一軒家に柴犬が120匹超・・・飼い主に何が?長野・東信地域 ボランティアレスキューの現場へ | トピックス

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2022年1月19日 長野朝日放送





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生後間もない子犬。

活発な性格の犬。

ここは上田市にある犬の一時預かり施設です。ペットホテル老犬のケアハウスとして去年10月にオープンしました。

先月、保護された柴犬です。


WILLドッグケアハウス 後藤香織さん

「生後2か月くらいですかね。里親募集をかけていて、もう1匹は決まって、何匹かはある程度決まっているので、これからもらわれていく感じです」


これらの子犬が飼われていたのは、東信地域のとある一般住宅です。

先月、ケージに入れて運び出されました。


記者

「体が震えていますね。非常に鼻をつくような悪臭がします」


そこは、想像を絶する劣悪な環境でした。


一匹でも犬・ねこを救う会 横山由佳里副代表(犬担当)

「犬たちが6畳間に20匹くらい集まっちゃって、(家の奥に)進めない。糞の堆積した臭いですよね。これ家の中のリビングなんですけども、下がもうタンス1段目から2段目くらいまで埋まるくらいの糞が堆積しているんですよね、たぶん30cmか40cmくらい」

問題が発覚したのは去年の春。

犬の鳴き声や悪臭がすると、保健所を通じて上田市のNPO法人に相談がありました。


Q.普段は犬の鳴き声は近所の住民

「すごかったですよ。においもすごかったしね」

近所の住民

「ここ通る人が、息しないで通らなきゃ通れないほど悪臭が漂っていた状況ですね」


副代表の横山さんや保健所の職員などが訪ねると住民は家の中を見せることを拒み、「20匹くらいいる」と申し出ました。何度も説得して少しずつ犬を保護し、残りは数匹。

そう思った、去年の7月のこと…


横山さん

「子犬が出て来たんです。1頭。『おっとこれは』と思って」


「さらに繁殖している…」

立ち入り調査を求め続け、去年11月。

ようやく飼育環境を目の当たりにしました。

数が増えすぎて世話が十分にできない、「多頭飼育崩壊」が起きていました。

先月、寒さが本格化する前にすべて保護しようと、飼い主の元へ向かった横山さん。

脱走を防ぐため玄関は封鎖されていて、通りに面した窓から出入りするようになっています。

次から次へと運ばれてくる、柴犬。


当初、60匹前後と見積もっていましたが、大幅に上回りそうです。

中には…他の犬に負わされたのでしょうか、片目にけがをした犬も。

治療は受けていないようです。

この白い子犬は、下半身が動きません。

別の犬に踏まれた可能性があるといいます。


犬は上田市の施設や一般の預かりボランティアのもとに移されました。


横山さん

「悲劇を通り越して悲しいです。あの現場で生まれて死んでという子たちもこの何年間、いっぱいいたんだなと思うと切ないですね」


引き取った犬はすべて、個体を識別するために番号と名前を付けます。


Q.何回名付けるんですか?

「何回名付けるんだろう」


この時点で、声をかけた保護団体だけでは受け入れられない数に達していました。


横山さん

「もう手に負えない。全国的に知られている大きな団体さんに声かけないと」


その後、住民が引き続き飼育する雌2匹を残し県外の団体が協力してすべての犬の保護を終えました。

2階建ての一軒家から引き取った柴犬は、その数、122匹…。


Q.個人宅で122頭というのは?

横山さん

「全国的にも結構上のランクだと思います」


すべての引き取り作業が終わった先週、飼い主を訪ねました。


飼い主

「ちょっとお待ちくださいね」


高齢の夫婦が2人で暮らしていました。

一体なぜ、ここまで増えてしまったのでしょうか…


「(他のケースの)役に立つようだったらいいよ、(取材は)構わない」

「夫が介護の、介護になっちゃったんです。私が(犬の)面倒見られなくなったんで、それでボランティアの方に引き取ってもらったんです」


夫婦は7~8年前、ここに引っ越してきました。

展覧会などに出す柴犬のブリーダーで、環境のいい土地を選んだのだといいます。


「俺も若い時はお金も欲しかったからさ柴犬、すごく健康で元気でしょ、丈夫だからね柴犬はね、だから柴犬手を出しちゃった」


Q.いつ頃から数が増えた?

「夫が脳梗塞で入院で倒れて2年くらい入院してましたからね、その間に。気をつけていたんですけど、もういったんどうでもいいやーって思っちゃったことがあったんですよね、それでタンタンタンと交配しちゃって」


臭いや鳴き声に関して、近所の住民から苦情を聞いていた取材班。

その声を伝えると。


「そのへん(臭い)は気をつけていました、消臭剤まいたり」

夫「犬が鳴くのはしつけだからね、このへんの近所でワンワンキャンキャン聞こえたっていうのはいないと思うよ」


そう否定し、犬たちへの「愛情」を繰り返し語りました。


妻「私たちは犬は大好きで…どこにいったのか心配で」

Q.寂しさがあった?

「そうですね、胃がずっと痛かったんですよ、心配で」


10年ほど前には、東日本大震災で被災した犬の保護にも取り組んでいたという夫婦。

それでも増えすぎてしまったことに後悔の念を口にしました。


妻「やっぱり繁殖させないようにして現状維持が一番いいと思いますね」


県内では去年、劣悪な環境で犬を飼育し虐待した動物愛護法違反の罪で、松本市のペット販売業者の元社長が逮捕・起訴されています。

これ以上、不幸な目に遭う動物を増やしたくない…。

横山さんたちは近く、今回のケースについて、排泄物の処理やけがをした犬の適切な処置をしていなかった動物愛護法違反の疑いがあるとして、飼い主の夫婦を刑事告発する方針です。

これまでにも、多頭飼育崩壊の現場を数多く経験し、保護に携わってきたNPO法人副代表の横山さん。


一匹でも犬・ねこを救う会 横山由佳里副代表(犬担当)

「(今回の事例は)まだ氷山の一角だと思います」


問題となる飼い主には、共通点があると話しました。


横山さん

「ご年配の夫婦とか一人暮らしの年配の方、若くても外部とあまり接点のない方がどうしても(多い)。その方の唯一の心の支えになってしまっちゃってるんですよね。それが悪気のない個人の方の多頭崩壊につながっている」


社会や地域からの「孤立」。

犬や猫の多頭飼育の問題と、密接に関わるキーワードだといいます。


横山さん

「そこをやっぱり行政とか民間ボランティアがこれからどうやって介入していくのかが肝になると思いますね」