2024年6月11日 読売新聞オンライン
猫の多い街として知られる広島県尾道市を中心に、捨て猫や野良猫の保護活動を続ける女性たちが、NPO法人「ペットマナーおのみち」を設立した。保護に取り組んで22年。手弁当だった活動は、協力や寄付の輪が広がり、継続へめどが立った。16日、協力者へのお礼とさらなる参加者募集の意味を込め、設立記念イベントを開く。(西堂路綾子)
■一人で行き詰まり
同市土堂の商店街にある法人の譲渡型ふれあいスペースでは、予約した親子連れらが新しい飼い主を待つ猫たちと遊んでいた。第1、第3土曜に開放しており、1日には11匹の猫が走り回っていた。
保護した猫を抱き「1匹でも多く救うため仲間を増やしたい」と話す向井さん(右)と高橋さん(広島県尾道市で)
「実は犬派」という理事長の向井純子さん(69)は2002年に大型犬を飼い始め、毎日の散歩で、段ボールに入れて捨てられた子猫や、交通事故に遭い 瀕死ひんし の状態の猫を何度も見つけた。
放っておけず、事務職の仕事の傍ら、一人で休日などに飼い主探しを始めた。6、7年ほど続けて活動に行き詰まりを感じていた頃、猫の譲渡会を通じて「正真正銘の猫派」という福山市の高橋弘美さんと出会った。
「ゴミ捨て場でノミだらけの猫が見つかった時は、夜中でも尾道に飛んで来てくれた」という高橋さんと、二人三脚で猫の保護に乗り出した。餌やトイレの砂代、医療費、譲渡前に施す去勢・避妊の手術費はほぼ自前。年間約80匹、ここ10年余りで優に1000匹を超す猫を新しい飼い主に託した。
■増えた協力と寄付
16年に「ペットマナープロジェクトおのみち」と銘打って協力者を募ると、深夜でも病気の猫を診てくれる獣医師や、外猫専門で手術を引き受けてくれる獣医師が現れ、譲渡会の手伝いや活動資金を集めるフリーマーケットの企画などへの協力を申し出る人が増えてきた。
23年度は個人からの寄付が計約80万円集まり、息長く活動できるとして「猫の日」の今年2月22日、計13人でNPO法人を発足させた。
保護猫との交流のほか、動物病院などでの譲渡会、捨て猫の捕獲が活動の中心だ。月に1度は、飼い主のマナーと責任感を再認識するため、海岸の清掃活動にも力を入れる。4月には、尾道みなと祭で初の「保護猫ランド」を出展して啓発に努め、10月には毎年恒例のイベント「わんにゃんマルシェ」も開く。
向井さんは「見て見ぬふりができず、一人で続けてふがいなさを感じた時期もあった。でも、仲間が増えるとできることも増える。1匹でも多く救える命を救い、幸せな猫を増やしたい」と活動への参加を呼びかけている。
16日は「まちなか文化交流館Bank」で、午前11時から猫の写真を展示し、午後2時半からコンサート(入場無料、チケット制で定員あり)を開く。問い合わせはペットマナーおのみち(petmanner.onomichi@gmail.com)。