劣悪環境で犬飼育など動物愛護法違反 会社役員猶予判決 松本 | トピックス

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2024年5月10日 NHK 信州 NEWS WEB

 

松本市で450匹余りの犬を劣悪な環境で飼育したほか、妊娠した犬の腹部を麻酔をせずに切開したなどとして、動物愛護法違反などの罪に問われた会社役員に対し裁判所は10日、執行猶予の付いた懲役刑と罰金10万円を言い渡しました。

 


ペット販売などを行っていた会社の役員、百瀬耕二被告(63)は、松本市で450匹余りの犬を劣悪な環境で飼育し衰弱させる虐待を行ったほか、獣医師の資格がないのに妊娠している犬5匹の腹部を麻酔をせずに切開したなどとして、動物愛護法違反などの罪に問われました。


これまでの裁判で、被告側は劣悪な環境で犬を飼育し虐待したことを認める一方、妊娠した犬の腹部の切開については「鎮痛剤を用いて緊急の手術を行ったもので、みだりに傷つけてはいない」と無罪を主張していました。


10日の判決で長野地方裁判所松本支部の永井健一裁判長は、劣悪な環境での飼育について「多くの犬が眼病や皮膚病などを発症していたが、獣医師に診せることもなく極めて悪質なネグレクトと言うべきだ」と指摘しました。


また、犬の腹部の切開についても「鎮痛剤を使っていた可能性は否定できないが、使っていたとしても措置が適切ではなく、切開したときの犬の苦痛を適切に取り除くことができていなかった」と指摘し有罪としました。


そのうえで、「被告に前科はなく、すでにブリーダー業を廃業している」などとして懲役1年、執行猶予3年と罰金10万円を言い渡しました。


弁護人は判決後のNHKなどの取材に対し、被告と相談のうえ控訴するか決める考えを示しました。

 

全国的にも注目を集めたこの事件。
経緯を振り返ります。

次々と運び出される犬。

2021年9月、警察は、犬を劣悪な環境で飼育し虐待したとして、松本市でペット販売などを行っていた会社の飼育施設に捜索に入りました。


警察によりますと、この会社は松本市内の2つの施設で合わせて900匹以上を飼育。


1つのケージに複数を入れたり、ふん尿を適切に処理しなかったりした結果、多くが衰弱し、中には失明した犬もいたということです。


その年の11月、警察は、この会社の役員、百瀬耕二被告(63)と、飼育担当者を動物愛護法違反の疑いで逮捕。


その後、検察は役員1人を450匹余りの犬を虐待した罪で起訴しました。


裁判はおととし3月から始まり、役員は初公判で「間違いありません」と起訴された内容を認めました。
一方、この裁判では初公判のあとに追起訴された別の傷害行為について争われました。


それは獣医師の資格がないのに妊娠している5匹の犬の腹部を麻酔をせずに切開したというもの。


被告側は「腹部を切開したのは間違いないが、鎮痛剤を使っていてみだりに傷つけてはいない」などと一部を否認。


これに対し検察側は「鎮痛剤を使っていたという説明には不自然な点があり信用できない」などと主張しました。


劣悪な環境下の飼育だけでなく腹部の切開も有罪と認めた今回の判決。


しかし、動物愛護団体からは執行猶予がついたことに憤りの声も上がっています。

 

役員を刑事告発した動物愛護団体の理事長を務め、裁判の傍聴を続けてきた俳優の杉本彩さんは、判決を受けて会見を開き、「長年にわたってひどいことをされてきた犬たちの苦しみは想像を絶する。そのことを考えたらこんな判決でいいのかと悔しくてたまらない」と憤りをあらわにしました。


そのうえで「こうした事業者を生み出さないよう、事業者を規制する制度の制定に向け声を上げていきたい」と述べ、再発防止に力を入れる考えを示しました。