頼まれヒグマ駆除したのに…猟銃所持許可取り消し 不服のハンター、提訴へ  | トピックス

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2020年4月3日 毎日新聞








自治体からの要請でヒグマを駆除したら、違法性を認定され猟銃所持の許可取り消し処分を受けた――。北海道猟友会砂川支部長の池上治男さん(71)が道公安委員会の処分を不服として申し立てた行政不服審査が、2日までに棄却された。池上さんは「市民の安全を思い協力したのに理不尽だ」と憤っており、処分を不服として札幌地裁に訴訟を起こす方針だ。【山下智恵】

 池上さんは2018年8月、猟友会を通じて砂川市の出動要請を受諾し、男性ハンター1人を伴って現場に急行。道路下の斜面で体長約80センチの子グマを確認し、市職員と警察官の立ち会いの下で猟銃を発砲するなどして駆除した。

 状況が一変したのは19年2月。池上さんの発砲に問題があったとの情報提供を受けた砂川署が「民家に向けて発砲した」として鳥獣保護法違反と銃刀法違反容疑などで滝川区検に書類送検した。

 区検は起訴猶予処分としたが、道公安委は19年4月に「民家に向けた違法な発砲を行った」と違法性を認定、猟銃免許を取り消した。池上さんは処分取り消しを求め行政不服審査を申し立てたが、1日に棄却された。

 一方、狩猟免許を扱う道環境生活部は池上さんから事情を聴くなどした上で、民家に向かって発砲した事など「違法の事実が確認できない」と判断。狩猟免許の取り消しをしなかった。

 現場は田畑が広がる山間の地域で斜面上に民家が数軒建つ。池上さんは「子グマの背後に8メートル近い斜面があり発砲しても安全な場所。民家に危険は及ばない状況で、同行した警官も発砲を制止しなかった」と訴える。ハンター仲間も「斜面の土が弾を受け止める場所で、何が問題か分からない」と首をかしげる。また、池上さんの代理人で自身もハンターの中村憲昭弁護士は「善意の市民をいたずらに処罰しており不当な処分だ」と道公安委の対応を批判している。

 ◇猟友会にも波紋

 全道の猟友会にも波紋が広がっている。「いつ取り消されるか分からない」と同猟友会新函館支部など一時、自治体からの要請を受けても出動を自粛したところも出た。

 池上さんはハンター歴40年で、趣味でヒグマの絵を描くほどの動物好き。「本当なら撃ちたくないけれど、市民の安全を思ってこそ」。後輩の育成にも力を入れようとした矢先の所持許可の取り消し。処分が確定すれば最低5年間は再取得ができない。

 池上さんは「ヒグマを熟知しているハンターは少なく、命がけで協力している。地区のハンターに影響が広がる事態を心配している」と話している。