愛が300匹のワンコを救った。
メキシコ・カンクン。そこはそのきれいな海が人気で、年間300万人もの人々が訪れるメキシコでも人気の観光リゾート地だ。そのカンクンの郊外にある動物保護施設で働く男性のとある行動が世界中で話題となったことをご存じだろうか。
みなさんはハリケーンという言葉を聞いたことがあるだろう。ハリケーンとは、北大西洋、カリブ海、メキシコ湾地域に発生する大嵐のことである。北西太平洋、南シナ海付近で発生するものは台風と呼ばれている。
2020年10月7日、ハリケーン「デルタ」がカンクンに近づいていた。「デルタ」はカテゴリー3に分類される強さで、「壊滅的被害をもたらしかねない」とされている。
そのニュースは、当然、動物保護施設 “Tierra de Animales(ティエラ・デ・アニマルズ)”を運営するリカルド・ピメンテルの耳にも入ってきた。
「動物たちを安全な場所に避難させなくては!」
そう考えたリカルドであったが、施設には、牛、豚、馬、羊、鶏、猫、犬、ヤギ、など様々な動物たちがいる。とてもすべての動物が避難所に収まらないこと、そして建物がハリケーンで倒壊してしまうかもしれないと考え、リカルドはとある行動をとったのだ。
それは、リカルドの自宅に犬たちを連れて帰ること。それもなんと300匹。
リカルドはその様子をSNSで配信した。
「ここで自分ができるすべてのものを買い込む。美しい日、嵐の前の静けさ。」
「彼らはこんな天候の時だって、ずっとお利口にしてたよ。彼らはみんな避妊・去勢手術を受けていて、ワクチン接種も終わっているんだ。だから新しい家族に会う準備はできているんだ。」そうリカルドは言う。
またリカルドは、「僕は子どもの頃から現在まで、自分の人生のほとんどを動物保護にささげているよ。だから9年前にこの施設を造ったんだ。僕たちは犬だけではなく、猫や亀、イグアナ、牛、羊、ヤギ、豚、馬、ロバなどいろいろな動物も保護しているんだよ。」とも付け加える。
「ハリケーンを乗り切るための準備は整え終わったよ。でも、大変なのはワンコたちのウンチだね。家中、ウンチだらけだよ。でも仕方ないよね。」と笑って言うリカルドは、本当に天使の心を持っているとしか思えない。
そしてリカルドは、SNSでこう発信した。
「でもやっぱりこれだけのお世話をすることは簡単ではありません。ぜひご寄付をいただけますと幸いです。私が一人暮らしで10~20匹の犬と生活する場合はそれほど問題ではありません。でもここには数百もの動物たちがいます。十分な食料を与えるためにも、みなさまからのサポートを強くお願いいたします。」
ハリケーン「デルタ」一過。ティエラ・デ・アニマルズも甚大な被害を被った。しかし、リアルタイムで状況を発信していたリカルドのもとには、世界中の人々から動物たちの食糧の費用、そしてハリケーンでの損害を補うに足りる寄付を受けることができた。しかし、リカルドは、「これからもハリケーンは来ます。すべての動物たちを救うためにも、今後来るであろうハリケーンに耐えうるシェルターを作りたいのです。ですから、どうかご寄付をお願いいたします。」と。
動物たちはハリケーンを無事に乗り越えた。リカルドのおかげで、あの大きなハリケーンを動物たちは生き抜いたのである。それはまさに現代の「ノアの方舟」であった。
TIERRA DE ANIMALESにいる動物たちはもちろん、地球上のすべての動物たちが安心して幸せに暮らせる世の中になるよう願ってやまない。
TIERRA DE ANIMALESへの寄付はこちらから可能です。
https://www.tierradeanimales.org/contacto/
文/織田 浩次
参考資料/
TIERRA DE ANIMALES
Ricardo Pimentel Cordero