実習にショックを受ける学生たち
憧れの獣医師になるために大学に入ったら、犬、牛、鶏、ラットなど多くの実験動物を傷つける実習にショックを受ける学生がいる。
最近は、動物が本来の行動ができて幸福な状態であるべき「アニマルウェルフェア」(動物福祉)を重視し、健康な動物を傷付ける実習を減らして練習用の模型など代替手段を取り入れ、治療を要する動物の臨床実習に力を入れる大学が出てきた。
しかし一方で、狭くて汚いケージに実験動物を閉じ込め、麻酔の失敗で動物が苦しんだり、術後のケアも不適切だったりする事例があることが取材で分かった。
私は2017年から2年間かけて、獣医大関係者らの証言、国公立獣医大に情報公開請求した動物実験計画書などに基づき、各地の獣医大を取材した。
全17の獣医大に取材を申し込み、そのうち2大学が飼育施設、1大学が臨床実習の見学をさせてくれた。
取材を始めたきっかけは、動物保護団体「Cruelty Free International」(本部英国)が17年1月に日本の2獣医大の犬舎の動画と写真をインターネットで公開し、狭くて糞尿臭いケージに実験犬を閉じ込めているなどの状況を暴露したことだった。
団体は文部科学大臣に「近年獣医師を目指す人には命を尊重する心を養うことが求められ、故意に動物を傷つけることに懸念の声が高まり、英米、カナダなどでは実験動物を授業で使うことを止めた獣医大、医大が多くあり、代替法や臨床実習に力を入れています」として、犬の侵襲的(傷付ける)な実習をやめるよう要請文を提出した。
ちなみに英国では実験動物で手技の練習をすることが法律で禁じられている。16年には米、カナダの全医学部で生きている動物を使う実習が廃止された。
最近は、動物が本来の行動ができて幸福な状態であるべき「アニマルウェルフェア」(動物福祉)を重視し、健康な動物を傷付ける実習を減らして練習用の模型など代替手段を取り入れ、治療を要する動物の臨床実習に力を入れる大学が出てきた。
しかし一方で、狭くて汚いケージに実験動物を閉じ込め、麻酔の失敗で動物が苦しんだり、術後のケアも不適切だったりする事例があることが取材で分かった。
私は2017年から2年間かけて、獣医大関係者らの証言、国公立獣医大に情報公開請求した動物実験計画書などに基づき、各地の獣医大を取材した。
全17の獣医大に取材を申し込み、そのうち2大学が飼育施設、1大学が臨床実習の見学をさせてくれた。
取材を始めたきっかけは、動物保護団体「Cruelty Free International」(本部英国)が17年1月に日本の2獣医大の犬舎の動画と写真をインターネットで公開し、狭くて糞尿臭いケージに実験犬を閉じ込めているなどの状況を暴露したことだった。
団体は文部科学大臣に「近年獣医師を目指す人には命を尊重する心を養うことが求められ、故意に動物を傷つけることに懸念の声が高まり、英米、カナダなどでは実験動物を授業で使うことを止めた獣医大、医大が多くあり、代替法や臨床実習に力を入れています」として、犬の侵襲的(傷付ける)な実習をやめるよう要請文を提出した。
ちなみに英国では実験動物で手技の練習をすることが法律で禁じられている。16年には米、カナダの全医学部で生きている動物を使う実習が廃止された。
残酷な5日間連続手術
日本の獣医大の「実習」とは、実験動物で解剖、手術の練習などを行うものと、動物病院に連れてこられる病気の犬猫、農場の病気の牛・馬などを診る臨床実習の2種類がある。
日本は長らく実験動物の実習に頼り、臨床実習は「ほとんど見学」(大学関係者)という状態が続いてきた。
例えば犬の外科手術は日本では、1日で終えて安楽死させるのが一般的だ。しかし日本獣医生命科学大(東京都武蔵市)では、連続5日間同じ犬の開腹・開胸手術をしていたことが分かった。
1日目に不妊去勢、2日目に脾臓の摘出、3日目に腸管吻合、4日目に骨盤から大たい骨を外す、5日目に肺の切除、という内容。
毎日、手術をして麻酔から覚めたら翌日再び麻酔をかけて体を切ることを繰り返し、「犬は痛がってキューン、キューンと泣き叫んでいた」(卒業生)。
5日間連続手術について、動物実験に詳しい獣医師は「通常の不妊手術でも、雌犬は術後数日間は非常に痛がる。残酷極まりない。これは動物愛護管理法にも違反する行為ではないか」と憤った。
少なくともこの方法を30年以上続けていたが、ある学生が外部の組織に訴えて翌年から中止された。
同大に事実関係を問うと、17年8月に河上栄一獣医学部長名の書面で「ご指摘の通り、4年前までは実施していました。しかし、現在は1日のみ生体を使用することに変更しました」などと返答があった。
大阪府立大も外科実習で、同じ犬を3回開腹・開胸手術で使っていたことが分かった。
同大に今後の方針を聞くと、岡田利也獣医学類長名の書面で「18年4月から外科実習の犬を半分に減らす予定」と回答があり、今年再び質問すると、「19年4月以降、外科実習で実験犬を用いておりません」(岡田氏)とのことだった。
実験動物の実習について、獣医大卒業生は「医学部では、生きている人間を手術の練習台にせず、御献体を使い、臨床実習で学ぶ。獣医学部なら動物を犠牲にしていいとは思いませんでしたが、教員に理解してもらえず、仕方なく授業を受けました」と打ち明けた。
日本は長らく実験動物の実習に頼り、臨床実習は「ほとんど見学」(大学関係者)という状態が続いてきた。
例えば犬の外科手術は日本では、1日で終えて安楽死させるのが一般的だ。しかし日本獣医生命科学大(東京都武蔵市)では、連続5日間同じ犬の開腹・開胸手術をしていたことが分かった。
1日目に不妊去勢、2日目に脾臓の摘出、3日目に腸管吻合、4日目に骨盤から大たい骨を外す、5日目に肺の切除、という内容。
毎日、手術をして麻酔から覚めたら翌日再び麻酔をかけて体を切ることを繰り返し、「犬は痛がってキューン、キューンと泣き叫んでいた」(卒業生)。
5日間連続手術について、動物実験に詳しい獣医師は「通常の不妊手術でも、雌犬は術後数日間は非常に痛がる。残酷極まりない。これは動物愛護管理法にも違反する行為ではないか」と憤った。
少なくともこの方法を30年以上続けていたが、ある学生が外部の組織に訴えて翌年から中止された。
同大に事実関係を問うと、17年8月に河上栄一獣医学部長名の書面で「ご指摘の通り、4年前までは実施していました。しかし、現在は1日のみ生体を使用することに変更しました」などと返答があった。
大阪府立大も外科実習で、同じ犬を3回開腹・開胸手術で使っていたことが分かった。
同大に今後の方針を聞くと、岡田利也獣医学類長名の書面で「18年4月から外科実習の犬を半分に減らす予定」と回答があり、今年再び質問すると、「19年4月以降、外科実習で実験犬を用いておりません」(岡田氏)とのことだった。
実験動物の実習について、獣医大卒業生は「医学部では、生きている人間を手術の練習台にせず、御献体を使い、臨床実習で学ぶ。獣医学部なら動物を犠牲にしていいとは思いませんでしたが、教員に理解してもらえず、仕方なく授業を受けました」と打ち明けた。
麻酔せずに放血殺して…