2023年3月10日 Newsweek
主が亡くなった首輪や鎖が惨劇を物語る MBN News / YouTube
<ゴミ屋敷の外にも中にも折り重なるように犬の死体が──>
多くの犬や猫を飼育する飼い主が無計画な飼い方をした結果、飼育できなくなる多頭飼育崩壊が近年問題になっている。だが、これほどの規模の惨状はかつてなかったのではないか? なんと1400匹もの犬が、エサを与えられず、餓死していったのだから。
韓国のソウル近郊にある京畿道楊平郡(キョンギド・ヤンピョン)で古物商を営む60代男性が、自宅で数多くの犬を餓死させたとして、動物保護法違反の疑いで警察が在宅立件、捜査を開始した。デイリー・アンなど韓国メディアが報じた。
1匹1000円で引き取っていた
問題の老人による虐待容疑は、迷子になったペットを探していた住民が、たまたま老人宅にあるゴミの山で犬の死がいを発見し、動物保護団体に通報したことで発覚したという。
それは筆舌に尽くしがたい惨状だった。ゴミ屋敷の中に入ると鉄製の檻があり、その床には犬の死がいが貼り付いている。なかには骨があらわになったものもあった。檻の中だけでなく、庭の隅に置かれた赤い瓶をはじめ、いたるところに犬の死がいが野積みになっている。
通報を受けた動物愛護団体「ケア」は、老人のゴミ屋敷を訪問した際の様子を「史上最悪の動物虐待。3年間収集して集めた数百匹の犬たちすべてを飢え死にさせた現場に行ってきた。死がいは300〜400匹を超えるようだ。死がいはすでに腐って床に貼り付き、その上に新しい犬を入れて、さらに飢え死にさせている」と報告。「エサのない犬たちは、隣の仲間が死んだらその肉を食い尽くして、また飢えて死んでいった」と説明している。
警察によると、古物商の老人はブリーダーなどから年老いて繁殖能力がなくなった犬を1匹1万ウォン(約1000円)程度をもらって引き取り、連れてきた後はエサを与えらず餓死させたという。老人は「廃品回収をしながら、人びとが飼うことができない犬をお金を受け取って連れてきたが、エサ代が高くて飢えさせた」と語っている。
犠牲になった犬は1400匹以上と判明
この事件を捜査しているヤンピョン警察署は、6日の時点では死亡した犬の数を400匹と発表していたが、調査をすすめた結果、犠牲になった犬の数は1400匹を超えることが判明した。警察は容疑が一定部分立証されたと判断し、古物商の老人に対する拘束令状を申請したという。
現在、韓国では動物保護法第8条(動物虐待等の禁止)で「故意に飼料または水を与えない行為により、動物を死に至らせる行為」を禁止している。これを違反する場合、3年以下の懲役または3000万ウォン(約300万円)以下の罰金に処することができる。
また、今回の事件に関連して農林畜産食品部(日本の農林水産省に相当)は、全国の自治体と連携して「3月からブリーダーやペット販売業者などの遵守すべき項目の履行実態や不正・不法営業行為に対する点検を進める計画だ」とし、「特に、ブリーダーなどの動物生産業者の繁殖管理(個体管理カード)及び繁殖能力のない動物の処理実態などを重点的に点検や取り締りを行う予定だ」と話した。
おびただしい数の犬たちの死がいが見つかった今回の事件。唯一の救いは動物愛護団体が現場でまだ生きていた4匹を救助し、これから動物病院で治療する予定だということだ。
そこは犬たちにとって地獄だった
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