場所が…人手が… ペット同伴専用避難所、開設自治体6市のみ | トピックス

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2024年2月16日 毎日新聞

 

飼い犬のために避難所の駐車場にとめた車の後部座席で過ごす女性(左)。過去の災害時にもペットとの避難の在り方が課題となっていた=熊本県球磨村で2020年7月5日午前10時35分、幾島健太郎撮影© 毎日新聞 提供

 

 災害時にペットと飼い主が同じ建物の屋内で避難できる「専用避難所」を開設するのは道府県庁所在地と政令市、東京23区の全74市区のうち6市にとどまることが、毎日新聞のアンケートで判明した。国はペットを伴う避難を推奨する一方、専用避難所の開設は自治体に義務付けていない。避難所の態勢が整っていない場合、ペットと一緒に過ごしたい飼い主が車中泊や壊れた自宅での避難生活を選ぶケースが各地の被災地で相次いでおり、対策が急務となっている。

 

 アンケートは2023年12月、東京都を除く道府県庁所在地の46市とそれ以外の5政令市、東京23区の全74市区を対象に実施。専用避難所の開設には直接関わらないが、ペット避難の実態を把握するため47都道府県も対象とし、全121自治体から回答があった。

 

 災害時に多くの人が避難生活を送る避難所では、動物が苦手な人も少なくなく、においや鳴き声の問題もあることから、犬や猫などペットをどう受け入れるかが課題となっている。1月1日に発生した能登半島地震でも飼い主が避難所への避難をためらい、ペットと共に過ごすことを優先する事態が生じている。

 

 そのため、環境省は18年にまとめたガイドラインで「ペットは家族の一員になっている」として、飼い主の心のケアの観点からも、ペットと一緒に避難場所まで逃げる「同行避難」を推奨。ただ、ガイドラインでも自治体に同行避難を推進するよう求めている半面、避難所でのペットの在り方は自治体に一任している。

 

 アンケートによると、道府県庁所在地と政令市、東京23区の全74自治体のうち、約3割の25市区が避難所でのペットの飼育場所を「原則屋外」「屋外を想定」と回答。残りの自治体の大半は「屋内」「屋外」などのルールを定めておらず「受け入れ場所は地域の実情に応じて避難所ごとに定める」(京都市)などとしていた。

 

 屋内でペットと過ごせる確証がない場合、飼い主は避難所での避難を避ける可能性がある。そこで有効になるのが、飼い主がペットと同じ部屋で避難生活を送れたり、建物内の別の部屋で飼育したりできる避難施設として自治体が開設する「専用避難所」の存在だ。

 

 専用避難所を開設すると回答したのは、福島▽北九州▽佐賀▽長崎▽熊本▽宮崎――の6市。宮崎市は9カ所を用意するとしたが、残りの5市は1カ所(試行的設置含む)にとどまる。

 

 専用避難所を開設できない背景には、避難所のスペースや受け入れ態勢の問題がある。「現在の避難所で十分な場所を確保するのは難しい」(横浜市)、「専用避難所の設置に対する要望があるが、施設や運営職員の確保が難しい」(福岡市)からだ。

 

 一方、専用避難所を「開設する」とした佐賀市も「郊外にあり、そこまで避難することがリスクになる地域もある。増やすとなれば運営する人員の確保も問題だ」と打ち明ける。

 

 九州保健福祉大の加藤謙介教授(社会心理学)は「ペットの専用避難所は、市民の適切な避難を促すためにも有用だ」と評価。その上で「避難所などでのペットの受け入れはスペースの確保が難しいとの声もあるが、過去には避難所施設内のさまざまな場所を活用し、人とペットの適切な『住み分け』も行われている。国や自治体には柔軟な対応を検討してほしい」と提言する。

【竹林静】