住宅街に大量のハトカラス 10年以上の“迷惑”餌やりと住民との戦い | トピックス

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2020年8月23日 産經新聞







大阪市住吉区のマンションの水道を無断使用したとして今月、同区の男女が窃盗容疑で大阪府警に逮捕された。周辺ではこの男女ら数人のグループがネコやハトに勝手に餌を与える行為を10年以上続けており、その中で水道を使っていた。民家や道路に糞(ふん)や食べ残しが散乱し、住民は市や府警に相談。だが、餌やりを直接禁じる規則はなく、グループは再三の注意も聞き入れない。打つ手のない中、府警が窃盗容疑を適用。市も6月に施行された改正動物愛護法違反罪で告発する構えをみせている。住民らの長年の苦闘は報われるのか。(小松大騎、木下未希)



府警住吉署に逮捕されたのは、いずれも無職で55歳の女性と78歳の男性。大阪市や地元住民によると、この女性が10年以上前、JR我孫子町駅(同区)周辺で餌やり行為を開始。数人が手伝うようになり、中学校前やスーパー前など10カ所以上に広がった。

  当初は野良ネコだけに餌を与えていたが、その餌を目当てにハトやカラスが群がるようになり、それからはほぼ毎朝、数人のグループが自転車で巡回。パン粉や米などをまくと、100羽ほどのハトやカラスが住宅街を飛び回り、民家の屋根や敷地、道路には糞や食べかすが散乱するようになった。

  何度もやめるように言われても聞く耳を持たず、耐えかねた近隣住民は市に相談。市も口頭や文書で注意したが、グループは「かわいそうでやめられない。法律がないから自分たちは悪くない」と言い張った。

  ■条例改正するも 
  実際、同市には餌やりを規制する法律や条例はなく、強制的に止めることはできない。そこで市は廃棄物の適正な処理を定めた条例を改正。昨年12月、餌やり後の清掃を義務付け、違反した場合に過料を科す罰則規定を盛り込んだ。 

  そのうえで早朝にパトロールを実施し改めて注意。ただ、改正条例は行為自体を規制しておらず、グループは餌やり後に道路などを清掃するようになったものの餌はまき続け、大量のハトなどが住宅街を飛び回る状況は変わらなかった。

  そんな中、府警はグループが清掃時に周辺のマンションの水道を無断で使用していることに着目。今月11日早朝、蛇口から水約1リットルを盗んだとして、窃盗容疑で2人を現行犯逮捕した。 

  「鳥の鳴き声や飛び回る音で眠れないし、毛や糞があちこちに落ちていた。逮捕され、『長年悩んでいたことがもう終わる』と近所の人たち全員で喜んだ」

  逮捕後、住民の男性(87)はこう語った。だが裁判所が勾留を認めず、2人は12日に釈放。同署は在宅で捜査を続けるが、女性は翌日からネコへの餌やりを再開したという。

  ■毅然と対応、告発も 
  振り出しに戻ったかにみえる餌やり問題。市が次の一手に頼るのは6月に施行された改正動物愛護法だ。

  動物の虐待防止などを目的とする同法では、住環境が悪化するような餌やり行為を規制できるようになり、違反すれば50万円以下の罰金が科せられる。

  大阪市の松井一郎市長は、2人が逮捕された11日、「今後は改正動物愛護法を適用し、迷惑な餌やり行為は法律違反として毅(き)然(ぜん)と対応していきたい」と表明。市の担当者は「改善命令に従わなければ、刑事告発していく」と話す。

  だが、罰則があるからといって、グループが長年続けてきた餌やりをやめるのか。住民の女性(70)は「条例改正でも大きく状況は変わらなかった。動物愛護法で餌やりが本当になくなるのか」と不安げな表情を浮かべた。