2022年12月1日 毎日新聞
国の特別天然記念物で鹿児島県・奄美大島と徳之島のみに生息するアマミノクロウサギが、出産時に自分の体毛を口でむしり取って巣穴に運ぶ様子を、同県奄美市の写真家、浜田太さん(69)が撮影した。赤ちゃんがほぼ毛のない状態で生まれてくるため、保温のための行動と考えられるという。
巣穴の前で自らの体毛を口でむしり取るアマミノクロウサギ=鹿児島県奄美大島で、撮影者の浜田太さん提供(毎日新聞)
奄美大島中部の山中で赤外線自動撮影カメラで撮影した。2017年と18年にも記録していたが、画像が不鮮明だった。21年秋に新たに見つけた巣穴で撮影を始め、11月6日夜に動画での撮影に成功した。
母ウサギが落ち葉をくわえて巣穴に運んだ後、巣穴前でむしり取った自分の体毛を口にくわえ、巣穴に入った。産床の落ち葉の上に敷き詰めているとみられる。11月18日には子ウサギが巣穴から姿を見せ、授乳していた。
これまで専門家の間では知られた行動だったが、野生で実際に撮影されるのは貴重だという。
浜田さんは「厳しい環境の中で大切に命をつないできたことがうかがえる。生態を理解することで保護につながってほしい」と話した。