ペットたちにより良い医療を 愛玩動物看護師 大阪ECO動物海洋専門学校教員 関智恵子さん | トピックス

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2024年4月1日 産経WEST

 

愛玩動物看護師の関智恵子さん=大阪市西区(柿平博文撮影)© 産経新聞

 

イヌやネコなどのペットは、家族と同じ存在として近年、アニマルコンパニオン(伴侶動物)とも呼ばれる。高まるペットブームとともに、求められる動物医療も高度・多様化しており、このほど民間資格を格上げする形で新たな国家資格ができた。

 

愛玩動物看護師。大阪ECO動物海洋専門学校(大阪市西区)の教員、関智恵子さん(48)もその一人だ。イヌやネコの問診方法などの専門知識に加え、動物病院での勤務で得た知見や気付きも授けている。

 

実家近くの畑をすみかにする野良ネコが少なくなく、幼少期から自然とふれあうように。ある日、家の軒先で瀕死(ひんし)の茶トラ(茶色のトラ猫)を見つけた。助かって-。母親に連れて行ってもらった動物病院で願いは通じた。

 

「獣医師、動物看護師による懸命の治療があったのだと思う。幼心ながら医療の尊さに感銘を受けた」

 

短大卒業後、いったんは総合病院で介護士として療養型病棟を担当したが、同じ医療の中でも職種ごとの壁を感じたという。横断的に医療に携わるにはどうすればいいか。

 

当時ネコを飼っており、かわいがるだけの対象ではなく、家族の一員にほかならなかった。「その家族からもらっている幸せな時間が長く続くように。同じような思いを持った方々の支えになれるように」と、動物医療の道に進むことを決めた。

 

20代で大阪コミュニケーションアート専門学校(現・大阪ECO動物海洋専門学校)に入校。在学中は獣医師と動物看護師を育成する米国の大学でも学んだ。先進的な動物保護や譲渡の取り組みのほか、動物看護師の法制度に触れる機会も得た。

 

卒業後間もなく、恩師から「介護士と動物看護師の双方の経験を生かしてみては」と背中を押され、母校で動物看護のスぺシャリストを送り出す側になった。

 

もっとも、当時の日本では、複数の関係機関がそれぞれの基準で資格認定を行っていたため、現場レベルでは動物の扱いなど「動物看護師の技術水準にばらつきがみられた」という。

 

業界としても課題を把握しており、統一試験に基づく資格認定を行う機関が設立されたのが平成23年。さらなる環境整備へ令和4年5月に愛玩動物看護師法が施行され、第1回国家試験は5年2月に行われた。関さんはもちろん1期生だ。

 

従来の認定動物看護師との違いは法による定め。獣医師の指示の下で採血や投薬、マイクロチップの装着(=診療の補助)が可能になり、年老いた動物のケアや栄養管理に関する専門的な助言や指導も行う。「職域の拡大による重みを感じる」と関さん。教員の立場では、一人でも多くの合格者を出すのが仕事だ。

 

動物の命を預かる重責は「動物が好きなだけでは担えない」だけに、学生とは真剣に向き合う。動物たちにより良い医療を提供するには、質の高い看護師の存在がまず欠かせない。(矢田幸己)

 

愛玩動物看護師になるには 愛玩動物看護師を養成する専門学校などで動物の扱い方などを学び、年に1回の国家試験に挑む。合格すると、国家資格を得られる。名称独占資格のため、愛玩動物看護師以外は動物看護師を名乗れない。