犬猫「殺処分ゼロ」運用、熊本県の動物愛護センターは…個室飼育で手術室やトリミング室も | トピックス

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2024年6月30日 読売新聞オンライン

 

 熊本県宇城市松橋町に完成した新しい県動物愛護センター「アニマルフレンズ熊本」が、保護した犬や猫の飼育環境を整え、譲渡を増やす活動を強化している。飼育スペースや医療体制を充実させ、捨て犬や猫を増やさない「入り口」対策にも力を入れる。ペットが増えすぎて飼えなくなる「多頭飼育崩壊」といった問題も生じる中、動物愛護の現状と課題を探った。

 

犬が暮らす飼養室前でセンターの取り組みを説明する井課長(読売新聞)

 

  【写真】県動物愛護センター「アニマルフレンズ熊本」

「きれいで快適な環境に」

 「1頭ごとに屋内と屋外の部屋を用意した。犬にとってきれいで快適な環境になっています」。センターで暮らす犬がいる飼養室の前で10日、愛護推進課の井史博課長は説明した。

 

 熊本市東区の旧センターの施設は、犬や猫の殺処分を前提とした構造だった。最大10頭ほどを一つの部屋で集団飼育し、感染症が発生する危険性も高かったという。新センターは2月に完成。獣医師3人を含む県職員6人を配置。最大で犬50頭、猫80頭ほどを個室で飼育する「個体管理」を実現した。

 

 手術室やトリミング室、100人程度が利用できる多目的スペースも備える。旧センターは別館として、譲渡に向けた犬の訓練などに活用している。

引き渡し506頭

 県内で保護・収容された犬や猫は、各地の保健所に集められる。センターには政令市の熊本市を除く10か所から移送される。元の飼い主が見つからない場合などは、面接などを経て新しい飼い主に引き渡す。2023年度に譲渡された犬と猫(熊本市除く)は計506頭に上った。

 

 県は、蒲島郁夫前知事が掲げた「殺処分ゼロ」に基づく運用を続けている。熊本地震後の16年12月以降は、人や他の動物に危害を加えたり、治癒が見込めなかったりといった場合を除いて行ってない。13年度で3491頭(同)だった殺処分数は17年度以降、猫はゼロになった。犬は昨年度は60頭まで減少した。

適正飼育を

 保護された犬や猫は15年度の3822頭(同)以降は減り、23年度は836頭(同)となったが、最大収容数を大幅に超える高止まりが続いていた。新センターでも最大収容数近くに達しており、10日時点で犬は9割にあたる45頭、猫は7割以上の58頭となっている。月1回の休日譲渡会などで新しい飼い主探しを進め、これまでに犬24頭と猫12頭が引き取られた。

 

 各地の自治体で問題となっている「多頭飼育崩壊」への対応も課題だ。八代保健所では昨年、ミニチュアダックスフント62頭を保護する事案も起きた。

 

 センターでは今年度から、飼い主のいない猫への避妊・去勢手術を無料で行う制度を始めた。多目的スペースを生かし、小学生らを対象に命の大切さを学ぶ「命の教室」も9月から開く予定だ。高本芳寿所長は「動物も人と同じ命だ。飼い主には最後まで責任を持って適正に飼ってほしい」と語った。

取材後記

 新たな県動物愛護センターは、県産木材をふんだんに使用した親しみやすい雰囲気も特徴だ。取材した日も多くの人が譲渡の相談に訪れていた。

 

 4月に就任した木村知事が掲げる「動物愛護・日本一」には、飼い主や周囲の人々の意識の向上が不可欠だ。センターでは飼育や譲渡に関する相談も受け付けている。問い合わせは同センター(0964・27・8115)へ。(山之内大空)