天変地異の前触れ? 「猛暑なのに、セミの鳴き声が聞こえない」のはなぜなのか、昆虫学者に聞いてみた | トピックス

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2022年7月8日 デイリー新潮






 超速の梅雨明けでやって来た2022年の夏。観測史上最高といわれる40度近い異常気温が注目を集める陰で、もうひとつ不思議なことが起きている。


 そう、例年であれば梅雨明けの頃には一斉に大合唱を始めるセミの声が、一向に聞こえてこないのである。もしかしたら、これは何か天変地異の前触れなのか――? 


『怪虫ざんまい』、『昆虫学者はやめられない』などのエッセイが人気の昆虫学者、小松貴さんに話を聞いてみた。


――本当に暑いですね。さすがの小松さんも野外での昆虫観察はお休みですか?


「いえ、へばっている暇などございません。今の時期、日中はトゲアリの巣にやってくる珍しいハナアブを観察し、夜は夜で沼地のヨシ原でゴミムシとガを観察しています」


――ところで、こんなに暑いのにいまだにセミが鳴かないのは、何か理由があるのですか? なんか天変地異の前触れみたいで、気になるんですが……。


「セミに限らず、昆虫が成長するためには温度の積み重ねが必要なんです。これを有効積算温度といいます。昆虫は変温動物ですから、外気温の変化に左右されるんですね。種によってその有効積算温度は違いますが、幼虫やサナギから羽化するまで、トータルで一定の温度を積み重ねなければ成虫になれない。しかも有効温度帯というのもあって、極端に寒かったり、逆に暑かったりすると、それはカウントされないんです。今年の春先は例年にも増して寒かったですから、急に暑くなったとはいえ、数日間の気温の急上昇では間に合わない」


――なるほど、暑ければかき氷が食べたくなるとか、ビールを飲みたくなるとか、そんな感覚的、瞬間的な話ではないんですね。


「そうです。さらに言えばセミは何年も土の中で過ごすわけですから、極端に低い年があれば、当然影響を受けます。ちなみに、岡山県岡山市では、ここ数年ツクツクボウシの成虫の出現時期が他よりも1カ月近く早いそうです。都市部で進むヒートアイランド現象の影響で、セミが幼虫として過ごす期間が短縮されてしまっているんだとか」


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