2024年8月14日 弁護士JPニュース
野生動物が個人宅やアニマルカフェなどでペットとして飼育・展示されている現状に対して、「ペットにしても幸せにできない動物がいる」ことを周知するため、WWFジャパン(世界自然保護基金ジャパン)と国内の動物園がタッグを組んだキャンペーン「飼育員さんだけが知ってるあのペットのウラのカオ」が行われている。
“真っ白”なシロフクロウのオス、メスには黒い模様がある(8月10日 多摩動物公園/弁護士JP編集部)
【動画】飼育員さんだけが知っているフクロウの“ウラ”のカオとは?
2022年8月よりスタートした同キャンペーンは、絶滅、密猟や密輸、動物が保有する感染症、動物福祉、外来生物の生態系への影響など5つのリスクへの理解を高め、野生動物のペット利用を見直すきっかけにするための取り組み。これまではコツメカワウソ、コモンマーモーセット、ショウガラゴ、スローロリス、フェネック、スナネコが対象となっていたが、今年5月よりフクロウ類が追加され、計7種類の動物について、ペット飼育の難しさを訴えている。(タカモトアキ)
“フクロウのウラのカオ”知るイベントに多くの参加者
日本は“世界一”のフクロウ輸入国だった!?
フクロウ人気のウラで“お金”が動く…
フクロウがなぜ日本で人気になったのだろうか? WWFジャパンの浅川さんは「日本のペット市場でさまざまな種類の野生動物が取り扱われており、消費者の多様な好みに対応しています。海外からフクロウが輸入され、日本人の好みに合っていたということだと思う」と推測する。
日本での野生個体の捕獲は禁止されている一方、禁止されていない外国で捕獲された野生の個体が日本に輸入されるケースも。そして、その生息地・捕獲地は発展途上国である場合も多い。
浅川さんは「残念ながら野生動物がビジネスになってしまっているところもあります。(輸出国に対して)日本側から言及するのは難しい側面があります」と語る。
飼いたいと求める人がいれば、市場も大きくなってしまう。「合法に輸入しているんだから(ペットにしても)いいじゃないかという考えもあります。しかし、消費国の責任はないのでしょうか? 国の生物多様性に関する戦略でも、消費国の責任は言及されていますが、ひとりひとりの自覚も必要になります」(浅川さん)
安易な「飼育」は野生動物を幸せにするか?
野生動物はその名の通り、本来、野生で暮らす生き物。一見、懐(なつ)いているように見えたとしても、最低限の生活環境におかれて“慣れた”にすぎない。飼いたい、保有したいという人間のエゴは、果たして野生動物を幸せにするのだろうか。
飼育員の高野さんは「動物園は種を保全する目的があります。動物園でフクロウを観察してもらえれば」とコメント。多摩動物公園教育普及課の大橋直哉課長は「知らないと興味を持ってもらえないところもある。動物園で野生動物について知り、生息している環境や状況に目を向ける機会にしてほしい」と呼びかけた。
多摩動物公園では、9月3日(火)まで先のイベントで使用したフクロウに関する○×クイズをフクロウ舎付近で掲示予定だ。
「かわいいからペットとして飼いたい」ではなく、「かわいいから守りたい」へ――。この機会に、野生動物との正しい距離感を考えてみてはいかがだろうか。