2021年8月28日 婦人公論.jp
自分の最期を考えるとき、ペットのその後のための準備が欠かせない時代になっています。飼い主として実際に行動した人たちに話を聞きました。2人目の七戸さんは、近くの寺院墓地にペットと一緒に入れる区画を見つけてーー(取材・文=篠藤ゆり)
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◆息子にペットの遺骨を託すのも気が引けて
終活の一環で、自分が入るお墓を用意する人は多いだろう。七戸(しちのへ)恵子さん(60歳)も、4~5年前から夫とともにお墓のことを考えるようになった。理由は、お互いの親の墓所が少々遠方にあるため、将来お墓参りが大変になるかもしれないと考えたからだ。息子に同じ苦労はさせたくない。自宅近くでお墓を購入することを視野に入れていたという。
昨年、たまたまチラシで自宅のすぐそばの寺院墓地にペットと一緒に入れる「with(ウィズ)ペット」区画があることを知った。
「ウサギを11年前に、リクガメを4年前に亡くし、ペットを供養してくれる寺院でそれぞれ火葬と葬儀を行い、遺骨を手元に置いていました。その寺院では火葬後にお墓を建てたり、合葬もできるようになっていたのですが、踏ん切りがつかなくて。でも私たちが亡くなった後、息子にペットの遺骨を託すのも気が引けます。だからチラシを見て、ここならばと思いました。キャンペーン中ということもあり、100万円ちょっとという価格だったのも大きかったですね」
「withペット」は03年に「メモリアルアートの大野屋」が始めた共葬スタイル。霊園の一角に専用の墓地を設けており、価格は人間だけが入るお墓と変わらない。また一般のお墓同様、子孫が承継できる。販売を始めて2~3年後から爆発的な人気となり、現在は他社からもペットと一緒に入れる墓地が売り出されているそうだ。
◆ペットのレリーフ、線彫りを入れたり
「一般の墓地を購入するのは70代の方が主流ですが、『withペット』は50~60代と、少し下の層が比較的多い印象ですね」(メモリアルアートの大野屋・上原さん)。ペットが亡くなったのをきっかけに、自分たちの終活を早めに始めるからだという。
墓石のデザインもかわいいものが多く、ペットのレリーフをはめ込んだり、線彫りを入れたりもできる。七戸夫妻が選んだのも、2つの塔で構成されたデザイン性の高いおしゃれな墓石だ。現在飼っている25歳のイシガメと35歳のクサガメの将来も見据え、人の遺骨とは別に、合計4体のペットの遺骨が収納できるようになっている。
「息子も理解してくれています。このお墓を買ったことで、私たちの終活がスタートしました」と語る七戸さんは、エンディングノートを書こうと思っているという。それは、父を看取る際に迷いが多かったからだ。
「病状が進行した父が口から栄養を摂れなくなった時、胃ろうはどうするかなど決断をしなければなりませんでした。でも、どういう最期を迎えたいかについて父と話し合ったことはなく、家族としては推し量るしかなかったのです」。延命治療などについてきちんと意思表示しておけば、残された家族の迷いや葛藤が軽減される、と実感したそうだ。
ペットのことも含め、元気で行動力もある60代から終活を始めておけば、まさに「備えあれば憂いなし」だろう。
(撮影=本社写真部、編集部)