティア・後藤久美さん: 
「毛玉だらけで糞尿まみれ、臭いもすごかったので、ガリガリに痩せていましたし、表情もないというか」 
 
保護ボランティアの後藤久美さん。1カ月前から譲渡に向けて自宅で世話をしています。
 
ながの鈴ねこの会・後藤久美さん(長野放送)
 

■少しずつ表情が柔らかく

保健所では他のネコを怖がり、威嚇し続けたと言います。

 

「雷」は毛を全て短く刈り、動物病院で治療を受けました。

 

毛を全て短く刈り、動物病院で治療を受けた「雷」(長野放送)

 

保護ボランティア・後藤久美さん: 

「(毛が伸びたら)きっとすごいゴージャスになると思います」 

 

暖かい部屋で静かに過ごす日々。体と心を少しずつ癒やしています。 

 

後藤久美さん: 

「表情も柔らかくなったし、世話にくると、『うれしい、来てくれた』って喜んでくれるようになった」

■治療費は「ふるさと納税」から

「雷」の治療費、実は「ふるさと納税」の寄付金で賄われました。 
 
2018年度、長野市は全国の自治体に先駆け動物愛護のふるさと納税をスタートさせました。4年で2億4800万円余りが集まり、老朽化した犬舎の改修や猫舎の建設にも使われました。
 
動物愛護センターの猫舎(長野市)(長野放送)

■目的は「殺処分」をなくす

今年度の予算は2200万円。その6割は「猫の繁殖制限事業」、去勢や不妊手術の助成です。 
 
移動手術車で各地に赴く、しんけん動物病院の松木信賢獣医師。保健所やボランティアと連携し、住民から相談のあった野良猫や地域でエサをやっているいわゆる「地域猫」の手術をしています。
 
移動手術車(長野放送)
 
その数は年間およそ2500匹。 
 
しんけん動物病院・松木信賢獣医師: 
「4~5歳はいってると思います。家で飼育するネコだとこんなに歯石がたまることはない」 
 
しんけん動物病院・松木信賢獣医師(長野放送)
 
この日は7匹を手術。全て飼い主のいない猫でした。手術の目的は「殺処分」をなくすことです。
 
市はボランティアの力も借りて「譲渡」に力を入れ、2018年度以降、「不要な殺処分」をゼロに抑えています。
 
長野市のイヌ・ネコの殺処分(長野放送)

■ネコの命を守る 去勢・不妊手術

取り組みのもう一つの柱が、保護される猫自体を減らす去勢・不妊手術です。 
 
しんけん動物病院・松木信賢獣医師: 
「地域におけるネコの過剰繁殖が問題になっていて、多頭飼育崩壊であったり、糞尿、環境被害の相談が非常に多かった。そこに関して(獣医師として)お手伝いしたい」 
 
移動手術車で手術をする松木獣医師(長野放送)
 
手術に要する時間はオスが15分、メスが30分ほど。20匹以上行う日もあります。 
 
松木信賢獣医師: 
「(子ネコが)野生動物に食べられたり、ご飯が食べられなくて餓死したり、大きくなっても行動範囲が広がって交通事故に遭って死んでしまったり。“かわいそうな命”というのは、過剰に生まれてしまったネコたちがやむなく処分されてしまう、蛇口を閉める作業を本格化させたい」
 

呼吸や腹の動きをみながら慎重かつ手際よく。傷口を最小限にオスは精巣、メスは子宮と卵巣を摘出します。 最後に手術が済んだ印に。 

 

しんけん動物病院・松木信賢獣医師: 

「(ネコは)耳カットをして、元の場所に戻っていく。地域の人は手術されているのがわかる」

 

手術が済んだ印に耳カット(長野放送)

■プロジェクトへの思い

成果も出始めました。2024年度のネコの収容数は12月末までに109匹。2023年度の同じ時期より33匹減り、子ネコについては半減に近くなっています。 
 
人懐っこい「ふじこ(仮名)」(推定2歳メス)。2024年11月、片目が飛び出た状態で保護されました。感染症の炎症がひどく、目を摘出しました。
 
保護された当時の「ふじこ」(長野放送)
 
右の眼球を摘出した「ふじこ」(長野放送)
 

病気の他、交通事故に遭う猫も多く、市内では2023年度、保護した数よりも多い224匹が路上で命を落としました。 

 

そこで市は去勢・不妊手術を受けるネコをさらに増やそうと2024年度から手術への助成を増やしました。これまでの一律6000円からオスは1万円。メスは1万3000円に。 

 

ネコを持ち込む住民が負担していた分がなくなり、2024年度の手術件数は200件増え1100件になる見込みです。 

 

しんけん動物病院・松木信賢獣医師: 

「(問題解決へ)舵をしっかり切られたので、ぜひ、成し遂げてもらいたい。命を守るプロジェクトを完遂させてもらいたいという強い思いでいます」

■今後の課題 理解と協力を

これまでの予算は2018年度から4年間、募った寄付金を充ててきましたが、それも2025年度で終わり。 
 
2026年度以降も取り組みを続けるため、市は中断していた「ふるさと納税」の受け付けを、年末に復活させました。 
 
長野市動物愛護センター・関口徳之課長補佐: 
「長野市は長く“殺処分ゼロ”を目指して取り組んでいます。今後もそれを維持するため協力いただければと思っています」 
 
猫舎で「ふじこ」と遊ぶ関口課長補佐(長野放送)
 
寄付金で救われる命。 
 
市は理解と協力を呼びかけています。