雨漏りの自宅で犬と暮らす被災者「別れられない」…同行避難は「ほえると迷惑」とためらう | トピックス

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2024年1月18日 読売新聞

 

 

 能登半島地震の被災地ではペットを受け入れる避難所が限られていて、飼い主の被災者が、劣悪な環境の自宅にとどまったり、車中泊を続けたりしている。環境省は「ペットとともに避難行動をとることが飼い主の心のケアにもなる」と呼びかけるが、動物が苦手な人などもおり、各避難所では対応を模索している。(加藤亮)

 

 石川県珠洲(すず)市の男性(72)は、妻と愛犬のポメラニアン(12歳・オス)と、地震で傾いた自宅で過ごしている。

 

 地元の集会所に設けられた避難所に移ることも考えたが、犬は神経質な性格で、人混みでは落ち着かない。「ほえると迷惑になる」と思い、10日ほど車中泊した後、自宅に戻ることにした。

 

 自宅のドアはきちんと閉まらず、隙間から風が吹き込む。夜は雨漏りをしない部屋で、犬と一緒に夫婦で横になる。「余震の恐怖はあるし、安心して生活できる場所に早く移りたいが、犬と別れることは考えられない」と疲れた表情で語った。

 

 市内には、独自にルールを定めてペットを受け入れている避難所もある。約160人が身を寄せる市立飯田小学校では、小型犬や猫を連れた人たちに3階の一部屋を用意した。大型犬は、体育館の入り口にストーブを置き、飼い主と過ごせるようにしている。これまでに近隣の住民が犬や猫、ウサギと一緒に避難してきた。

 

 ラブラドルレトリバーを連れて同小に避難する女性(49)は「ほかの避難者と同居すると、どうしても気を使う。別々の場所で生活できるのはありがたい」と話す。ただ、遠方のホテルや旅館への2次避難はためらいがある。「ペットと暮らせないなら、多少不便でもここで耐えるしかない」

 

 被災地でペットの健康管理や預かり支援に取り組むNPO法人「ピースウィンズ・ジャパン」(本部・広島県)は9日から現地入りした。能登半島地震では、飯田小のようにペット同伴を認める避難所はごく一部にとどまるという。スタッフの岸下塁さん(41)は「ペットと安心して過ごせる避難生活が被災者の健康維持につながる。2次避難の呼びかけも、ペット同伴者への配慮が欠かせない」と指摘する。

 

■「同行が基本」 国が東日本大震災後に指針

 

 ペットを連れた避難を巡っては、過去の災害でたびたび問題になってきた。

 

 避難所には動物が苦手な人やアレルギーの人も身を寄せる。2011年の東日本大震災ではペットを連れ込めず、飼い主が避難をためらったり、車中泊などを強いられたりするケースがあった。原発事故に伴う避難指示で自宅にペットが取り残され、飼い主とはぐれた犬が野犬化した。このときの教訓から、環境省は13年、ペットと一緒に避難する「同行避難」を基本とする指針を策定した。

 

 指針では、人とペットの住み分けを提案。避難所の一角に飼育スペースを設けることや、敷地内の車やテントで飼うことを挙げる。飼い主に向けては、ペットフードや水を5日分備蓄するほか、他人に迷惑をかけないようしつけをしておくことを促している。

 

 同省動物愛護管理室は「いざというときは地域との連携が大事。避難訓練の機会に飼い主同士や近隣住民とペットを連れて避難する方法を話し合っておくことが望ましい」としている。